【インタビュー】THE MACKSHOW、“ロックンロール”という「五・七・五」で言い切る美学

ポスト

── 今回のアルバム『狂騒天国』は、日本でレコーディングしたんですよね?

コージー : そう、ここ(事務所兼レコーディング・スタジオ)でやりました。4畳半くらいしかないんですけど。一発録りで。もちろん後でダビングしているものもあるし、ボーカルは後で入れてますし。その辺の変なこだわりはもうないですね。

── 今回はサポート無しで3人だけで演奏してるんですね。

コージー : そうですね、はい。

── カバー曲が3曲ありますね。バイクボーイさんもブラック・キャッツの「涙のバースディ・キャンドル」を歌ってますが。これはご自分で選曲されたんですか?

バイク : いや、来たら決まってました。「今年の歌はこれだぞ」と(笑)。

── トミーさんは、カバーではないですが「TVスターに憧れて」という曲を歌ってますね。

トミー : これは僕がテレビが好きだっていうことで書いてもらったんですけど(笑)。

コージー : 本当、テレビが好きで、なんにせよテレビですから。

トミー : はい、もうずっとテレビつけてます。ついてないとさみしいんですよ。

── 今時、珍しいですね(笑)。この取材が終わったらすぐテレビつけたいですか(笑)?

トミー : つけたいですね。でもこのスタジオにテレビ無いんですよ。

コージー : 以前は置いておいたんですけど、す~ぐ、つけるから!

トミー : ここではテレビ禁止になりました(笑)。

── 見るにみかねて曲にした、という(笑)。

トミー : まあ、自分の気持ちを代弁してもらった感じですね。気持ちが入っていいですよ。なかなか人に伝えるのが難しいんで(笑)。

── ビートルズもカバーしている「スリー・クール・キャッツ」を選んだのは?

コージー : まあ、カッコいい曲ですし、自分達もトリオということで、良いな、と。

── カバー曲の中には、サンハウスの「ロックンロールの真最中」もありますね。

コージー : 初期の頃は日本語ロックのカバーをしてたんですけど、僕らのカバーしたいアーティストは少ないから、もうだいたいの日本のロックンロール系の楽曲はカバーしただろうと。それでいろいろ探してたんですけど、サンハウスの曲がタイトルもかっこいいな、と。原曲を聴いたら70年代の古い日本のロックにはパワーがあるな、と思いまして。キャロルにしてもクールスにしてもそうなんですけど、正当な評価がされてない気がするんですよね。だけど、改めて聴くとパワーもあるし、どのバンドも個性があるし。つい、キャロルとかクールスとかはどうしてもイメージで見がちというか。「ロカビリーでしょ?」みたいな。

── そうかもしれません。正直、THE MACKSHOWもそういうイメージで捉えられがちだと思います。

コージー : もちろん、そうですよね。“ツッパリ”みたいなイメージで(笑)。そう思われると思うんですけど、聴くと、音楽的には優れているというか、評価されたらいいなとは思っていたんですけど……、「でも、まあいいか」、と。これが音楽的に評価されたからなんだよ? みたいな。

一同 : ははははは。

コージー : これはいいっていう奴だけ聴くから、光り輝くんだと思って。傍から見たイメージは「あれでしょ?リーゼントでしょ? ロカビリーでしょ?」っていう方がいいかなって思いますね。でも、誰かインディー・ジョーンズみたいな人が来て(笑)、何十年かに一回、「いや、これは音楽的には優れてるんだよ」っていう発見をするっていう方がいいかな、と。僕もロックンロールの世界に倣ってきたんだから、そのまま倣っていこう、と。もちろん限定することの苦しさもあったけど、逆にその中でやれるからこそ、良いという部分の方が魅力を感じるというか。

── 今コージーさんがおっしゃった、“限定することの苦しさ”についてお伺いします。シンプルなロックン・ロールという縛りがある中でも、お客さんには常に新鮮なライヴ、新鮮な作品を聴かせたいという気持ちをお持ちだと思うんですが、かといって突然プログレみたいなことをやるわけにもいかないし。その辺のミュージシャンとしての葛藤っていうのはありますか?

