【ライヴレポート】amazarashi、<LIVE TOUR2014「あんたへ」>開幕に「ずっと今の歌、歌っていかなきゃなと思います」

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amazarashiが1月11日、<LIVE TOUR2014「あんたへ」>の初日公演を開催した。このツアーは全6会場を廻るもの。この日を皮切りに愛知、福岡、大阪から追加公演となるセミファイナルの東京Zepp Divercityを経て、北海道にてファイナルを迎える予定だ。その初日、ZEPP TOKYOの模様をレポートしたい。

◆amazarashi 画像

デビュー以来一切本人のメディア露出がないにも関わらず、強烈な歌詞世界が絶望の淵にいる多くの人々を魅了して止まない孤高のアーティスト秋田ひろむを中心とするバンドが、amazarashiだ。2013年は、初の野外フェスへの出演や対バンライヴの開催、中島美嘉への楽曲提供など新しい試みへの果敢な挑戦により、新しい層へとその音楽性が浸透しはじめ、11月20日にリリースされた最新アルバム『あんたへ』の表題曲「あんたへ」が2013年12月度の有線問い合わせチャートにて1位を獲得した。

年明け早々伝えられた初のミュージック・クリップ集リリース決定の情報など、2014年もamazarashiは精力的だ。ツアー直前にはキーボーディスト豊川の体調不良による不参加が伝えられたものの、最新アルバム『あんたへ』を携えてのツアーはまさにファン待望のもの。<amazarashi LIVE TOUR2014「あんたへ」>が1月11日、ZEPP TOKYOにていよいよ幕を開けた。

チケットは既にソールドアウト。埋め尽くす観客の期待は開演前から否が上にも高まり、会場は静かな緊張感に包まれる。開演時間を10分ほど過ぎた頃、アンビエントな雰囲気のBGMが突然止まると客電が落ち、客席から歓声があがった。ステージと客席を遮る半透明の薄い幕ごしに、メンバーが現れたのが見える。

1曲目はアルバム『あんたへ』の冒頭を飾るピアノの響きが印象的な「まえがき」だ。ステージを覆い尽くす紗幕にはモノクロームのサンドノイズが投射され、目まぐるしく踊る歌詞が現れては消える。まるで小説のような体裁を模したアルバム1曲目の音楽と映像と言葉が巧みにシンクロし、ステージ上には早くもamazarashiの世界が現出した。

一言のMCもなくライヴではお馴染の「ジュブナイル」、「奇跡」、「つじつま合わせに生まれた僕等」をたたみ掛けるように演奏。最新作『あんたへ』収録曲を中心に、前作『ねぇママ あなたの言うとおり』の「ジュブナイル」をはじめ、『千年幸福論』、『ワンルーム叙事詩』、『0.6』、『爆弾の作り方』という過去の作品からの楽曲を交えたセットリストでライヴは進行していく。「奇跡」ではamazarashiのライヴでは初となる鮮烈なレーザーが激しく照射され、前回のツアーから導入されたドットイメージという可動する電飾の眩い揺らぎが交錯し、見る者を幻惑させていった。

歪んだディストーション・ギターのイントロが響き、最新アルバム『あんたへ』から三拍子のリズムに乗せて朗々と奏でる美しいラブソング「ドブネズミ」へ。“人を信じる事 諦めちゃいけないよ それが最後の絆 この世界との きっと♪”──シンプルで真摯なメッセージが会場の全ての人たちの胸を締め付ける。映し出されたPVの映像と演奏が融合した「夏を待っていました」を経て、再びアルバム『あんたへ』より彼らの真骨頂ともいうべき強烈なメッセージの洪水が。「amazarashiを好きだと言ってくれる人をイメージして作った」と秋田が言う衝撃的な楽曲「匿名希望」。“僕は君の代弁者じゃない。君の代弁者は君以外にいない♪”──明朝体の「匿名希望」というタイトルがノイズの海の中に明滅し、紗幕を錯綜しながら希望を紡いでいく。

