秋葉原MOGRAによるインターネット音楽祭「あきねっと」。世界に流れを作ることができるのか

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ゼロ年代に日本に誕生したアニメをはじめとしたオタクカルチャーと従来のクラブカルチャーを融合させた極めてユニークな音楽シーン。こうした動きのコアに携わる音楽・映像アーティストたちが集うホームグラウンドとしての役割を果たしてきた秋原場MOGRAが、2013年11月3日、日本最大級のイベントスペース「新木場ageHa」で「あきねっと -秋葉原インターネット音楽祭-」を開催した。

◆あきねっと 拡大画像

普段の秋葉原MOGRAの収容人員は約120人であり、同カテゴリーの各イベントも熱狂の内に伝説を残しながら開催されて来たが、多くはキャパシティ数百人単位の規模であった。しかし、今回のあきねっとのハコである「新木場ageHa」のキャパシティは約2,400人と、クラブイベントを開催するイベントスペースとしては日本最大級であり、studio coastとしては「Primal Scream」や「Phoenix」といった大物ミュージシャンが利用する場所でもあるのだ。そうしたことから、日本の音楽を含めたユースカルチャーの系譜上、極めて重大な意味を持つことになるであろう、あきねっとの様子について今回は届けする。

――会場の様子

開演に先立ち一番大きなフロアARENAに足を踏み入れると、普段は天井の高さに吊るされているageha名物の巨大なスピーカー群「オクタゴン」が3m程の高さに下げられていた。ステージ上では、テストをするDJブースの背後に巨大なスクリーン。この音楽シーンが映像との係わり抜きには語れない事を示している。

――イベントスタート

【DJ濱】
深夜の新木場に長い待機列を作りながら、やや遅れてスタートしたISLANDではDJ濱のプレイ。スロースタートではなく、キメが効いたブレイクビーツにアニソンの名曲やアイドルソングを重ねる、本イベントの真骨頂的なプレイで最初から観客は大盛り上がり。

【killdisco】
killdiscoは素材としてはハウスからJ-POPまでも取り込みつつ、音はよりコアにbpmが速めなBMOREなども織り交ぜつつのアグレッシブなプレイ。オーディエンスが痙攣のように上下に体を揺らし、ISLANDは開始小一時間で早くもカオスな状態に。

【D-YAMA】
午前0時を回った頃、ARENAにMOGRA店長、choroyamaことD-YAMAがDJとして登場。イベント準備のハードワークの余り、一時は体調を崩したという愛すべきオーガナイザーにみんなが拍手。イベントが始まる間際まで、会場内を忙しく走り回っていた姿とは裏腹に、一番大きなフロアのトップバッターとして非の内どころ無いスタート。オクタゴンから流れる大音量の音とD-YAMAのプレイに観客の心臓は半強制的に鼓動させられる。

【DJねむきゅん】
秋葉原を拠点にして出発し、最も広く名前を知られるようになったグループと言えば、やはり「でんぱ組.inc」になるだろうか。夢眠ねむことDJねむきゅんがISLANDに登場。3年程前までは様々なDJイベントに出演し、実に彼女らしい新旧織り交ぜた選曲センスで人気を博していたが、今回は久しぶりのDJプレイ。そして今後も当面DJはしないそうなので、あきねっとにおける一つのハイライトになった。

【黒崎真音】
ARENAではライブ組トップバッターとして黒崎真音が登場。短期間でどうやってこれ程まで?と思わされる風格たっぷりのパフォーマンス。圧倒的で安定した声量と、立ち姿も凛々しいパフォーマンスでARENAを完全に制圧。尚、この日も披露したTVアニメ「東京レイヴンズ」のオープニングテーマ「X-encounter」はこのイベントの3日後に発売されるやiTunes総合チャート一位を記録した。

【PandBoY】
ISLANDでは、マッシュアップ作品等で見せる素材選びや、それらを洗練されたダンスチューンに仕上げるセンスで観客を飽きさせないPandBoY。この日はアンセムにもなっているGreen Night Parade、Love Circulationの他、日本一有名な銀行員・半沢さんの名セリフをブレイクビーツ系に乗せ、半ば曲芸とも言えるようなトラックを披露。

【DJ WILDPARTY】
身動きが取りづらくなる程の人を集め、ARENAでプレイするのはDJ WILDPARTY。散弾銃のように降り注ぐ音と光にARENAのボルテージは最高潮。選曲、繋ぎはもちろんだが、とりわけサウンドのチューニングが絶妙で迫力があった。

【The LASTTRAK】
新木場ageHaの中でも最も開放感のあるフロア「water」。そんな空間で軽快なドラムンベースに乗せて聞き覚えのあるサウンドを響かせていた2人組TheLASTTRAK。すし詰め状態のフロアが「エウレカセブン」のエンディングテーマ秘密基地を大合唱している様子は二度とお目にかかれないだろう。

【川田まみ】
DJ WILDPARTYに続いてARENAに登場したのはライブセットの2組目、川田まみ。大勢のアニメ好きのオーディエンスが、大音量で、立て続けに、そして生歌で「灼眼のシャナ」や「とある魔術の禁書目録」の歌を聴いたらどうなるか想像できるだろうか?怒涛のメドレーに圧巻としか言いようがなかった。

