クイーン、後期アルバムを生み出したスイスで展覧会がオープン

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世界エイズ・デーの翌日(12月2日)、スイスのモントルーにクイーンのマウント・スタジオを再現した展覧会<Queen The Studio Experience>がオープンした。1978年、7thアルバム『Jazz』の制作で初めてこのスタジオを訪れたクイーンは、レマン湖に面する美しく静かなこの街を気に入り、同スタジオを購入。1979年から1993年まで所有し、ここから『Jazz』『Live Killers』『Hot Space』『A Kind Of Magic』『Innuendo』『Made In Heaven』などの名作を生み出した。

◆展覧会<Queen The Studio Experience>画像

当初、このような平穏な街でアルバムを制作することに難色を示していたといわれるフレディだが、晩年にはアパートメントも購入するほどこの土地を愛するようになっていた。病に侵されながらも「できるだけ多くの曲を残したい」と願ったフレディは、亡くなる直前までこのスタジオを使用。クイーンのメンバーはそんなフレディを思いやり、彼の体調がいいときにはいつでもレコーディングがスタートできるよう、スタジオ内のソファで寝泊まりしていたという。そんな、メンバーにとって様々な想いがつまる特別な場所がファンに公開される。

<Queen The Studio Experience>は、実際にマウント・スタジオがあった敷地に建つ現モントルー・カジノ・バリエール内に開設。野生動物の保護を目的にブライアン・メイが始めたキャンペーン<Pride Of Cape Town>のため作られた“フレディ・ザ・ライオン”像に迎えられ中へ入ると、まずは彼らがツアーで着用した衣装、スタジオで使用していた楽器、手書きの歌詞など、このためにメンバーが提供したメモラビリアの数々が並ぶ展示室へ足を踏み入れる。

そして、その奥には同展示会の目玉であり、ファンがスタジオを“体験”できるコントロール・ルームがある。フレディ最後の曲となってしまった「Mother Love」をレコーディングした一室をできる限り忠実に再現したといい、展示会のため特別に、当時使用していたミキシング・コンソール(ニーヴ8048)をフルスケールで正確に複製したものを設置。これはただの飾りではなく、来場者はレバーを操作し、クイーンの曲を自分の好きなようにミックスすることができるのだ。ヴォーカルだけを聴きたい、ギターだけ、もしくはドラムとベースのみの演奏を楽しみたいといったファンの夢がクイーンのスタジオで叶う。

そして、デスクの後ろには、実際に使用していたマイクや24トラック・テープ・マシーンを展示するほか、床にはフレディが最後のヴォーカルを収録した場所を示す銘板がはめ込まれている。彼と同じ場所に立ち、彼のヴォーカルを聴くなんてこともできるのだ。

また別室には、フレディの思い出やモントルーでの逸話を語ったメンバーやスタジオ関係者のインタビュー映像が流れるスクリーニング・ルームを設置。貴重な話を、フレディが最後の日々を過ごした場所で聞くことになる。2フロアあった設備すべてを再現したわけではなく、決して広いスペースとも言えないが、ただ観るだけに終わらない、タイトルどおり“体験”する展示会であり、クイーン・ファンにとって新たな聖地となるだろう。

その夜開かれたレセプションには、ロジャー・テイラーとブライアン・メイも出席。スタジオや展示会に対する想いを語った。ロジャーは「この美しいモントルーにはたくさんの思い出がある。音楽が大半、酒が少々、そのほとんどが素晴らしいものだ。さっき展示会を覗いてみて、すごく光栄に思ったよ。みんなにも楽しんでもらいたい」と、ブライアンは「よく、なんでモントルーなんだって訊かれるけど、それはここが僕らにとって特別な場所だからだよ。すごくインスピレーションが湧いた。とくにフレディや彼の最後の日々にとっては…。それに、ここでは邪魔されることなく、僕らだけの時間を過ごすことができた」「(プロデューサーの)デイヴ・リチャーズや(エンジニアの)ジャスティン・シャーリー・スミスがいたのも大きいね。素晴らしいチームだった。家族みたいだったよ。だから、あの部屋で僕らと同じ体験をすることで、みんなにも家族の一員になったような気分を味わってもらいたい」と話した。

展示会は、フレディ・マーキュリーフェニックス・トラストが主催。入場料は無料だが、フレディが望んだエイズ支援活動への寄付を募っている。そして嬉しいことに、日本語のパンフレットも用意されている。

モントルーにはすでにフレディの銅像があるが、展示会がオープンしたことでクイーン・ファンにとって“マスト”な場所に。ブライアンはスピーチの最後に「フレディが亡くなったとき、ロンドンのハイド・パークに彼の銅像を建てようという大きなキャンペーンが起きたが、断られた。でもこの街はイエスと言ってくれた」と、モントルーの人々に感謝した。

Ako Suzuki, London

◆「Queen The Studio Experience」オフィシャルサイト
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