【イベントレポート】ピアニスト小曽根真がApple Store, Ginzaのスペシャル・イベントに登場

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ピアニストの小曽根真が、1月10日(金)に「Apple Store, Ginza」で行われたスペシャル・イベント「Meet the Musician: 小曽根 真」に登場。訪れたファンに向け、ミュージシャンとしての半生や自身の音楽観などについてユーモアを交えてたっぷりと語った。

このイベントは、世界的ジャズピアニストでありながらクラシック界でも活躍の場を広げる小曽根が、来月にアメリカ最古の名門オーケストラ「ニューヨーク・フィルハーモニック」と共演することを記念して行われたもの。アップル社はこれまで、トム・ハンクスやポール・スミス、マイケル・ジョーダン、スティングなど各界のそうそうたる著名人を招いてこの「Meet the ~」シリーズを開催してきたが、同シリーズに招かれた日本人ミュージシャンは、これまできゃりーぱみゅぱみゅのみ。それだけに、小曽根の「Meet the ~」への登場は多くの音楽ファンの注目を集め、満席の会場は冒頭から熱気に包まれていた。

この日のモデレーターは、NHK「エルムンド」の司会でおなじみ、小曽根とも親交のあるアンドレア・ポンピリオ。親しい二人のトークはすぐさま盛り上がり、二人の背後に設置された大スクリーンが映す様々な写真/映像とあいまって、会場はリラックスした雰囲気を作り出していた。

■「スウィングしてへんって書いたら先生に怒られた(笑)」

2013年に世界デビュー30周年を迎えた小曽根は、様々なエピソードを披露しながら自身の音楽家としての半生を振り返った。

「スウィングしてへんって書いたら先生に怒られた」――小曽根が学校の授業でクラシックについて感想文を書いたときのエピソードだ。有名なジャズ・ミュージシャンである父と宝塚女優だった母の間に生まれた小曽根は、音楽とともに育ち、いつしかオルガンでジャズを巧みに演奏する天才少年として、メディアに注目されるようになっていった。

「父の友人であったジミー・スミスの楽屋を訪れたとき、父に命じられてアドリブを弾いてみたら、バンドのメンバーがセッションに参加してきた」といった数々のエピソードが語られると、これに応えてスクリーンには、当時の小曽根の貴重な写真が次々に映し出されていった。

■人生を変えてくれた恩師ゲイリー・バートン

アメリカの名門バークリー音楽大学への留学も果たし、ジャズピアニストとして順風満帆なスタートを切ったその後の小曽根。しかしその地で、小曽根は厳しくもあたたかいアドバイスを恩師から得て、音楽家としての自分の生き方を徹底的に見直すことになった。

当時、超絶技巧で聴衆を魅了することばかりを考えていた小曽根。名ヴィブラフォン奏者でバークリー音楽大学の副学長も務めたゲイリー・バートンが、小曽根の演奏を聴いて一言、こう述べたのだという。「超絶技巧に喜ぶファンはいつか離れていくが、君の音楽に感動したファンは、一生、君のファンであり続けてくれるだろう。」

この一言に心打たれ、自分の音楽とは何かを追求することの大切さを実感した小曽根は、自身の演奏スタイルを見つめなおし、作曲にも更に力を入れるようになったという。

■クラシックへの挑戦


小曽根はさらに、近年、意欲的に取り組んでいるクラシックについても大いに語った。クラシックとの出会い、クラシックとジャズを自由に行き来し表現することの喜び、オーケストラと共演することへの情熱・・・音楽を前に、小曽根の話は尽きない。かつてモーツァルトのピアノ協奏曲を初めて演奏することになった“理由”が、とんだ“勘違い”であったことを小曽根が明かすと、会場は爆笑の渦に包まれた。「曲が [ジャズの要素がある]“ラプソディ・イン・ブルー”だと思い込んで出演を引き受けたんです。後日、よくよく確認してみたところ、実はモーツァルトであったことが判明。焦ってCDを買いあさり、その後、必死に準備しました」

