【ライブレポート】高嶋ちさ子、「自身初のアルバム収録曲全曲ライヴを開催

ツイート

ヴァイオリニストの高嶋ちさ子とフジテレビ・アナウンサーの軽部真一がタッグを組み、軽妙なやりとりを交えながらクラシック音楽を身近に楽しませる、好評のコンサート・シリーズ「ギンザ めざましクラシックス」。

その65回目は、4日前にリリースされたばかりの高嶋ちさ子のニュー・アルバム「ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス」の発売記念として、CDの収録曲全曲をライヴで聴かせるという趣向で行なわれた。

出演は、高嶋と軽部アナのほか、今野均(ヴァイオリン)、生野正樹(ヴィオラ)清水詩織(チェロ)、近藤亜紀、伊賀拓郎(ともにピアノ)。(9月7日/銀座・王子ホール)

メンデルスゾーン「歌の翼に」で幕を開けるといきなり、「めざクラ」ならではの、二人の軽妙なやりとりが炸裂。聴き手の心を離さない。

高嶋「録音はやり直しができるけど、それをライヴでというのは話が違う」

軽部「ではライヴが今ひとつだったら、CDでお楽しみいただくということで」

高嶋「ちょっと! 他人に言われると腹が立つ!」

CDジャケットと同じ、左肩の開いた真っ赤なドレスにも軽部アナから「遠山の金さんみたいな」と、さっそくツッコミが入る。

CDの選曲にまつわる秘話なども開陳しながら、前半は、シューベルトとグノーの「アヴェ・マリア」や、ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」など、クラシックの定番名曲が続く。

ブラームスの「子守歌
では、高嶋家で子守歌代わりに語られている「日本つくり話」なる、高嶋オリジナルの教訓譚に、会場は大笑いしたり感心したり。

休憩を挟んだ後半は、高嶋はグリーンのドレスに着替えて登場。ビル・ブリッジズ「ケルトの歌」やフランソワ・バザン「ロマンス」といった、レアなナンバーからスタートし、CDでも数曲のアレンジを手がけた伊賀拓郎をフィーチュアしたコーナーへ。

高嶋が「10年に一人の天才」と推す伊賀のピアノで、童謡「ぞうさん」を、ジャズ風、タンゴ風、演歌風、ボサノヴァ風、ショパン風、ベートーヴェン風…と、次々に即興で披露して、満場の聴衆の喝采を浴びた。

原曲が歌曲のポンセ「エストレリータ」では、途中で軽部アナが自ら譜面台を抱えて乱入、美声を披露した。軽部アナの歌は「めざクラ」の“ネタ”のひとつだが、今回は「アルバム全曲演奏」というお題目もあるだけに、出番はないのかとばかり思っていた。高嶋「私よりずっと盛大な拍手をもらってたじゃないですか!」軽部「だって、あなたが『歌ってください』と頼んできたんでしょう」

実は高嶋が、「今回は軽部アナの歌がない」とご主人に話したところ、「あったほうがいい」と諭され、「意外にも」(by高嶋)それを楽しみに聴きに来ている人も多いことを知ったのだそう。なるほど。まあ、怖いもの見たさみたいなこともある。

本プログラムのラストを、キレキレのピアソラ「リベルタンゴ」で締めたあと、アンコールで高嶋ちさ子作曲のオリジナル曲《Blue Forest》で、ニュー・アルバムの全曲演奏が完成という仕掛け。

アルバム全曲をライヴで披露してしまおうという試みは、音楽のジャンルを問わず珍しいチャレンジだろう。特にクラシックの場合、技巧的に困難な曲をノーミスで演奏しなければならないというプレッシャーも強いはず。でも高嶋は、「(スタジオでなく)ホールで、仲間で揃って弾くと、こちらもだんだん乗ってくる。こういう形で録音するのもありかなと思いました」と手応えを感じていた様子。実際、ひしひしと感じる音楽の前進感は、ライヴでなければなかなか味わえないものだ。そして、空間を共有して、演奏者の呼吸で音楽を聴けるのは、やはりうれしい。終演後のサイン会も大盛況。恒例の、スポンサーのブルボン提供の紙袋いっぱいのお菓子を手に、家路につく人たちの顔は一様に晴れやかだった。次回の「めざましクラシックス」は12月26日。去りゆく生誕200年の記念年の最後を飾って、ヴェルディ&ワーグナー特集が予定されている。

文◎宮本 明

「ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス」
COCQ-85022 ¥2,940(tax in)
1.エストレリータ(作曲:Manuel Ponce)
2.ケルトの歌(作曲:Bill Bridges)
3.カフェミュージックより第1楽章(作曲:Paul Schoenfield)
4.アヴェ・マリア(作曲:Franz Schubert)
5.アヴェ・マリア(作曲:Johann Sebastian Bach,Charles Francois Gounod)
6.子守歌(作曲:Johannes Brahms)
7.ラシーヌ讃歌(作曲:Gabriel Faure)
8.亜麻色の髪の乙女(作曲:Claude Debussy
9..ロマンス(作曲:Francois Bazin)
10.歌の翼に(作曲:Felix Mendelssohn)
11.Blue Forest(作曲:高嶋ちさ子)
12.リベルタンゴ(作曲:Astor Piazzolla)
13.ブラジル風バッハ第5番 から 「アリア」(作曲:Heitor Villa=Lobos)
14.前奏曲とアレグロ(作曲:Fritz Kreisler)

◆CONCERT INFORMATION◆
高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト
ロマンティック・メロディーズ~マイ・ベスト・クラシックス
9月13日(金)石川石川県立音楽堂
9月14日(土)福井ハーモニーホールふくい
9月16日(月・祝)新潟りゅーとぴあコンサートホール
9月18日(水)【めざましクラシックス】横浜 みなとみらいホール 
9月19日(木)茨城常陸太田市民交流センター
9月21日(土)栃木栃木県壬生町中央公民館
9月22日(日)群馬伊勢崎市文化会館
9月28日(土)東京オリンパスホール八王子
9月29日(日)千葉千葉県南総文化ホール
10月1日(火)茨城茨城県立県民文化センター
10月6日(日)兵庫兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
10月12日(土)茨城鹿嶋勤労文化会館
10月13日(日)東京秋川きららホール
10月14日(月・祝)愛知愛知県日進市民会館
10月17日(木)茨城茨城県立県民文化センター
10月19日(土)岡山高梁総合文化会館
10月23日(水)茨城茨城県立県民文化センター
10月26日(土)大阪ザ・シンフォニーホール
10月27日(日)東京かつしかシンフォニーヒルズ
11月15日(金)北海道札幌コンサートホールKitara大ホール
11月17日(日)埼玉深谷市民文化会館
11月23日(土)神奈川平塚市中央公民館
11月24日(日)宮城仙台市民会館
12月7日(土)三重三重県亀山市文化会館
12月8日(日)京都宇治市文化センター大ホール
12月12日(木)静岡三島市民文化会館
12月14日(土)福岡福岡国際会議場
12月17日(火)東京サントリーホール
12月21日(土)和歌山新宮市市民会館
12月22日(日)愛知愛知県芸術劇場コンサートホール
12月26日(木)【めざましクラシックス】銀座 王子ホール

◆official website
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス