【ライブレポート】MIYAVI、ツアーファイナルで規格外の個性爆発「世界中、どこを探しても見たことのないものを見せたい」

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ギター1本で世界中の音楽ファンを唸らせる――。MIYAVIは間違いなく、そういうアーティストだ。“サムライギタリスト”の名にふさわしい。

◆<MIYAVI“SLAP THE BEAT” TOUR 2013> 10月14日 SHIBUYA—AX公演 ライブ画像

世界デビューアルバムとなった『MIYAVI』を引っ提げて、9月16日の大阪公演からスタートした全国ツアー<MIYAVI“SLAP THE BEAT” TOUR 2013>は全箇所ソールドアウト! ファイナル公演となった10月14日のSHIBUYA—AXに開演前から渦巻くエネルギーは、この規格外のアーティストを生で見られるという興奮そのものでもあった。

斜幕の向こう側にドラムのBOBOとMIYAVIが登場したことがシルエットでわかると、手拍子とともに怒濤の大歓声! 男子の太い声と女子の声が入り乱れるフロアには、海外から駆けつけたと思われる人たちの姿も多数、確認できる。幕が振り落とされ、オープニングナンバーはMIYAVIのスラップギターが炸裂する「DAY 1」だ。

最新アルバムはグラミー賞やブリットアワードを獲得してきたプロデューサーを迎え、EDM(エレクトニック・ダンス・ミュージック)などクラブ系の音楽のエッセンスを取り入れた作品に仕上がっていて、まさに世界のポップミュージックも視野に入れた楽曲揃い。洗練されたサウンドとロックミュージックの荒々しさ、MIYAVIのずば抜けたリズム感が融合したそれらの楽曲は、BOBOとたった2人で真っ向勝負するステージで、より肉感的に響いてくる。「STRONG」では、タイトルどおり、BOBOのストロングなビートが会場を揺らし、ステップを踏みながらギターをかき鳴らすMIYAVIに割れんばかりの大歓声。

「準備はできてるか!? ここ東京から世界中に俺たちの音楽を響かせようぜ!! 今日はニューアルバムから全曲、ガッツリやるんで一緒に汗かいて、ビートを感じて、すごいライブを作りましょう!!」

続いて間違いなく新境地であろうクールなダンスチューン「Chase It」が披露される。跳ねるビートに合わせて踊りながらギターを弾くMIYAVI。ときにギターはベースのような役割を果たし、オルタナティブな要素も加わり、独特のうねりを生むゴキゲンなナンバー。続いて披露された「Hell No」ではギターリフに大歓声が上がる。争いのたえない世界、自然の摂理を無視する現代社会に“NO!”を叩きつける熱い叫びに触発されるかのように、BOBOが凄まじいドラミングで圧倒する。

次々と披露されるアルバム『MIYAVI』からのナンバー。サビの突き抜けるメロディとエレクトリックなビート、ファンクな刻みが刺激的な「Justice」では、英詩の曲にも関わらず、オーディエンスが一緒に歌うという光景が――。センターでソロを響かせるMIYAVIのギタースタイルも自由そのもの。ジャンルを飛び越えるスキルと発想の豊かさに釘づけだ。刺激的なミュージックビデオが話題となった間合いがスリリングな官能的ダンスチューン「SECRET」では、持ち前のエンターティナーぶりを発揮した。

MCではアルバムがアジア各国でまず発売され、2014年の2月以降にヨーロッパ、北米でも発売されることを報告し、「“SLAP THE WORLDTOUR”と題して世界でロックして来ようと思ってます。もちろん日本にも帰ってきます」とMIYAVI。

そして、話題はアンジェリーナ・ジョリーの監督作『UNBROKEN』に出演することを決めたことへ。音楽活動との兼ね合いや第2次世界大戦がテーマの映画だと聞いて迷ったものの、「実際に彼女に会って話して、そのメッセージに共鳴した」と、ハリウッドデビューすることになったいきさつを話した。「(役柄のために)角刈りにして、みんなは困惑しないだろうか?」とジョークを飛ばし、「僕も音楽で人々を幸せにしたいし、感動させたいというところでは同じものを感じた。すごく不安ですけど、いち表現者として全力で挑みたい」と宣言した。

