【インタビュー】リクオ、“風通しの良い柔らかい音”を求めレコーディング環境にもこだわったアルバム『HOBO HOUSE』

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■歳を重ねるごとに頑なさが消えてきて視野が広くなってる
■歳を経て若返っているんじゃないかなと思います


――「哀歌」は震災後にできた曲ですか?

リクオ:そうですね。震災後は数日間音楽をやるどころじゃない気持ちだったんですけど、割とすぐ3月後半からウルフルケイスケ君とのツアーに出たんです。その後も自粛せずに音楽活動は続けて、5月には、ソウルフラワーユニオンの中川敬君らと一緒に被災地を周り、主に避難所で演奏させてもらいました。そういった活動を経て、有事の際でも、場所や状況によっては、一定の力が音楽にはあるんじゃないかと思いました。自分ががそれまでやってきた活動の仕方が基本的には間違ってないな、とも実は思ったんです。

――それは、近い距離で直接歌を届けるという活動スタイルということですか?

リクオ:そういうフェイス・トゥ・フェイスの活動をやってきたのは、格好良くそうしてきたわけじゃなくて、そういう環境に迫られて活動を続けるうちに手段に意味を見いだすようになったということなんですけど。日本各地をまわってみて、「色んな風土があって色んな人がいる」ということを実感できました。この五感を使った実感の積み重ねというのが今の僕自身を支えているし、今の世の中にも必要なんじゃないかと、特に震災後に感じましたし、今もそう思ってますね。

――これまで以上に色んな場所で直接的に音楽を届けたいと思っていらっしゃいますか?

リクオ:そうですね。「これエコやんな?」って思ったりするんですよ(笑)。環境にいい。エネルギーの循環というか。受け取ったものを返してまた向こうから返ってきてという小さな循環社会がライヴの現場では成り立っているなぁ、と思いまして。

――それはリクオさんが年齢を重ねることで感じてきたことでもあると思うんですが、収録曲に「Forever Young」という曲がありますね。今年で50歳を迎えるにあたり何か思うことはありますか?

リクオ:あんまり意識はしてないですね。ただ自分が50歳になるなんて不思議な感じですけどね。「Forever Young」という曲は決してアンチエイジ的な曲ではないんです。僕の中では段々、歳を重ねるごとに頑なさが消えてきて、視野が広くなってるイメージがあるので、そういう点では、歳を経て若返っているんじゃないかなと思います。

――アルバム中盤は印象的な言葉が多いセクションになっていますが、まず「不思議な人よ」というのは誰かのことを歌っているんでしょうか?

リクオ:誰っていう風に限定しない方が良いかもしれないですね。聴いた人のイメージにゆだねたいです。この曲が生まれた動機の一つは、他者を受け入れず二項対立が深まってゆく世の中の状況に対するストレスだと思います。

――そういう気持ちは次の「ステキなバカンス」にも繋がっているんでしょうか?

リクオ:これは元々バブル全盛期だった20代の頃に書いた曲なんですけど、今の時代に合うように当時とは歌詞を変えています。

――リクオさんご自身もツイッターやfacebookを活用されていますけど、便利な反面の煩わしさのようなものも感じているんでしょうか?

リクオ:感じてます。情報量が多すぎて処理しきれないですね。でも案外偏った情報だったりする。僕らは自分達の意思で情報を得て、色んな選択をしているような気分になっているんですけど、実際はそうではないんだろうなという。自分の感性・価値観で本当に良いと思うものを選んでるのかなと考えてみると、必ずしもそうではなくて。

――翻弄されているというか?

リクオ:そうですね。翻弄され続けてます(笑)。ますますそういう世の中になっていくんじゃないかなと思うんですけど。それとSNS上では、例えば何か問題があって賛否両論があっても、そこから立場が違う相手との議論や対話が生まれにくいですよね、相手を否定するばかりで。

――「Happy Day」でも共通のテーマを歌っているんでしょうか?

リクオ:そうですね。寛容性が失われて二項対立に陥りやすい世の中になっているという。

――そういう世の中へ向けてのアンチテーゼということでしょうか?

