【インタビュー】外道「みんなのエネルギーをもらって、僕もエネルギーを与えて、吸血鬼のようにどんどんエネルギーをもらって若返っていきますよ」

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これが本当にデビュー40周年、60歳を越えた男の弾くギターだろうか? 流れ出す音のあまりの凄まじさ、後ずさりさせられるほどのパワーと熱気、そして何より音楽に込めた妖気めいたものに圧倒される外道のニューアルバム『魂の叫び』。70年代初頭から活動を続けるこの伝説的バンドが、今もバリバリに健在どころかどんな若手バンドよりも激しくエモーショナルなロックをやっているという事実を伝えるのに、奇跡という言葉では軽すぎるとさえ思う。自他共に認める本物のロックバンド・外道を率いる加納秀人はステージと同じく白いキモノ衣装に身にまとい、日本のロックについて、新作について、おそるべき饒舌さで縦横無尽に語ってくれた。

■僕たちが出たらお客さんがワーッと全員総立ち
■音が出た瞬間“違うだろ? これだろ?”って

──まさかステージ衣装でお会いできるとは…。外道といえば昔からおなじみのキモノ衣装ですけど、何着か持ってらっしゃるんですか。

加納秀人(以下、加納):今はこれだけですけど、昔は何着か持ってました。でも持って行かれちゃうんですよ、記念品として。一番ひどい時はパンツだけになったことがある(笑)。昔はステージに上がるのに客席を通って、肩車で騎馬戦みたいにして入っていくことがよくあったんですよ。そうするとワーッと人が集まって、一応ガードは何十人かいるんですが、みんな押しつぶされちゃって、気がついたら服がない(笑)。ギターまで持って行こうとするとから“それはやめてくれ!”って(笑)。それで次の時には服を着ないで、裸にステッカーを貼って“どうだ、持ってけねぇだろ!”ってやったことがありますけどね。

──僕は70年代にはまだロック・コンサートに行ける年齢ではなかったんですが、ライヴ録音を聴いたり、当時のエピソードを聞くと、お客さんの熱狂度はものすごいですよね。今よりも上なんじゃないか?と思うくらいに。

加納:すごかったですよ。あの当時は何がすごいといって、気に入ったものに対しては大声援ですけど、気に入らなかったものに対しては物が飛んで来るし、“引っ込め!”“やめろ!”ですから。ある時どこかで山下達郎と話したんですけど、外道の前にやった時に“早くやめろ!”って言われたって(笑)。

──考えられないですよ。今のなごやかなロックフェスと比べると。

加納:グループサウンズの沢田研二さんとショーケン(萩原健一)さんが一緒になってPYGというバンドを組んで、ロックの世界に入って来ようとしたことがあるんです。日比谷野音で一緒にやったんですが、どうなったと思います? 彼らが出て行った時に、何千人のお客さんが野次を飛ばして物を投げて“引っ込め!”コールですよ。(内田)裕也さんが出て行って、“こいつらは仲間だからよぅ”とか言っても、客は“引っ込め!”“やめろ!”。僕は楽屋にいて、戻ってきた沢田研二さんとショーケンが隣に座ったんだけど、泣いてました。それぐらい昔のファンはすごかった。その次の出番が僕たちだったんですが、お客さんがワーッと全員総立ち。テレビになんか全然出てないんですよ。その代わりライヴでいい音聴かせて音で勝ってきたから、音が出た瞬間“違うだろ? これだろ?”って。それが1970年とか、そのへんの時代ですよ。

──そこから考えると、加納さんの目には今の日本のロック・シーンはどんなふうに見えてます?

加納:今ですか? 正直に言っていいですか? ロックって言葉では言いますが、ロックをやってる人はいないですね。1960年代当時、僕がギターを持った頃は演歌や歌謡曲が全盛時代で、“いつかロックの時代が来る”と言っても誰も信じなかった。それから一応ロックの時代になりましたが、結局無難な方向というか、歌謡曲により近い方向に行きましたよね。僕みたいにロックとして生きていくのは、真似するのはなかなか大変ですよ。本気でやろうとしたら。続けられなくなることも多かったし、そう考えるとある意味ラッキーだったなと思いますよ。

──ロックという言葉が出たのでズバリ聞きますけども。加納さんにとって“ロック”とは?

加納:ロックというのは、その人に魂に訴えかけるものですよね。本人はたぶん気がつく人もいれば気がつかない人もいる。それぐらい影響力がある。たとえばそれを聴いたことによって、人生が少しずつ変わってきてるかもしれないということがあると思うんですよ。それでロックにもいいパワーがあるものと、良くないパワーがあるものとがあるんですね。ちゃんといいものを聴いてないと駄目だなという気がします。

──いいバイブレーションのロックを。

加納:そう。いいバイブレーションのものはどういうものかというと、それは上から来てます。神様がものすごいエネルギーを与えてくれていて、それをうまく受け取った人がみんなにいいバイブレーションを与えている。そうじゃない、悪から来てるものは悪いバイブレーションを与えて、その人の人生を狂わせることもあるので気をつけたほうがいい。それをどうやって感じるんだ?というと、人間には、自分では気がつかなくても魂がちゃんとわかってるということがあるんです。たとえば転びそうになる前に転んだ映像が見えるとか、まだ痛くないのに痛い予感がするとか、“これをやったら良くないな”とか、どこかで必ず教えてくれてるんですね。それが鈍ってくるといろんなことがわからなくなってきちゃう。

──はい。なるほど。

加納:人間はもともと、何も知らないんですよ。魂はたくさんのことを知っているのに、それを聞こうとしないからバランスが悪くなる。本当はいろんなことを教えてくれてるんですよ。それを素直に受け入れられる自分を作っておけば、宇宙からものすごいエネルギーをもらっていろんなことができる。それができるかできないかは、自分がどういうふうに生きるかで変わってきます。道は必ずいくつかあるけど、どの道を選ぶのか。そうやって選択してきた道は、全部自分のせいで、誰のせいでもない。人間はまだまだ何も知らないんですよ。しかも人生は短い。僕は300歳ぐらい生きたいんだけど、そうしないといろんなことがわからない気がする。

──はい。

加納:人生60歳からやっとわかってきますよ。人間的には、やっと青年になれたかなという気持ちですね。僕は10代の頃に頭の中に聴こえていた音が20代で弾けるようになって、30代で聴こえていた音が40代で弾けるようになって、40代~50代で聴こえていた音がやっと今できるようになったから、じゃあ今聴こえてる音がいつ弾けるようになるんだろう?というと、あと100年ぐらいなんとかなりませんかね?って(笑)。

──うーん、スゴイです…。

加納:今回のアルバムを聴いてもらえばわかると思うんですが、ジャンルにたとえられないんですよ。外道というジャンルでしかない。たとえばロックンロールだけで生きてる人もいれば、ブルースだけで生きてる人もいる。でも僕は“音楽”で生きようと思ってきたから、全部一緒なんですよ。しかも僕はバンドの練習をほとんどしない。みんな個人練習で、やれるのが当たり前。普通のバンドだったら、ツアーの前に1か月間の練習とかやるじゃないですか? 僕はその間に“みんな好きなことをやってくれ”って言う。それでパッと会った時に“1か月練習した以上のことをやろう”と。人生短いからね、練習してるヒマなんかない。もったいない。一個一個の活動が作品だという、僕の音楽への考え方はそういうことです。

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