そんな報告のあとに演奏されたのは、“涙のない人生には笑いもないぜ”と歌う「CHILLN’ CHILLIN’MONEY BLUE$」。MIYAVIのアーシーでブルージーな部分が全面に出たこの曲にはジャムセッションのようなスリルがあり、ステージにひざまづき、背中弾きするパフォーマンスに沸きに沸く場内。「ちょっと懐かしい曲をやろうと思います。一緒に歌ってくれますか?」と、披露された「Selfish love」の太く熱いグルーヴもAXを揺らせた。このあたりの曲はルーツミュージックの要素が強いが、現在とスタイルは違えど、MIYAVIの音楽はブラックミュージックの要素を含んでいる。

「『Selfish love』は7年前、渡米したときに書いた曲です。あの頃は英語もしゃべれなかった」と振り返りながら、人生の中で多くの岐路があったことに触れ、「つねに思っていたことは、変わらずに変わり続けること。世界に自分たちの音楽を響かせたい。そんな想いでやっています」

まさにサムライギタリストを地でいくかのように、活動を休止してアメリカで武者修行をし、ストリートでライブを行なってきた経験を持つMIYAVI。世界各国のライブハウスやホールに多くのファンが詰めかけるまでの道のりはMIYAVIもMCで言っていたとおり、決して平坦なものではなかったに違いない。

変わらずに変わり続けてきた自らの歴史を確認するようにアコギを弾いて披露された「君に願いを」(2006年)から、最新アルバムのラブソング「Guard You」への流れも印象的だった。甘くメローなギターの響きと、しみ込んでくるメロディー。そのグルーヴと歌はライブならではの心地良さ、温かさを感じさせてくれた。そしてイントロからしてMIYAVIらしい躍動感のあるリフにエレクトロミュージックがブレンドされた「Cry Like This」は、メロディーやメッセージをさらにリスナーと共有することを目指した彼の“今”を映し出すナンバーでもあり、どんなに悲しい世界でも、痛みを笑って乗り越えようというリリックは、MIYAVI哲学。

「このトチ狂った世界をともに生き抜こうぜ!」

そう煽った「SURVIVE」から「FUTURISTIC LOVE」へとなだれこむ後半の展開も圧巻だった。アスリートのごとく強靭でしなやかなBOBOのドラミング、ループサンプラーなどの機材を駆使し、世界レベルのスキルと野生を呼び起こすダイナミズムを兼ね備えたMIYAVIのプレイ。この音を2人で鳴らしていること自体、驚異的だ。本編ラストは、イントロで歓声が上がった「Horizon」。世界中を繋ぐようなビートと幸福感に満ちたメロディがAXにあふれていき、みんなの歌う声が鳴り響いた。

アンコールでは1度、姿をあらわしたかと思うと、帰ろうとするお茶目な一面も。実は朝、起きたときに声が出なくなって、様々な策を試した末、点滴を打ってステージに立っていると話していたが、多くのハードルを乗り越えてきた経験と、集まったオーディエンスから放たれていたハンパないパワーがMIYAVIを熱くグルーヴさせ続けた。「Ahead Of The Light」で力強い光を放ち、最後は屈強かつ奔放な「What’s My Name?」。

「もっとでかくなって帰ってくるから。またビートを感じて遊びましょう!」とみんなで記念写真を撮って、客席に降りて、ハイタッチ。生声で「I Love You!!」と叫んだMIYAVI。

その音楽——そのリズム、そのメッセージ、そのアティテュードはこれからもあらゆる境界線を超えていくに違いない。

取材•文◎山本弘子  写真◎Yosuke Torii


Album 『MIYAVI』
2013年6月19日発売中
■初回限定盤
CD+DVD TOCT-29144  ¥4,800(税込)
※4月5日赤坂BLITZにて行われた「"Ahead Of The Light" TOUR 2013」東京公演のライブ映像やオフショット映像などを収録した特典DVD付。
■通常盤
CD TOCT-29145  ¥1,980(税込)
Track List
1.Justice
2.Horizon
3.Chase It
4.Secret
5.Cry LikeThis
6.Guard You
7.No One Knows My Name(Slap It)
8.Hell No
9.Ahead Of The Light
10.Day 1(Album Version)
11.Free World

◆MIYAVIオフィシャルサイト
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