【ライブレポート】ソロデビュー10周年記念 吉井和哉の、吉井和哉による、YOSHII LOVINSONのためのライブ

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吉井和哉のソロキャリアは、現在の吉井和哉としてでなく、YOSHII LOVINSONとして2003年10月にスタートした。だから2013年がソロデビュー10周年ということで、それをフックとした一夜限りのスペシャルライブが、12月7日にさいたまスーパーアリーナで行われた<10th Anniversary YOSHII LOVINSON SUPER LIVE>である。では、このライブもソロキャリアのスタートと同じように、現在の吉井和哉としてでなく、YOSHII LOVINSONとしてのものだったのかというと、違う。違うのである。吉井和哉の、吉井和哉による、YOSHII LOVINSONのためのライブ、だったのである。どういうことなのか。

◆<10th Anniversary YOSHII LOVINSON SUPER LIVE> 画像

当日のセットリストは、2003年から2005年のあいだのLOVINSON時代に発表された2枚のアルバムと4枚のシングルから19曲、そしてそれ以降の8曲、計27曲で構成されていた。たとえば、現在の吉井のライブで欠かせない「ビルマニア」のようなアッパーで、みんなで一緒に歌える楽曲は、LOVINSON時代にはほとんどない。MCで本人も「盛り上がる曲がない」と笑っていたけれど、冗談でもなんでもなく、そのとおりなのである。

いうまでもなく、吉井のソロキャリアの始まりは、THE YELLOW MONKEY時代と異なる新しいオリジナリティの確立を追求する始まりだった。しかしその大きな課題はじつに難題で、苦悩が苦悩を、不安が不安を呼び、やがて強い孤独感も生まれる事態へと発展し、それがこの人の作品に反映されていった。LOVINSON時代に「盛り上がる曲がない」理由がこれで、<10th Anniversary YOSHII LOVINSON SUPER LIVE>の前半はそういう曲が続いた。そういう曲が続いていくことで、試行錯誤の連続だった過去と現在が徐々に重なっていった。そこで、CDやレコードにおけるLOVINSONの歌と、いま会場で耳にしている歌がまったく違うことに気づかされるのである。それがもっともクリアなものとなったのは、15曲目の「SWEET CANDY RAIN」だった。

ジャンキーの女の子が主人公の絶望的に暗い「SWEET CANDY RAIN」は、原曲に忠実なアレンジで披露されたにもかかわらず、原曲の持つ暗さが漂うことはなかった。“ありがとう ありがとう 私に流れた色んな人たちの血”という歌詞も、“救いだった神にすら SAY GOOD BYE”という歌詞も暗く響くことはなかった。といっても、決して明るかったわけではない。やさしかったのだ。やさしさがあったのだ。アーティスト吉井の父性、父性愛が、死を覚悟した主人公の女の子だけでなく、LOVINSONをも包み込む歌にしていたということで、それは大変にドラマティックであり、感動的であり、そして、現在の吉井がLOVINSONを完全なる他者として捉えていることを象徴した場面でもあった。この日、二度あった静かなハイライトのひとつがこれで、そのもうひとつはアンコールのラスト。

2005年にLOVINSONが唯一行った全国ツアーのアンコールのラストは「トブヨウニ」だった。あのときのLOVINSONは楽曲の歌詞にあるように、“君のすることに無意味なものなどないって”と歌うのが精一杯だった。“君”とはもちろん自身のことで、しかもその歌声は弱々しく、だから、2005年のライブに光を感じなかったわけでは決してないけれど、暗く、重いムードで終演を迎えたことも事実だった。でも今回は違った。それを強く印象付けるため、吉井はあえて「トブヨウニ」をアンコールのラストナンバーとしたのである。

