【インタビュー】ウラニーノ、3年半ぶりのアルバム『音楽はあるか』で新たなステージの幕をあけた

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■映画の中の人たちのパフォーマンスを見ていて
■“ベイビー大丈夫かっ”と自分に言われている気がした

──山岸さんの曲作りから感じ取れるものとしては、そこはかとないフォークソング感というか、ニューミュージック感というか。ある年齢以上の世代には、懐かしさを感じさせるような要素がいっぱい詰まってますよね。

山岸:影響をすごく受けた人たちの要素が、今回は今までよりも出てる曲があるかなと思います。映画の試写を見た人に言われたんですが、「音楽があるか」が流れた時に、その当時のアーティストの曲かと思ったという人がいたらしくて。それは僕がその時代の人たちが好きで、影響を受けてるからなのかなと思いますね。もうちょっと前ですけどね、『BEAT CHILD』の時代よりも。

小倉:フォーク寄りですかね。「音楽はあるか」という曲に関しては。

──そうですね。(吉田)拓郎さんっぽい感じもあるし。

山岸:拓郎さんの譜割りとか、中島みゆきさんとか。

──ああ、みゆきさん感も濃厚にありますね。そういうのが自然に入ってるんでしょうね。ほかの曲にも、たとえば「500円のクリスマス」とか「はりまや橋でつかまえて」とかには、そこはかとなくさだまさしさん感を感じたり。

山岸:さださんも、一時かなりハマりました。

小倉:急に下りてきますよ。“あ、さださん来た!”みたいな(笑)。

──ルーツがそのへんなんですね。

山岸:そうです。ただ自分で思うのは、“それをロックでやりたいんだ”というのがすごくあって。バンドものが大好きなので、そういう世界をロックバンドで表現するんだというのが、僕の中にあるので。そこが面白くなってくれればいいとずっと思ってるんですけど。

──そういう意味では、RCサクセションもどこかに入ってますよね。

山岸:そうですね。清志郎さんとか、原発の事故があってからみんな急に騒ぎ出しましたけど、あれを20年以上前に歌っていたんですよね。逆に今回のことがあっても、そんなに歌う人はいないじゃないですか。それはなぜだろう?って逆に思ったりするんですけど。

──そこをことさら強調するつもりはないんですけど。原発も含めたここ2年ぐらいの時事的なことを直接取り込んだ歌詞が、今回多いなと。

山岸:ちょっと風刺が入っていたりとか。僕らはパンクじゃないですが、ちょっとそういう精神があって。そういうところが歌詞には出てると思います。

──「ブランクミュージック」は素晴らしいです。風刺と反逆と笑いがありつつ、ストレートに「これが僕らの歌だ」と誇り高く言い放っていて。ブランクミュージック(空白の音楽)とか言いながら、しかも悲観じゃなくて肯定してるのがすごくいいなと。

山岸:それならそれを武器にして、というところがあるので。テーマとしては「音楽はあるか」とそんなに変わらなくて、それを明るく歌っています。

──では映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』の話をしましょう。主題歌になった「音楽はあるか」は、どういうふうに作っていったんですか。

山岸:正直、映像を見てそこから感化されて作ったということではないんです。ただすごく思ったのは、映画の中の人たちのパフォーマンスを見ていて、“ベイビー大丈夫かっ”という言葉をずっと自分に、自分というか自分の世代に言われている気がした。ステージからお客さんに呼びかけているのはもちろんなんですが、それは絶対この人たちから、僕ら世代のミュージシャンへのメッセージでもあると思う。怒られているような気もしましたし、負けねぇぞという気もしましたし。曲を作ったあともそう思っているので、この曲を歌う時にはすごく気合が入ります。

小倉:壮絶な映像ですね。普通の顔してないんですよ、みんな。常人じゃない形相だったり、気合がすごく入ってらっしゃるのを見て、震えが止まらなかったです。

──それを、時代を超えた呼びかけだと受け取ったわけですね。

山岸:そうですね。この映画がこのタイミングで世に出るのも何かしら意味があるのかなと思うぐらい、強いメッセージを受け取りました。

──ざっくりとした質問なんですけど。実際、こういう80年代、70年代のアーティストが持っていた強いメッセージ性と、今の2010年代のアーティストが持っているメッセージ性とでは、質や強さ、太さが違っていると思いますか。

山岸:すごく思いますね。今すごく売れてる音楽なのか、僕らのようにライブハウスで頑張ってるアーティストなのかでまた違うと思うんですが、共通して言えるのは、みんなが昔の音楽を聴いて“すげぇ。カッコいい”と言っているのは間違いなくて。で、今の僕らの音楽が何十年かたったあとに、“2010年代はすごかった”って言われるのかな? と思ったりしますし。やっぱりそういう普遍的な、歌詞一つとっても、ぐっと鷲掴みされるようなものが今僕たちはできているのか? ということも考えます。だからこそやってやろうという気持ちはもちろんあります。AKBだ何だっていう話をする気はないんですが、ああいう人たちのプロ魂はすごいなと思いますけど、そういうところに対等に入り込んでいくバンドがもっと出てくれば。

小倉:バンドマンに向けても、今回のアルバムを聴いてほしいという感じはありますね。

山岸:頑張ろうぜ!って。

小倉:最近のバンドマンに向けて、自分らしさ、自分のバンドのカラーをもっと考えても面白いんじゃないかなという気はありますね。20代の若いバンドさんとかに。それが僕ら30代バンドのやるべきことなのかなという感じです。

山岸:いまフェスとかに行っている人にも、ぜひ見てほしいです。

──最後に、これからの活動に向けての抱負と、BARKSユーザーへのメッセージを。

山岸:映画のお話も、メンバーが変わったのも、来るべきタイミングで来たと思っているので。ここから本当に、今までのスケールじゃないスケールに行くチャンスかなと思ってます。曲作りに関してはまたゼロからなんですが、このアルバムを出したあとで、その時の気持ちを曲にしていったらまたずいぶん違う感じになるでしょうし。それが楽しみですね。

取材・文●宮本英夫


『音楽はあるか』
10月23日(水)発売
ESCL-4122 \3,000(tax in)
1.音楽はあるか
2.ブランクミュージック
3.中距離恋愛ラプソディ
4.愛してる
5.無題
6.明日を照らせ
7.戦場に咲いた花
8.500円のクリスマス
9.夜を越えて
10.アンケートを握りしめて
11.夏なんです
12.死ぬとか生きるとか
13.はりまや橋でつかまえて
14.音楽はあるか Movie Version(映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』主題歌)

<ウラニーノ「音楽はあるか」レコ発ツアー ~響け!ぼくらのブランクミュージック~>
10/26 西川口ハーツ
11/01 横浜ベイシス
11/07 仙台マカナ
11/08 宇都宮ヘブンズロック
11/09 金沢vanvan V4
11/10 富山ソウルパワー
11/13 高崎club FLEEZ
11/15 大阪ファンダンゴ
11/16 姫路BETA
11/17 広島ナミキジャンクション
11/18 福島HEART BEAT
11/20 大分CLUB SPOT
11/22 松山サロンキティ
11/23 高知X-pt.
12/01 岡山CrazyMAMA2
12/03 名古屋ell.FITSALL
12/06 新潟CLUB RIVERST
12/14 東京Mt.RAINIER HALL(ファイナルワンマン)

映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』
10/26(土)全国一斉公開
イオンシネマ、TOHOシネマズ、Tジョイほか

◆ウラニーノ オフィシャルサイト
◆ウラニーノ レーベルサイト
◆『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』オフィシャルサイト
◆【連載】山岸賢介(ウラニーノ)最新回
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