【ライブレポート】テデスキ・トラックス・バンド、刺激的なハーモニー

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デレク・トラックスとスーザン・テデスキ率いるテデスキ・トラックス・バンドが、最新アルバム『メイド・アップ・マインド』を引っ提げて、2月6日に渋谷公会堂で来日公演を行った。デレク・トラックスは2014年1月8日に、自身が所属するもう一つのバンド、オールマン・ブラザーズ・バンドから2014年いっぱいで脱退することを表明したばかり。“メイド・アップ・マインド”(決意した状態、思いを定めた状態)でライブに望むデレク・トラックスが、どのようなギター・プレイを行うのか一目見ようとする音楽ファンで、チケットは完売。本公演はスペシャル・ゲストとして『メイド・アップ・マインド』のレコーディングにも参加したドイル・ブラムホールIIが参加することが発表されており、ファンの期待を益々高めていた。

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ブルース界のおしどり夫婦、スーザン・テデスキとデレク・トラックスが率いるテデスキ・トラックス・バンドが、アルバム『メイド・アップ・マインド』を引っ提げてのジャパン・ツアーが、渋谷公会堂で幕を開けた。

2001年に結婚、2010年のフジ・ロック・フェスティバルにデレク・トラックス&スーザン・テデスキ・バンドとして出演したことがあった二人だが、正式にテデスキ・トラックス・バンドとして始動したのは翌年になってからのこと。それぞれのバンドがそのまま合体したこともあって、2012年2月の来日公演は個性と個性が交錯して生み出すハーモニーが刺激的だった。

それから2年を経て実現した2度目のジャパン・ツアー。初日のステージは、よりバンドとしてのまとまりを感じさせるものだ。デレクがギブソンSG、スーザンがフェンダー・ストラトキャスターを抱えてステージに現れ、「メイド・アップ・マインド」でショーをスタートしてから、アルバムからの曲を中心に、じっくり聴かせるライブが繰り広げられる。ただ、かっちり構成が固まったぶん、その枠の中でデレクが奔放にスライドしまくるのが鮮烈だった。「ドゥ・アイ・ルック・ウォリード」でスーザンがソウルフルな喉を披露すれば、デレクも同じぐらいソウルフルにスライドを決める。

スーザンはボーカルにウェイトを置き、ギターはバッキング中心ながら、「ミスアンダーストゥッド」ではリードもプレイ。夫婦ソロの応酬を見せた。

あくまで曲と演奏を聴かせることに徹したこの日のステージ。アルバム・ジャケットのアートワークをステンドグラス風?にアレンジした垂れ幕を除くと、ショーアップされた要素はほとんどない。バンドのスターである2人がステージに上がるときも、もったいぶることなく、あっさり出てきて演奏を始める。だがそれゆえに、音楽そのものの魅力がよりダイレクトに伝わってくるのだ。

スペシャル・ゲストのドイル・ブラムホールIIもまた、虚飾を嫌うアーティストだ。2006年のエリック・クラプトン来日公演以来、久しぶりに日本のステージ上でデレクとドイルが合体という事件でありながら、ドイルはライブ中盤、まるでテデスキ/トラックス家に遊びにきたかのように「ヨッ」と現れる。華々しいファンファーレでなく鎮魂歌のホーン・セクションに乗って彼が歌うのは、ルイ・アームストロングの「セント・ジェームス病院」だ。

ドイルは5曲に参加、実際に家族ぐるみの友人であるがゆえ、あうんの呼吸で押し引きの効いたプレイで魅せる。フレディ・キングの「パレス・オブ・ザ・キング」では3人のリード・ギター掛け合いも見られたが、実に”絵になる”光景だ。ツイン・ドラムスとホーン・セクション、バック・ボーカル2人を含む大所帯のバンドにおいて、この3人は文句なしのフロントマン/ウーマンである。
もしテデスキ・トラックス・バンドに”代表曲”があるとしたら、それは「ミッドナイト・イン・ハーレム」だろう。この曲のイントロが奏でられると、会場からこの日一番の拍手が沸き上がる。ゴスペルを軸にしながらポップに味つけ、胸を締め付けるスライド・ギターをフィーチュアしたこの曲でしんみりさせた後、「バウンド・フォー・グローリー」で栄光を取り戻し、ハードなロック・リフが腰骨を突き上げる「ザ・ストーム」でバンドはいったんステージを後にした。
アンコールはジョー・コッカーの「スペース・キャプテン」。映画『バックコーラスの歌姫たち』で新たな注目を集めているこの曲だが、ここではスーザンがエモーショナルに歌い上げ、デレクがスライドで盛り上げる。ドイルも再びステージに上がり、コーラスとタンバリンでバックアップしていた。

デレクが15年間在籍してきたオールマン・ブラザーズ・バンドを年内いっぱいで脱退すると声明を出した直後の、渦中の時期に行われた来日公演。テデスキ・トラックス・バンドに専念する決意を固めて、さぞかし気合いを込めた演奏を聴かせるのでは…という予想を良い意味で裏切って、ひたすら音楽への喜びと悲しみをギターで表現するライブだった。

スーザンのボーカルが心を温め、デレクのギターが肌を火照らせる。さらにドイルまで参加したステージが終わって会場を出ると、冬の風が心地よかった。

文:音楽ライター山崎智之
写真:Yuki Kuroyanagi

テデスキ・トラックス・バンドは、7日(金)名古屋・ダイアモンドホール、9日(日)尼崎・あましんアルカイックホール、10日(月)SHIBUYA-AX、11日(火・祝)昭和女子大学 人見記念講堂の4公演の後、次の目的地インドへと旅立つ。また、デレク・トラックスのアイコンであるギブソンのSGギターの最新シグネチャーモデル「Gibson USA Derek Trucks SG」が、2月から国内で販売される予定だ(税込希望小売価格24万5700円)。デレク本人が監修したファン垂涎の一本となっている。

テデスキ・トラックス・バンドは2月5日に、『メイド・アップ・マインド』の収録曲2曲のアコースティック・セッション『ザ・サウンドチェック・セッションズ』を、iTunes配信限定でリリースする。

<2月6日渋谷公会堂 セットリスト>
1.Made Up Mind **
2.Do I Look Worried **
3.It's So Heavy **
4.Misunderstood **
5.I Know
6.St.james
7.Meet Me In The Bottom
8.All That I Need **
9.Part of Me **
10.Palace of the King
11.Midnight in Harlem *
12.Bound for Glory *
13.The Storm **
アンコール
14.Space Captain
** 最新アルバム『メイド・アップ・マインド』SICP3873収録曲
* ファースト・アルバム『レウ゛ェレイター』SICP3143収録曲

『ザ・サウンドチェック・セッションズ』
https://itunes.apple.com/jp/album/soundcheck-sessions-single/id804609883

『メイド・アップ・マインド』日本盤
※ボーナストラック1曲収録 SICP-3873 \2,400(税抜)
ハイレゾ:http://mora.jp/package/43000001/4547366211672/

<テデスキ・トラックス・バンド公演>
2月6日(木)渋谷公会堂
2月7日(金)名古屋・ダイアモンドホール
2月9日(日)尼崎・あましんアルカイックホール
2月10日(月)SHIBUYA-AX
211日(火・祝)昭和女子大学 人見記念講堂
http://www.udo.jp/Artists/TTB/index.html

◆テデスキ・トラックス・バンド・オフィシャルサイト
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