【ライブレポート】1000say、東名阪ワンマンツアー初日に「音楽でみんなの期待を確信に変えていきたい」

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1000sayが11月17日、高円寺HIGHにて<-1000say 5th anniversary-東名阪ワンマンツアー[NONZOの逆襲]>の初日公演を行った。2015年にはバンドスタートから10周年を迎える彼らのステージをお届けしたい。

◆1000say 拡大画像

2013年夏は<JAPAN EXPO USA>に招聘されて初のUS公演を実現したほか、大阪、名古屋、仙台など首都圏以外でも精力的なライブ活動を展開してきた1000say。MAN(vo,g)、API(vo,b)、MICHELLE(syn)、NON(ds)からなる男女混合バンドは着実に活躍の場を、“BORDERLINE”を越えて拡げつつある。そして1stミニアルバム『STARGAZER ORCHESTRA』でCDデビューから5周年を迎えた2013年、彼らは初の東名阪ワンマン・ツアー<-1000say 5th anniversary-「NONZOの逆襲」>を行なった。

このツアーは、11月17日(日)の高円寺HIGHを皮切りに、24日(日)の大阪北堀江club vijon、12月1日(日)の名古屋ell.SIZEで開催されたもの。さらにこのツアー前には新曲「SPECTRUM」が、年内期間限定フリーダウンロードというかたちでOTOTOYよりリリースされた。“最近ライブから足が遠のいている人にも、今の1000sayの音を聴いてほしい”という想いを込めて、あえてフリーダウンロードという大胆なリリース形態にしたそうだが、アグレッシブなライブ感を真芯に据えつつ、綿密に構築された音世界はポスト『APOLLON』を占う意味でも重要な1曲となった。

東名阪ツアーのスタートとなる高円寺HIGH公演は、まずオープニングアクト公募で選ばれたDaft Pixyがホットなステージングでフロアを盛り上げる。その後、ステージ転換中には、2012年秋に<JAPAN EXPO BELGIUM>でベルギーに渡った際のドキュメンタリーフィルムが上映された。その中で印象的だったのは、フィルムの終盤でMANが語った言葉だ。“どんな旅も変わらないけれど、出逢いと感謝に満ちた旅だった”と。

ライブは1stミニアルバム『STARGAZER ORCHESTRA』のトップナンバー「ONE STORY」でスタート。タイトなNONのドラミングとMICHELLEのシンセが絡み、MANとAPIのツイン・ヴォーカルによるカラフルなメロディが繰り広げられていく。のっけからオーディエンスは大盛り上がりだ。続く「DANCE IN THE SEVEN DAYS」ではMANがステージ前ぎりぎりで愛器ジャズマスターをプレイしたりと、2人が縦横無尽にステージを動き回る。このように2人がオーディエンスを熱狂に導いていくのが、近年の1000sayのライブにおけるポイントのひとつ。「BORDERLINE」ではイントロのビートから“Hi! Hi!”というオーディエンスの掛け声が巻き起こる。まだレコーディングされていない楽曲ながらファンにはすっかり浸透しているようで、MANの巻弦主体のリフワークがインパクトたっぷり。この曲でもMAN、APIはフロアぎりぎりに迫りオーディエンスを鼓舞していた。

最初のMCでは「5周年おめでとう」というオーディエンスからの声に対して、MANが「音楽でみんなの期待を確信に変えていきたい」と強い言葉を語り、フロアは盛大な拍手により包まれた。続いては「BRAND NEW WORLD」「PHANTOMAGIC」「HANE」という怒濤の『APOLLON』キラーチューンを間髪空けずに披露。特に2011年に日本初のミュージック・アプリ・シングルとしてリリースされた「HANE」は、MICHELLEのピアノソロにMANによるロングサステインのギターが重なりドラマティックな間奏が胸に残る。その後にプレイされたのがこれまた未CD化の新曲である「FIFI」だ。ニューウェーヴィな変拍子リフながらも踊れるリズムが心地よい。赤一色に染まった情熱的なライティング演出の中、MANのギターカッティングとヴォコーダー処理されたヴォーカル、MICHELLEのモジュレーション・シンセ、そしてAPIとNONの女性リズム隊によりアグレッシヴなリズムパターンが放たれる。「FIFI」も間違いなく1000sayの新たな決定打といっていいだろう。

「FIFI」演奏後、ステージは暗転。するとステージバックにスクリーンが下りてきて、1000sayのバンドロゴが投影される。MICHELLEのピアノリフとチープなリズムボックスとともに、先述のアプリ・シングル「HANE」のPVを手掛けたスギモトトモユキのVJによる12星座がスクリーンに浮かび上がり、「WONDER」へ。APIはベースを置き、スタンドマイクで透明感あふれる歌声を披露。そこにMANのラップが絡み、NONのどっしりとしたドラミングが重なると、それまでの軽やかな音世界が一変する。ショートセットのライブではなかなかプレイされない楽曲であり、こういう曲が聴けるのがワンマンの醍醐味だ。「CANARY」は“KAZE NO TANI Remix”アレンジでのプレイ。APIはクラベスを叩きながらステージを舞うように歌いあげて、NONにより紡がれるダンスビートが、ダンスフロアと化した会場をさらにエスカレートさせていく。「流星DESTINY」ではミラーボールが回るとともに手拍子が巻き起こった。