【Go-qualia】
次のISLAND注目は、分解系レコーズの主宰の一人、Go-qualia。アニメ、アニソンに係わる「音」を細分してサンプリングするトラックの構造美も神秘的だが、恐らくはこの界隈のアーティストの中で「萌え4コマ系」あるいは「ゆる百合系」と呼ばれるアニメと、そのキャラクターを最も深く愛しているのではなかろうか?映像とシンクロさせたキャラクターに捧げるかの如く制作したトラック群はいつだって胸を打つ。

【吉田尚記】
あきねっとの「動物園」と称されるBOXにて、軽快なトークで登場から盛り上げるDJ 吉田尚記。「もってけ!セーラーふく」や「God Knows」といったユーザーにとって愛着のあるアニソンの原曲音源を用いてそのまま繋いでいくDJスタイルにARENAやISLANDやWATERといったフロアとは違う盛り上がり方を見せる。

【五條真由美×池田彩×工藤真由】
ARENAでは、多くのお友達が待ちわびる「五條真由美×池田彩×工藤真由 for 大きいお友達スペシャルライブセット」がスタート。この時点で既に午前4時を回っていたのだが、そんな時間にハツラツとした3人が振付のキレも鮮やかにプリキュア・シリーズの主題歌を歌い抜き、フロアのオーディエンスがサイリウムを振りながらそれにレスポンスする様は、この音楽シーンのパワーの一端と、そこに潜むウイットをよく体現していたと思う。パフォーマンスが終わった後、何人かが「ありがとー!」と叫んでいたのが印象的だった。

【kz】
今やこの音楽シーンや国境の枠さえも越えてその名が知られるようになった音楽プロデューサー・DJ kzがARENAに登場。序盤からアグレッシブなエレクトロ。音圧で壁を揺るがす勢いで、ハードに盛り上げる構え。ただ終盤には「nexus」「reunion」といった人気アニソン、そして最後はGoogle ChromeのCM曲としても有名になったアンセム「Tell Your World」で締めくくった。大きなスクリーンでの同曲のミュージックビデオもまた圧巻であった。

【まじなる】
動物園であるBOXの最後を締めくくるのはDJまじなる。選曲は最新のものからちょっと昔の曲まで、幅広いアニソンでプレイし、観客は大興奮。イベントスタートから7時間近くたったとは思えない程の大合唱と熱狂ぶりで、涙を流すものもいれば、お立ち台に立って踊りだすDJ 吉田尚記などカオスっぷりを見せつける。

【okadada】
イベント最後のDJはokadada。選曲の幅が広い上に、順番も一筋縄ではいかない。ループでグルーヴを作っていたかと思うと、突然、不連続な楽曲を挟んで驚かせたりする。フロアを盛り上げてからの本編最後の楽曲として、この日の出演は無かったtofubeatsのナンバー「朝が来るまで終わる事の無い音楽を」をかける。この楽曲が始まった瞬間、このイベントが秋葉原MOGRAによるものであり、ここまで数多くの仲間たちが積み上げて来たものに連なるものであることを思い起こされた。巨大なフロアが一瞬で旧2.5D(池尻大橋)に、風林会館(新宿歌舞伎町)に、あるいはMOGRAそのものに変った気さえした。

――イベント終了

控室では出演者達がお互いを労い合う姿。D-YAMAが同イベントの入場者数が2000人を越え、この種イベントとしては例外的に多かったこと、事故も無く無事に終わった事について礼を言うと、D-YAMAの胴上げが始まった。この日、日本で宙を舞ったのは初の日本一を獲得したプロ野球球団「楽天イーグルス」の監督・星野仙一とD-YAMAだけではないだろうか。

日本人が生んだ音楽シーンでこれ程、独特で心の深い部分で共有し合い、楽しめる分野は少ないと思う。我々はあまりによくアニメ、アニソンやゲーム音楽を知っているし、それを耳にした時に音楽だけではなく、それらの背景にある物語の世界まで呼び覚ます事ができるのである。未経験の音楽ファンが居たら、ぜひ同様のイベントに足を運んで欲しい。

取材・文●新堀拓児/織田上総介

出演者:
ARENA
川田まみ / 黒崎真音 / 榊原ゆい / 五條真由美×池田彩×工藤真由 / kz / DJ WILDPARTY / DJ SHIMAMURA with MC STONE / okadada / D-YAMA / Naohiro Yako / DeLPi / onom+kmd

ISLAND
DJねむきゅん / PandaBoY / Go-qualia+Naohiro Yako / DJ ニッチ / Gassyoh / Killdisco / トーニャハーディング / からぱた / カレーパイセン / DJ 濱 / VIDEO BOY / ホンマカズキ

WATER
The LASTTRAK / KAN TAKAHIKO / いぬ / maonbass / chefoba / melo / esupa / kei。 / HokBoy / すーすけ / blok m / 310

BOX
吉田尚記 / spacetime / Gyaran / onion / まじなる / 後藤王様 / 沙亞也 / DJ kaw*kaw / 祖師谷太郎 / お父ちゃん。 / KITUNE / いしだなんです

◆秋葉原MOGRA公式サイト
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