【インタビュー】K、シングル「Christmas Time Again」リリース「どういう人間になればいいのか。やっと本当のスタートを切った気がします」

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Kが12月4日、シングル「Christmas Time Again」をリリースする。2年間の兵役を経て発表したミニアルバム『641』から約1年、その間に行われたツアーの充実ぶりがうかがい知れるバンド感溢れる作風は、現在のKのコンディションの良さを物語る仕上がりだ。そのタイトルが物語る通り、同曲はクリスマスをテーマとしたナンバーであるが、単にスタンダードナンバーを踏襲したものではない。Kならではの深い音楽的こだわりが詰め込まれたサウンドにはキックの音ひとつから一発録りに臨んだレコーディング方法まで、聴けば聴くほど新たなアイデアがそこかしこに発見できる“温かい”ものとなった。
「ここからが本来のスタートなのかなっていう気はします」と語ったKの、ここに辿り着くまでの葛藤も喜びも、すべてを語ったロングインタビューをお届けしたい。

◆「Christmas Time Again」Lyric Video Short ver.動画

■「Christmas Time Again」は温かみを作ることがポイントだったんです
■せーので録ったことで、音に人間臭さを出すことができた

──ニュー・シングル「Christmas Time Again」はまさにクリスマスにぴったりな、とてもロマンティックな曲ですね。もともとは、WAZZ UPのJUNEさんと作っていた曲だということですが、どんなきっかけでできたのでしょうか。

K:JUNEとは前からよく一緒に遊びで楽曲を作ったり、いろんなヒップホップのサンプリングをしていたんですよ。そういう遊びはしょっちゅうやっていたんですけど、ちょっと真面目に曲作ってみようよとなって。作っているうちにアップテンポな楽曲ができ上がったので、それは彼がやってる“WAZZ UPでやればいいんじゃない?”という話になって。じゃあ、これを再アレンジして僕もやってみたいなっていうところから、今回のカタチになりました。

──クリスマス・ソングがテーマの楽曲に仕上がったのは、歌詞がのってから?

K:最初からでしたね。クリスマスっぽいというか……冬っぽい曲を作ろうっていう話からなんですけどね。WAZZ UPの楽曲はアップテンポで跳ねている感じで、その上でのリアレンジなので。作っている時点でのイメージでは“こういう楽曲”というのはなかったんです。

──Kさんのバージョンの「Christmas Time Again」は、クリスマスの温かい景色、美しい冬の景色が浮かぶ曲になりましたね。どんなふうにアレンジしていったんですか。

K:昔からあるクリスマスソングとか讃美歌とかをYouTubeで聴いていたんですよ。自分自身、子どもの頃から教会に行っていたんですけど、やっぱり馴染みのあるクリスマス・ソングって、3/4拍子のリズムの曲が多いんですよね。それをどうやって4/4拍子にもっていくのかを、いろいろ試しながらやっていたんです。ただ、テンポは最初からそんなに落としてないんですよ。ゆっくりに感じると思うんですけど、それはリズムを変えていたり、あとは敢えてみなさんが知っているようなフレーズを4/4拍子に落とし込んだからで。そういう工夫でテンポをゆったりめに感じさせるという挑戦はしましたね。

──そうですね、いわゆるクリスマスのスタンダードナンバーやそのフレーズが散りばめられていて。それが馴染みやすいですし、気分も盛り上がりますね。これはアイディアとしてあったんですか。

K:そうですね、せっかくなので(笑)。いろんなアーティストのクリスマス・ソングを聴いてみると、100%のオリジナルってないんですよね。どこか讃美歌を元にして作るとか、誰々の歌を元にして作るとか、必ずフレーズのなかにはそういうものが入っていたりしていて。そういう元になるものというのは、きっとみんなが聴きたいものなんだろうなって。いろんな人が聴きたいと思うから、何十年経ってもクリスマス・ソングって同じような雰囲気を持っている。それは、そういうフレーズのためなんだろうなって。

