【月刊BARKS 音楽プロデューサー 藤井丈司連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち』】前口上

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BARKS新連載として、音楽プロデューサー、藤井丈司氏による連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち。』を開始。ここでは、連載対談スタートにあたり、藤井氏による前口上をお届けする。

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「壊される事に先回りして自らを壊し、そして絶え間なく作り直すあてどのない営み。
それが生命現象であり、37億年間にわたって秩序を維持するための唯一の方法だった。」
-福岡伸一「生物と無生物のあいだ」新書大賞2007受賞の言葉より-

分子生物学者にして詩人の素敵な言葉は、いつでも僕らを勇気づけてくれる。

僕らのいのちが、日々あてのない旅を続けているのだとしたら、いのちが作り出す音楽もまた、法則や歴史などとは無縁の、ゆらゆらした魂が作り出す、ひと時の「あてどのない営み」なのかもしれない。

それでもこの国で、2007年の6月から2008年の7月までの約一年間の間に、まるで示し合わせたように起きた6つのことを、もう一度思い起こしてみたい。
ニコ動、You Tube、ボーカロイド、Twitter、Facebook、iPhone。
(2007年の6月から2008年の7月は、それぞれの日本語版あるいは日本でのサービス開始の時期)

これらのサービスやソフトウエアは、徐々に社会に浸透して、たった5~6年の間に、確実に僕らの、「気持ちのやり取り=コミュニケーション」の方法を変えた。

それと同時に、音楽もそのマーケットも、ゆっくりと変わりだした。「作り手」も「送り手」も「市場」も「リスナー」も、それぞれの立場で、それぞれのやり方で、ゆっくりと、時には急速に、変化が訪れた。

まるで、「壊される事に先回りして自らを壊し、そして絶え間なく作り直す」ことを始めたかのように。

僕らは今、その「作り直し」のド真ん中にいる。
そして誰もが、この先はわからないと言う。

わからない今だからこそ、誰かと「音楽のこれから」を話してみたいと思った。

新しく音楽を紡ぎはじめた新人アーティスト。
音楽業界の外にいて、現在の音楽を語りはじめたクリエイター。
そして、今の音楽に直接影響を与えた、素晴らしいアルバムを作った音楽プロデューサーたち。

そんな「今の音楽」の「現在・過去・未来」を担う人たちと、今起きている事、これから起こる事、あの時始まった事を、1つ1つていねいに、つまびらかにしていきたいと思う。

だから、連載対談のタイトルは、『「これからの音楽」の「中の人」たち。』にしてみました。

この対談に出ていただくゲストの方たちはきっと、新しい言葉を紡いでくれるだろう。
あるいは、今までによく聞いた言葉だけれど、より深くを掘り下げる言葉が、飛び出してくるかもしれない。

冒頭にあげた学者の詩人は、同じテキストの中でこうも語っていた。

「解像度の高い言葉は、詩を解体するのではなく新たな詩を作る。」

「これからの音楽」は、新しい詩をまといはじめているのだろうか。
そしてそれは、この国以外の社会でも、「絶え間なく作り直す」渦の中に、飛びこんでいけるのだろうか。

『「これからの音楽」の「中の人」たち。』は、2013年10月9日から始まります。
どうぞ、お楽しみに!

◆藤井丈司プロフィール
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