続けざまに最新作よりタイトル・チューン「あんたへ」へ。実際の映像をトレースしてアニメにするという手法により秋田本人が登場するミュージックビデオが映し出される。“早く涙拭けよ 笑い飛ばそう 僕らの過去”──青年の苦悩を描くミュージックビデオのストーリーとシンクロしていく秋田の魂の叫びが客席に沁み渡ったようだ。5年前に生まれたこの曲を、秋田自身が客観視することから今回のアルバムの着想を得たと言う。「あんたへ」は秋田が自分自身に向けた歌であり、同時に会場を埋め尽くすこのどうしようもない世界を生きる全ての「あんた」へ向けたメッセージでもあるのだ。絶望に端を発する歌詞が多いamazarashiの楽曲群の中では異色のストレートでシンプルで前向きな言葉が、こんな時代を必死に生きる全ての人々に贈る応援歌。ステージを見守る観客の涙腺が緩んでいく。

そしてライヴは前夜からのこの冬一番の凍てつく冷え込みの中、『ワンルーム叙事詩』から冬を彩る「真っ白な世界」を披露した。紗幕に浮かび上がるのは、しんしんと降り積もる雪の下の雪だるま。その映像はどんどんフォーカスされて巨大なスノードームが表出し、その中をキュートな雪だるまが闊歩していく。そんな姿に、心が和むものとなっていた。そして最新作より、ポエトリー・リーディングによる問題作「冷凍睡眠」へ。ステージには心臓と心電図モニターの映像が映し出される。ループするクリックノイズと、ピアノやストリングスの響きに彩られた近未来SFのごときストーリー。韻を踏んだ言葉が押し寄せるアブストラクトなヒップホップにも似た圧倒的な情報量が圧巻だ。激しくうねるレーザーがアグレッシヴなバンドの演奏と相乗し、まるで1本の映画を見た後のような激しい衝撃に観客は圧倒される。

ライヴもいよいよ終盤。過去の作品から「空っぽの空に潰される」をはじめ、ライヴでも人気の高い楽曲「無題」、「千年幸福論」を続けざまに演奏。何も絵の入っていない額縁のフレームを映し出しただけのシンプルな映像の下、ある画家の希望と挫折を描いた「無題」では観客の啜り泣きが聞こえてくる。ここでこの日初めて、秋田が観客に向かって語り始めた。

「人生いろいろ変わっちゃうけど……わいはずっと今の歌、歌っていかなきゃなと思います」

客席から温かい拍手と歓声が上がる。おもむろに中央でアコギを掻き鳴らし、秋田がシャウトした。“部屋の中で死にそうな 顔をしていた僕も今じゃこんな歌も歌えるようになった 悲しむな ここがスタートラインだよ 僕等の終わりで始まり♪”──これまでのツアーを経て、その成長に裏打ちされたバンドの力強い演奏と共に、最新作より究極のポジティブソング「終わりで始まり」を披露した。

紗幕にはオープニング時と同様、モノクロームのサンドノイズの映像が再び現れる。世界に拒絶され続けて来た秋田がamazarashiでの活動を経て、それまで自分自身に向けていたその歌を、今なら外へオーディエンスへ向かって歌えるんじゃないかと思い始めたことからスタートした最新作『あんたへ』の世界。その全曲を再現するこのライヴは、アルバム同様、『あとがき』で終了した。

鳴り止まない拍手の渦、紗幕越しに秋田以外のメンバーがステージを後にする中、素敵なサプライズが用意されていた。会場を静寂が包み込み、観客が固唾を飲んで見守る。そして、天井からの朧げなスポットライトに照らされたステージ中央の秋田のシルエットが、静かにアコギを爪弾きながら歌い始めた。

“僕が死のうと思ったのは ウミネコが桟橋で泣いたから♪”