コージー : ある。だって、メインの曲なんて10枚分も作れるわけないんだから(笑)。

トミー : 毎回、もうないぞって言ってる(笑)。

コージー : ビートルズだったら、毎回メインの曲があって、それでさらに何曲もシングルがきれて、だけど。普通そんなにねえだろ? みたいな。

── ビートルズもどんどん変化していったからこそ、そういう曲が生まれて行ったと思うんですが、THE MACKSHOWとして、ビートルズでいうところの「Tomorrow never knows」をやりたいとか、「ホワイトアルバム」みたいな方向に行きたいとかいう気持ちを抑えてやっていらっしゃるんでしょうか?

コージー : いや、だからまあ向いてないな、ということです(笑)

トミー : そうですね、そこには興味はもちろんありますよ。いろんな音楽聴きますし。でも、できないかな。

コージー : 自分達が一番、そういうイメージつけちゃってるかも知れないですね。リーゼントして革ジャン着て「Tomorrow never knows」っておかしいだろ? って(笑)。もちろん聴いてますよ。でもそれじゃおかしいだろ? って、勝手にこっち側が言ってるだけなんだけどね。

トミー : 結構言われますよ、お客さんに。「レッチリとかも聴くし」っていうと、「(驚愕した顔で)聴くんですか!?」って(笑)。

一同 : ははははは!

トミー : 「え!?永ちゃんしか聴かないんじゃないんですか!?」って(笑)。いろいろ聴くよっていうと、不思議がられて。

── そこで、「俺もレッチリみたいに、フリーみたいに弾けるぞ」っていうエゴが出ないんでしょうか?

コージー : いや、それはね、プロはみんなあると思う。だからこそ、2つも3つもバンドをやる人もいるし。だけど、プロとしては、僕らはこれをやるんだって決めて、やっていってるってことです。だからヒット・メーカーみたいな人は大変だよね。毎回色んなタイプの曲を考えなきゃいけないから。でもまあ同じような苦しさもあって、「またメインの曲3コードで作らなきゃいけないの?」みたいなことは。

── ですから、いろんなものに手を出すよりも、むしろそっちの方が大変だと思うんですよね。

コージー : それはたぶんね、例えば小説家でも歌を詠む人でも、みんな同じだと思うね。「五・七・五」ので言い切るっていう中で、個性を出していくっていうのは凄くオツだよね。

── そこに美しさがある、という。

コージー : そんなの別に作文でもなんでもいいっていう物もあるけれど、決まった中で季語を盛り込んでこの中で言い切る、という。長くプロとしてやってる身としては、そこに憧れちゃうね。なんでもいいというんじゃなくて、決められたフォーマットの中でやるというところに。

── 60年代、70年代の音楽をやっているように見えて、実は新鮮な音楽を構築しているのがTHE MACKSHOWの魅力だと思います。

コージー : そう言ってもらえると嬉しいですね。

── 「ああ、シンプルなロックンロールか」っていう感じに少し上から見たような捉え方をしがちなんですけど、聴いてみるとただそれだけじゃないですもんね。

コージー : うん、聴いてみると違いますからね。

── 音もいいですし。古臭くない、溌剌とした新鮮な音になってると思います。

コージー : アナログの古い機材を使ってるから、アナログで録ったものを聴いてきた世代に耳触りよく聴かせる音は作れるとは思いますけど、それを今、CDで出してiTunesでダウンロードさせると考えた場合、それだけじゃ駄目だろって。これをヘッドフォンで聴いて若いやつをどれだけ「お、ヤベェ!」って言わせるかっていう。「おっさんを舐めるなよ!」っていうのはある(笑)。だから、レコーディングはエンジニアもマイク一本立てるのも全部、マスタリングも自分でやったから。

── あ、バンドのメンバーだけで?

コージー : そうですね。ダウンロードしたらどういう風に聴こえるんだろうって。前は、1つフィルターを通す意味で、マスタリングは他に頼んで、今の大衆的な音楽に合わせた方が良いんじゃない? っていうのがあったんですけど、今回は「こっちが良いと思う音楽を出すだけだ」という確固たるものが最後まであったんで。意外と悪くなかったのかな、と。

── いや、本当凄くいい音に仕上がってると思うんで、ぜひ多くの音楽ファンに聴いてもらいたいです。

コージー : ありがとうございます。
この記事をポスト

この記事の関連情報