2013年10月、年末に向かい時間が進んでいる。昨年、初のクリスマス・アルバムを発売した鈴木祥子。わずか1週間で完売したアルバムが通常仕様盤となって再発売される。

◆鈴木祥子画像

彼女の音楽活動に予定はない。彼女自身の気持ちの起伏のみが未来を知る。しばし休養したり、突然活動を再開したり、新しいユニットが生まれたり。それは、何者にも縛られない、彼女の強さなのか? 純粋さなのか? 不器用さなのか? そして、そんな彼女をいつか受け入れている、彼女を見守るファンたち。商業ベースとは言い難いスタイルこそ、鈴木祥子なのだ。そして、それが魅力でもある。

クリスマス・アルバムには、彼女が幼い頃から親しんできた讃美歌も収録されている。それは、彼女の音楽に大きな影響を与えたもの。現実から少し離れた世界に思えるそのメロディは、まるで彼女そのもの。彼女の日常は、正直、想像しがたい。それが、また心地良い。そう、本人が仕掛けたつもりのない“Jack-in-the-box”(ビックリ箱)みたいな感覚だ。

そしてもう一枚。昨年のクリスマスライブで発売された幻のシングルに、今年6月の鎌倉でのチェンバロ弾き語りライヴから2曲を追加しパッケージされたシングル。日本の美しいメロディを彼女の解釈で伝える「ジャパニーズ・エッセンシャル・ポップ・シリーズ」第一弾だ。

“讃美歌と日本の美しいメロディ”。対照的にも思えるこの2つは、鈴木祥子というフィルターがかかり近しいものになる。そして、両者がとてもとても大切なものであることを改めて知る。心に寄り添う音という意味では同意かもしれない。

2013年のクリスマス。誰もの心に、そっと灯りがともる。

最後に彼女からのコメントを掲載させていただく。

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いつもベアフォレスト・レコーズのアイテムを可愛がってくださって本当に有り難うございます。

いきなりこんなことを書いて少しでも気分をこわされたらごめんなさい。このシングル「星影のワルツ」、そしてクリスマス・アルバムを録音したスタジオが、今年の夏に取り壊されました。ほぼ全編で聴かれるピアノの自然な鳴りはスタジオの音響のおかげだったと思います。すべての音を録音してくれた16チャンネルのレコーダー、アンペックスMM2000はいま廃棄されるか、修理されるかの瀬戸際に在ります。私はとても貴重な録音環境を失ってしまいました。あのピアノはどこに行ったのでしょう? 10何時間も集中して、心を合わせて一緒に歌ってくれたピアノ。音楽はただの“音源”でなく、ほかのどこでもないこの場所、この楽器でその「時間」を録った、という記録でもあります。どうかお願いします。このレコーダーの音がこの世のどこかに存在し続けられるように、自分の音を自分の耳で選べる自由を、あなたがもしも同じように感じてくれるとしたら、どうか心の片隅で一緒に祈っていてください。
演奏者としてなにか大事なものを懸けて切に祈ります。

鈴木祥子。

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『Merry Christmas From BEARFOREST RECORDS~ベアフォレストのクリスマス~Standard Edition 』2013年11月15日発売
BECD-017 3,150円(税込)
ポストカード2種特典
1.神よわたしのこの心に
2.Little Love
3.この世のどこかに
4.カチューシャの唄
5.愛はいつも
6.竹田の子守唄
7.When you SING
8.Sweet And Simple
9.きよしこの夜
BONUS TRACK
1.ときめきは涙に負けない(LIVE)
2.Father Figure(LIVE)

Japanese essential POP series vol.1『星影のワルツ』
2013年11月15日発売
BEHD-1004 1,500円(税込)
1.星影のワルツ
2.星影のワルツ(ラスト・ピアノ・バージョン)
3.悲しい青空(LIVE)
4.月とSNAPSHOTS(LIVE)

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/

◆鈴木祥子オフィシャルサイト