エンディングナンバーは2013年、中島美嘉に楽曲提供した「僕が死のうと思ったのは」を、秋田自身が弾き語りで披露。死にたい自分を説き伏せて頑張り続けた秋田の、音楽への強い思いが伝わる素晴らしいこの曲で、全16曲のライヴが幕を閉じた。世界への復讐が原動力だった秋田の歌が今、優しい温もりをもって外の世界へ響き始めている。この日の会場を埋め尽くした全てのオーディエンスは、鳴り止まないスタンディングオベーションと秋田の姿にそう確信したはずだ。

いつものように終演後も暫く客電が点くことはない。まるで映画のエンドロールのようにamazarashiのロゴが映し出され、最新作から「あんたへ」がフルコーラス流れる。そのあいだ中、会場を後にする人はいない。曲が終わり明かりが灯り、再び温かい拍手が沸き上がり、初めて観客は席を立ち始めた。誰もがこのライヴの余韻を大事に胸に秘め、それぞれの帰路に着くことだろう。こうして<amazarashi LIVE TOUR2014「あんたへ」>初日、東京公演は終了した。

なお、このツアーの模様は、3月26日発売予定のamazarashi 初のクリップ集「タイトル未定」の特典映像として収録される。

■1st MUSIC CLIPS「タイトル未定」
2014.03.26 RELEASE
DVD    AIBL-9300 \3,800(税抜き)
Blu-ray AIXL-50 \4,300(税抜き)

■<amazarashi LIVE TOUR 2014「あんたへ」>
2014年1月11日(土)東京 Zepp Tokyo
開場/開演 17:00/18:00
前売/当日 ¥4,500(ドリンク代別)/¥5,500(ドリンク代別)
[問]ホットスタッフ・プロモーション TEL:03-5720-9999
2014年1月18日(土)愛知 名古屋ダイアモンドホール
開場/開演 17:00/18:00
前売/当日 ¥4,500(ドリンク代別)/¥5,500(ドリンク代別)
[問]サンデーフォークプロモーション TEL:052-320-9100
2014年1月19日(日)福岡 福岡イムズホール
開場/開演 17:00/18:00
前売/当日 ¥4,500(ドリンク代無)/¥5,500(ドリンク代無)
[問]キョードー西日本 TEL:092-714-0159
2014年1月25日(土)大阪 Zepp Namba
開場/開演 17:00/18:00
前売/当日 ¥4,500(ドリンク代別)/¥5,500(ドリンク代別)
[問]キョードーインフォメーション  TEL:06-7732-8888 
2014年2月1日(土)東京 Zepp Divercity Tokyo
開場/開演 17:00/18:00前売/当日 ¥4,500(ドリンク代別)/¥5,500(ドリンク代別)
チケット発売日 2014年1月11日(土)
[問]ホットスタッフ・プロモーション TEL:03-5720-9999
2014年2月8日(土)北海道札幌PENNY LANE24
開場/開演 17:00/18:00
前売/当日 ¥4,500(ドリンク代別)/¥5,500(ドリンク代別)
[問]ウエス TEL:011-614-9999

■NEW ALBUM 「あんたへ」
2013.11.20 RELEASE.
【初回生産限定盤(CD+DVD+ 文庫本ブックレット)】 2100 円 AICL2603
【通常盤 (CD)】1800 円 AICL2605
1.まえがき
2.あんたへ
3.匿名希望
4.冷凍睡眠
5.ドブネズミ
6.終わりで始まり
7.あとがき
ニューアルバム「あんたへ」の初回限定盤CDには文庫本型のブックレットに歌詞と詩集が掲載され封入される他、9月30日にリキッドルームで行われたライブ映像が収録されたライブDVDが付属する。また、通常盤CDには秋田ひろむ自身がコラージュされた写真が使われたデザインとなっている。


◆amazarashi オフィシャルサイト
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