──ベルの音などもふんだにもりこまれて、これもすごく効果的。

K:すごく細かい話になっちゃうんですけど、鈴の音は最初から最後まで入れる予定だったんです。でも、入れる入れない、っていう強弱をつけることでサビっぽくなったり。曲の頭から入っているので、ベルがあって当たり前みたいになっているんですけど、そのベルの音が抜けることで、本能的にベルの音が聴きたくなるんじゃないかなっていう。へんなところにこだわりを持ってレコーディングをしてましたね(笑)。あとライブで最近よく使っているトイピアノがあるんですけど。小さくて独特の音がするピアノなんですね。それを今回入れる場所がないかなっていうことで、敢えてトイピアノのためにブレイクを作ったりとか。だから、レコーディングはすごく楽しくやりましたね。

──一見とてもシンプルですが、ひとつひとつの音に耳を澄まして聴いてみるといろんな音が入っているし、こだわりのあるサウンドが折り重なっているところがポイントですね。

K:いろんな音で楽しませるというのと同時に、今回は温かみを作るっていうのがポイントだったんです。レコーディングは全員でスタジオに入って、せーので録ったんですよ。そのことで、やっぱりクリックとは微妙な音のズレがあるんですけど。それが逆に人間くさくなってよかった。

──機械的にキッチリとしたタイム感を出すのではなく、個々のタイム感を重視した結果、目的通りの温かさを出すことができたという。そのほか、レコーディングで面白かったことや印象深かったことはありますか。

K:基本、レコーディングは、例えばドラムとベースは一緒にとって、その後に上ものを乗せていくという進行になるじゃないですか。そうすると、それぞれのセッティングや音決めも含めて時間が結構かかるんですよね。楽器を変えればまた異なるマイクのセッティングもあったり。ただ、今回はベーシックをせーので録るっていうことは最初から決めて、メンバーにも伝えていたので。僕がピアノで、ギター、ベース、ドラム、オルガンの5人で録ったんです。朝10時には音を出しはじめて、11時にレコーディングをスタート、鈴の音とかトイピアノとか上ものの録りまで含めて、昼の2時に終わったんです。すっごい早かった(笑)。

──短時間に凝縮してレコーディングを行ったという。

K:時間をかければいいものが生まれるっていうのではなくて、本来、レコーディングってこういうものなのかなって思ったりしましたね。どうしても考えすぎて硬くなりすぎていたのも、今までのレコーディングであったんですけど、今回のレコーディングはみんなのグルーヴというか、みんなが感じていることを探りながらやっているのがよくて。実際に譜面も書いてきたんですけど、レコーディングしながら譜面もガンガン変えたりっていう、ライブのリハーサルをやってるような感じはありましたね。

──それもこれもサウンドに温かみを出すためですよね?

K:そう。で、なにが温かみなのかなって考えたときに、もちろん生楽器を使うとか、例えばキックの音に何か昔のアナログのフィルターをかぶせたら温かな音になるとか、そういうことももちろんあると思うんです。でも、それ以前にやっぱり人間が作るテンポ感っていうのには絶対、温かみがある。カ、カ、カ、カっていうところにぴったりはまればキレイに聞こえるけど、お互いのテンポにズレが出てきて、隙間が見えて、人間臭さが生まれるものだと思うので。これはみんなでドンっと録ったほうがいいなっていう。

──それがうまくいったということですね。

K:どうですかね、そこはリスナーのみなさんが判断することですので(笑)。ただ、打ち込みをやってる後輩も多いんですけど、生楽器ってこうやって音を生み出していくんだっていうのを見せたかったですね。キックをひとつ踏んでも、そのキックひとつで涙が出ちゃいそうなサウンドを作っていくっていうことを。現代の打ち込みしか聴いてない後輩に見せたいと思える、いいレコーディングでした。

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