中盤にはNONのドラムソロ、MANのエレキピアノのソロプレイも挟まれて、場内のボルテージはさらに上がっていく一方だ。「サジタリウス」ではスギモトトモユキのVJにより射手座の映像がスクリーンに映し出されて、再びジャズマスターを手にしたMANのトレモロリフ、シャープな刻み、柔らかなアルペジオのフレーズが連なり、ファンタジックな物語を紡いでいく。シンプルながらもブリッジを担うギターソロも色彩感も実に印象的だった。この後のMCでもMANは1000sayを支持し続けるファンへの感謝の言葉を述べる。そしてバンドが必ずしもこれまで順風満帆ではなかったことも告白するとともに、「この4人以外ではやりたくない」ということを強く語り、千言ラヴァーズ(1000sayのファンの通称)たちがそれに呼応して盛大な拍手を贈った。

「ライブ後半戦、ガツンと行こうと思うんですがどうですか?」というMANの言葉とともに、代表曲のひとつである「HOLY RAIN」へ。APIのスイートで突き抜けるようなハイトーン・ヴォーカルが印象的な、未来へのイマジネーションを歌いあげた1曲である。ラストサビ前のNONのスネアロールがさらなる絶頂感へと観衆を導き、APIの「みんな準備はいいかい?」という言葉とともに「BASKET SHOES」へ。MANとAPIのデュエット・ヴォーカルの魅力が全開となるこの曲は、サビでのジャンプ大会がすっかりラヴァーズたちに浸透。タオルを振り回し踊りまくるフロアの光景も楽しい。弾むようなダンスビートを繰り出すNONのドラミングに、MICHELLEとMANのシンセ・コンビネーション、小さな身体には不釣り合いにも見えるベースを弾きながら歌い踊るAPIという構図も1000sayならではで、間奏におけるMICHELLEのオカリナ・ソロも大きな見せ場となっていた。さらに「LOSTMAN」が放たれて、MANとAPIがオーディエンスをさらなるピークへと煽動していく。サビは言わずもがな大合唱だ。

そして遂にプレイされた「SPECTRUM」は、MANのギターソロもフィーチャーされて、1000sayの新機軸となった1曲である。サプライズゲストとしてレコーディングで参加したコーラス隊、天田優子(joy)、MAYUMI YAMAZAKI、KOHJIRO(The KAH)、 Shingo Maeda (birds melt sky)、ナガオ タツキ(nano sound museum) 、という、1000sayにとって戦友とも言える、リスペクトし合うミュージシャンたちが集結。コーラスパートで華を添えた。もちろんオーディエンスも大合唱である。

ゲストによるコーラス陣を送り出した後、「CD出して5年だけど、この4人でバンドをやり始めて8年。再来年の10周年ではまたスペシャルなことをやりたい」という、ちょっぴり急いたMANの想いが語られる。気づけばAPIの目には今にも溢れそうな涙がたまっており、他メンバーも感無量の表情を見せていたが、いよいよ本編最後の「OVER THE RAINBOW」へ。NONの躍動感あふれるタムタムを駆使したドラミングに、MANは空間系エフェクトとドライブサウンドを融合したギタープレイで、ポジティヴなヴァイヴを肉付けしていく。何処までも上昇していくようなアッパーなグルーヴもまたここ数年で明らかにスケール感が増しているのを実感した。

当然のごとくアンコールを求める声援と拍手が巻き起こり、4人に加えてゲストギタリストでTadahiro(HANABI ex.Addy)が登場。MANがスタンドマイクで「PRIZM」を歌い上げる。『APOLLON』のクロージングナンバーであり、壮大なスケール感を擁する屈指のミディアムチューンだが、これもワンマンでないとなかなか聴けない1曲。スクリーンには様々なライブ写真やオフショット、<JAPAN EXPO>のスナップなどが次々に映し出されて、近年の1000sayによる着実な足取りを認識できた。そしてMICHELLEのオルガンだけを残して“ラララ……”の大合唱が巻き起こったシーンに、「PRIZM」は1000say流のゴスペルなんだなという感想を抱いたのである。Wアンコールでは「FREEZE」をプレイ。軽快なダンスビートをバックに、ハンドマイクで歌い踊るAPIが観られた。冬の冷たさに温もりを授けてくれるような、この季節にぴったりの名曲だ。

この日のクロージングナンバーは「MICHELLE AGAINST THE MACHINE」。MICHELLEがメガホンを持ってステージ前を動き回り、過激なまでのアグレッシブなダンスビートが炸裂する! MAN、API、NONは残りの力をすべて出しきるかのような白熱のステージングを展開。4人それぞれが卓越した演奏技術とセンスを備えたミュージシャンであるとともに、抜群のキャラクターを持っている強みが、こうしたフィーチャリング・ナンバーで見事に発揮されるのだ。振り返れば全19曲、およそ2時間にわたるロングステージ。終演後、ラヴァーズたちとミート&グリートを繰り広げていた4人の姿も、1000sayのライブならではと言えるだろう。

終演後、MANに話を聞いたところ彼はこう答えた。「“SPECTRUM”をレコーディングしたことで、制作意欲に火が付いちゃって。『APOLLON』から2年経っちゃったし、2014年は制作の年にしようと思うんですよ」。デビュー5年における総括とともに、東名阪ツアーはまさにこれからの1000sayが向かう道も垣間見せてくれた。1000sayは“BORDERLINE”を超えて、ロックシーン、ポップフィールドにおける“BRAND NEW WORLD”を確実に具現化しようとしている。

取材・文◎北村和孝 撮影◎奥 世紀人

◆1000say オフィシャルサイト
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