前述したように、新しいオリジナリティを確立するという大きな課題がLOVINSONにはあった。それは同時に、LOVINSON自身の大きな期待であったわけだけれど、それに応えたのは、LOVINSON名義でなくなった2006年以降の吉井だった。LOVINSONの希望を消してはならないという吉井の強い意思が、THE YELLOW MONKEY時代はもちろん、他のどのアーティストも鳴り響かせたことのない絶対的なオリジナルを生み出したのである。だから、<10th Anniversary YOSHII LOVINSON SUPER LIVE>で歌われた“君のすることに無意味なものなどないって”という歌詞はもはや、自身を慰め、励ますものとして機能するものではなかった。“君”、すなわちLOVINSONに対する感謝の意としてひたすらやさしく響き渡るだけだった。決して希望を捨てない人間の強さを感じることができたそのエンディングはじつに感動的で、「来年はTHE YELLOW MONKEYのロビンと、YOSHII LOVINSONと、吉井和哉が合体して、スーパー吉井和哉になる」とMCでいっていたことを併せて考えれば、どうしたって今後の吉井和哉に期待してしまうというわけなのである。

文◎島田 諭  写真◎MITCH IKEDA


<10th Anniversary YOSHII LOVINSON SUPER LIVE>
2013年12月7日(土)さいたまスーパーアリーナ セットリスト
SE. AT THE BLACK HOLE ★
1.20 GO ★
2.PHOENIX ★
3.黄金バッド
4.JUST A LITTLE DAY ★
5.WANTED AND SHEEP ★
6.RAINBOW ★
7.CALL ME ★
8.SADE JOPLIN ★
9.FALLIN’ FALLIN’ ★
10. SPIRIT’S COMING(GET OUT I LOVE ROLLING STONES) ★
11.NATURALLY ★
12.欲望 ★
13.煩悩コントロール
14.恋の花
15.SWEET CANDY RAIN ★
16.TALI ★
17.FOR ME NOW ★
18.MUDDY WATER ★
19.点描のしくみ
20.ビルマニア
21.WHAT TIME ★
EN1.BLOW UP CHILDREN ★
EN2.ノーパン
EN3.ルビー
EN4.ALL BY LOVE
EN5.トブヨウニ ★
※★印はYOSHII LOVINSON時代のナンバー

LIVE CD(完全限定受注生産)
『AT THE SWEET BASIL』
2013年12月18日
TYCT-60024 ¥1,500(tax in)
収録曲
1.20 GO
2.CALL ME
3.夢は夜ひらく(カバー)
4.血潮
5.BEAUTIFUL
6.SWEET CANDY RAIN
7.MY FOOLISH HEART
【ミュージシャン】
1st Violin & Trumpet:弦一徹/Piano:鶴谷崇/Drums:吉田佳史/Bass:井上富雄/Guitar:天野清継/Sax & W.W:武嶋聡
2nd Violin:カメルーン真希/Viola:森琢哉/Cello:村中俊之

<20th Special YOSHII KAZUYA SUPER LIVE>
2013年12月28日(土) マリンメッセ福岡
OPEN 17:00 / START 18:00
料金:全席指定¥7,500円(tax in)
[問]:BEA 092-712-4221
ミュージシャン
日下部正則(G)
生形真一(from Nothing’s Carved In Stone)(G)
吉田佳史(from TRICERATOPS)(Dr)
三浦淳悟(from PETROLZ)(B)
鶴谷崇(Key)

<吉井忘年会>
2013年12月28日(土) Zepp Fukuoka
時間:OPEN&START 22:00
料金:¥4,410(税込/1ドリンク・1フード付)
チケット発売;12月14日(土)より各プレイガイドにて発売開始
※演奏の予定はございませんので予めご了承ください。
[問]:BEA 092-712-4221

LIVE DVD/Blu-ray+CD BOX
『10–TEN-』
[初回生産限定]
※スペシャルブックレット(48P)封入+BOX仕様
DVD+CD BOX:DVD(4枚)+CD(2枚)
TYBT-19001 ¥18,000(tax in)
Blu-ray+CD BOX:Blu-ray(3枚)+LIVE BEST CD(2枚)
TYXT-19001 ¥19,800(tax in)
■LIVE DVD/Blu-ray
『.HEARTS TOUR 2012』
DVD:TYBT-10001 ¥4,800(tax in)
Blu-ray:TYXT-10001 ¥6,000(tax in)
■LIVE DVD/Blu-ray「TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA」
DVD(2枚組):TYBT-10002/3 ¥5,800(tax in)
Blu-ray:TYXT-10002 ¥7,000(tax in)
2013年10月1日発売


◆吉井和哉 オフィシャルサイト
◆EMI Music Japan
◆吉井和哉 オフィシャル YouTube チャンネル
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