■名門ニューヨーク・フィルハーモニックとの共演への意気込み

トーク中、スクリーンに「ニューヨーク・フィルハーモニック」の圧倒的な迫力の演奏映像が映しだされると、会場のムードは一新。

小曽根は来月に行われる「ニューヨーク・フィルハーモニック」の5年ぶりのアジア・ツアーに抜擢されたことを「とても光栄」だと嬉しそうに話した。韓国・日本で彼らと「ラプソディ・イン・ブルー」を共演する小曽根。実は、170年を超えるアメリカ最長の歴史を誇るオーケストラ「ニューヨーク・フィルハーモニック」が、日本人ジャズピアニストをソリストに迎えるのは史上初だ。同オーケストラの音楽監督であり、指揮者として今回、小曽根と共演するアラン・ギルバートは、日本人の母とアメリカ人の父を持つ、生粋のニューヨーカー。昨年に横浜で初対面した二人は、すぐさま意気投合し、今では頻繁に連絡を取り合う大の親友だという。二人を結びつけたのもまた、ジャズだった。別れ際に手渡した小曽根の演奏CDを聴いたギルバートが、これを気に入って興奮して連絡してきてくれたのだという。「昨秋にニューヨークで再会した際には、アランの自宅に二日間通って、ジャズをひたすら聴きながら熱く語り合いました。彼はジャズドラムを演奏するんですよ。肝心の“ラプソディ・イン・ブルー”の打ち合わせをしようと切り出したら、"You'd be fine!"(大丈夫だよ、上手くいく!)とだけ返されて・・・結局、打ち合わせ無しで帰ってきました(笑)」妥協のない完璧な音楽作りにこだわることで有名なギルバートが放った力強いこの一言は、小曽根の演奏に寄せる信頼の深さを物語っている。

小曽根がギルバート指揮ニューヨーク・フィルハーモニックと演奏する「ラプソディ・イン・ブルー」は、ニューヨーカーだった作曲家ガーシュウィンが、ニューヨークで発表したという、ニューヨークとは縁の深い作品。ジャズとクラシックの最も幸せな融合の例として、今も多くの人に愛されている傑作だ。イベント終盤、会場から質問を受け付けた折には、「ニューヨーク・フィルハーモニックの公演チケットをすでに入手しているが、今回のトークを聞いて公演がとても楽しみになった!有難うございました!」との喜びの感想が小曽根に寄せられていた。2月の熱演に、大いに期待したい。

なお、この日のイベントの模様は、追ってiTunes・PodcastのApple Store Event「Meet the Musician」で配信される予定。

(C)Kensuke Tomuro
(C)Gen.Terai

<ニューヨーク・フィルハーモニック 2014年2月来日ツアー>
指揮: アラン・ギルバート
ピアノ: 小曽根真(2/10、2/15) イエフィム・ブロンフマン(2/12)
ヴァイオリン: リサ・バティアシュヴィリ(2/13)

■2月9日(日) 14:00/名古屋 愛知県芸術劇場コンサートホール 【プログラムA】
【問】中京テレビ事業 052-957-3333
■2月10日(月) 19:00/大阪 ザ・シンフォニーホール 【プログラムB】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
■2月12日(水) 19:00/東京 サントリーホール 【プログラムC】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
■2月13日(木) 19:00/東京 サントリーホール 【プログラムD】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
■2月15日(土) 15:00/神奈川 横浜みなとみらいホール 【プログラムE】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

【プログラムA】
ラウス: 狂喜
バーンスタイン: 『ウエストサイド物語』より「シンフォニック・ダンス」
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

【プログラムB】
ブリテン: 青少年のための管弦楽入門
ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー (ピアノ:小曽根真)
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

【プログラムC】
ラウス: 狂喜
リンドベルイ: ピアノ協奏曲第2番(ピアノ:イエフィム・ブロンフマン)
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

【プログラムD】
ベートーヴェン: オペラ「フィデリオ」序曲 op.72b
ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン協奏曲 (ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ)
ベートーヴェン: 交響曲第1番 ハ長調 op.21
ガーシュウィン: パリのアメリカ人

【プログラムE】
ラウス:狂喜
ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー (ピアノ:小曽根真)
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

<関連公演>
Sony Music Foundation(公益財団法人ソニー音楽財団)
10代のためのプレミアム・コンサート・シリーズ
2月11日(火・祝)18:00開演
<会場>サントリーホール
指揮:アラン・ギルバート/ジョシュア・ワイラースタイン
管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック
ピアノ:小曽根 真

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