【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】第36回『新譜のアナログ盤考察 ~現代のオリジナル盤~』

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

この頃は新品のレコードを買うことも多くなりました。
というのも、多くの現在進行形のアーティストが、新しい作品をCDだけでなくアナログ盤でもリリースすることが増えているからです。


これらの新譜のアナログ盤、連載初回で定義したこの連載おける「オリジナル盤」の意味からすると、これもまたオリジナル盤に違いないのです。

以前、本連載の第25回ではその新譜のオリジナル盤として、ロビー・ロバートソンの新譜のアナログ盤について取り上げましたが、今回は、ここ数年で買ったその他の新譜のアナログ盤の中から何枚かを紹介していきたいと思います。


『NORAH JONES / …LITTEL BROKEN HEARTS』


▲左下:ダブルジャケットの見開き部分に歌詞とクレジットが記載されている。 / 右下:白いレコード盤。レコードレーベルはオリジナルレーベル。

 
おそらく僕が最も好きな女性シンガー、ノラ・ジョーンズが昨年(2012年)リリースした5枚目のオリジナルアルバム。デンジャー・マウスことブライアン・バートンをプロデューサーに起用した心機一転の意欲作。

僕が彼女の作品で一番好きなのはやっぱり2nd『Feel Like Home』になってしまうけれど、だからと言って今も彼女にカントリーやジャズのルーツライクな作品を求めているのかというとそういう訳でもなく、前作『The Fall』も大好きだし、今作も大好き。結局のところ僕は彼女の歌そのものが好きなんだろうなと思います。そしてどの作品にも共通するシンプルでミニマルな世界も好きだし、決して華美になりすぎず歌も歌い上げないところも、飽きずにずっと好きでいられる大きな理由だと思います。

今回の作品ではデンジャー・マウスとの二人三脚によって、今までとはガラッと違った新たなシンプルでミニマルな世界を作り上げています。

音数の少ないサウンドと時折はっとするような煌めき。アナログな質感と一つ一つの楽器の存在感。そして現代性。

ノラ・ジョーンズの新境地開拓は見事成功したと僕は思います。もちろん初期2作のようなカントリー/ジャズ要素の強い作品が好きな人の中には離れて行く人もいるだろうけど、それと同時にたくさんの新しいファンも得たはず。大きな成功を手に入れても決して留まることなく挑戦し続け、進化し続けていく彼女は真のアーティストだと思います。

2012年、彼女の来日公演を武道館に観に行きましたが、それはそれは素晴らしいなんて言葉じゃ足りないほどのものでした。席がPA席の近くだったので音が抜群に良かったというのもあるのかもしれませんが、今まで観た来日アーティストのライブの中で一番良かったと断言できるライブでした。古い曲から最新の曲まで色々織り交ぜたセットリストで、音源で考えるとかなり違う雰囲気の曲が並んでいるような構成でしたが、実際ライブでは全くちぐはぐな感じはしませんでした。ライブの流れも良く、どこを切り取ってもノラ・ジョーンズ然としている圧巻のライブでした。

さて、ついつい熱弁を奮ってしまいましたたが、レコードそのものの仕様を見てみましょう。

ジャケットはダブルジャケット仕様で、その見開き部分に歌詞とクレジットが載っています。CDサイズではこの見開き部分だけでは歌詞は収まり切らないので、これもレコードならではの仕様。また、ポスターが6つに折り畳まれてレコードポケットに収納されているのですが、レコードジャケット6倍の大きさですからなかなかの大きさです。CDではこのポスターもCDジャケットの6倍サイズとなっており、この裏に歌詞が記載されているようです。

このアバンギャルドな雰囲気のあるジャケットは新しいノラ・ジョーンズをイメージさせるのにピッタリですが、これは古いB級映画のポスターにインスパイアされたとのこと。こういうインパクトのあるジャケットはやはりレコードサイズで拝みたいものです。

mp3のダウンロード・コードの記載されたカードが同封されています。この方式ももうすっかりお馴染みとなりました。

レコード盤は取り出してビックリしました。何とホワイト・バイナル!! そう、白いレコード盤なのです。カッコいい。何ともニクイことをしてくれるものです。こういうのは“モノ”としての所有欲を満たしてくれるんです。聴く前からテンション上がってしまいました。

180g重量盤で2枚組。盤の厚みも重さもしっかりしています。レコードレーベルはオリジナル。さすがに音質は申し分無し。音楽的に初期作品とはまた違った意味でアナログの質感にマッチしていますし、録音自体もアナログの質感を押し出した録音なので、アナログで聴くことでその良さが直に伝わってきます。そして作品としての雰囲気、ノラの歌をより存分に味わうことができるのです。

ただレコード2枚組で片面3曲ずつなので、かけっぱなしの“ながら聴き”をするのにはやっぱりちょっと面倒臭い。

でもだからと言って、自宅でmp3の音質で聴くという気にもなれないのも事実。外出先でポータブルプレーヤー×イヤホンで聴くというのならmp3でも仕方ないけれど、たとえ“ながら聴き”であっても、せっかく家で聴くのにmp3の音質では気分が下がってしまいます……。そもそもアナログで買った意味が「?」になってしまいます。

この、最近けっこう多い“アナログになると2枚組”のパターンについては、本連載の第25回でも書いているので、そちらをご一読いただければと思いますが、この作品なんかはトータルタイムが40分程度なので、僕はアナログでも1枚にまとめて欲しかったというのが正直な気持ちです。

それでも、ジャケット、ホワイトバイナルという特別感、もちろんその音質、作品と質感のマッチング、色々な意味でアナログで買って良かったな、と思うんですけどね。

さて他にも何枚か紹介していきたいと思います。
ノラ・ジョーンズには色々な思い入れもあってクドクドと語ってしまいましたが、他の作品については主にアナログ盤での仕様を中心にさらさらっと紹介していこうと思います。
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