リクオ:いや、アンチテーゼとか、対決しようという固い感じではないです。曲が生まれる背景には、ストレスであったり不安感であったり、怒りであったりというネガティブな感情というのがあるんですけど、その思いをストレートにぶつけるのではなく、だからこそ柔らかく風通しよくあろうというのが今回の一貫した態度です。

――そうした曲を経ての「ランブリンマン」は実にピアノマン・リクオさんらしい疾走感のある曲ですね。

リクオ:これはライヴの定番曲なんですよ。前半で空気を温める曲というか、ライヴというのが観るものじゃなくて参加するものなんですよ、ということを伝える曲です。今回はライヴでファンの方にはおなじみの曲も多いですね。

――「フシギ」という曲はリクオさんの内面を覗いたような気持になる感動的な曲ですね。

リクオ:世の不思議を感じる人が少なくなっている気がするんですよ。知った気になってしまっているというか。でもそれは情報として知っているというだけで、五感で実感したことではない。実は何も知らないんだ、という事に気付くには心の中に余白が無いと駄目だと思うんですけど、情報化社会の中で、情報を仕入れることばかりに追われてしまって。しかもその情報はどんどん流れて行ってしまうので、残らないですしね。

――リクオさんご自身は興味があることは直接見たり聞いたりしたいというタイプですか?

リクオ:僕の生活が色んな場所で色んな人に出会う機会が多いということもあるんですけど。日本は結構狭い国のイメージですけど、風土はほんとに多様性に富んでるんですよね。特に一人や少人数でツアーを周ってると、その土地の風土や人柄に触れる機会が多いので、そういうことを実感するんですよ。

――それを感じられるのは、ミュージシャンの特権ですよね。

リクオ:そうですね。自分は色んな現場に行くのも好きだし、家に籠るのも好きなんですけどね。だからうろつきながらも籠りたいです(笑)。一人でも居たいし、人とも触れあいたい。ずっと心の風通しを良い状態にしている事って難しいと思うんですよね。だから色んなストレスとか怒りとかにもちゃんと向き合って、エネルギーにしたいですね。何か良い形でアウトプットできればなと。まあストレスにも強くありたいとは思いますけど(笑)。

――アルバムのラスト「愛しい人」は歌いかけている対象ってありますか?

リクオ:“あの世から目線”の曲を書こうと思ったんです。

――“あの世から目線”ですか?

リクオ:年齢を重ねて、色んな人を見送る機会も増えてきて、さっきも話したように死というものが以前よりも身近に感じられるようになってきたんです。そういう体験をしていくうちに、生きてる側からの歌だけじゃなくて、あの世に旅立った側からの歌があっても良いなという発想が生まれてきたんです。まあでもそれは聴く人の捉え方なんで、その人の中でその人なりのストーリーが広がってくれれば一番嬉しいです。

――アルバム・リリース後はライヴも沢山ありますね。「HOBO CONNECTION」も今年は沖縄から北海道まで周るんですね。

リクオ:そうですね。「HOBO CONNECTION」は来てくれたお客さんにとっても、参加するミュージシャンにとっても、本当に一期一会のライヴなんです。演者もステージで音を交わしてみなければ、どんなセッションになるかわからないところがあって、その場の化学反応をみんなで楽しむというイベントです。

――ではアルバムについて改めて一言いただけますか?

リクオ:とにかくこのアルバムを聴いてくれた人の心の風通しが良くなってくれたら良いなと思ってます。アルバムを聴いて、ライヴにも足を運んでもらえたら嬉しいですね。

取材・文●岡本貴之

『HOBO HOUSE』2月21日リリース
(HW-031)
レーベル: HOME WORK
<収録曲>
1. 光
2. HOBO TRAIN
3. モンクス・ドリーム
4. さすらいの詩
5. 哀歌
6. Forever Young
7. 不思議な人よ
8. ステキなバカンス
9. 夜明け前
10. Happy Day
11. ランブリンマン
12. フシギ
13. 愛しい人

<ライヴ情報>
「PIANISTAR ROAD」
2月20日(木)下北沢 CLUB Que
【出演】MIKIO DUO[伊東ミキオ(Vo.Pia.)、多田尚人(Ba.Cho.)]/Haregalas/リクオ
前売り¥3000 当日¥3500(1drink別途) 開場18:30 開演18:30

「リクオ『HOBO HOUSE』発売記念インストアライブ&サイン会」
3月1日(土)
タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
出演:リクオ with SASAKLA(笹倉慎介) サポート:橋本歩(チェロ)、阿部美緒(ヴァイオリン)
参加方法: 観覧フリー

「うたのありか 2014」
2014年3月5日(水)
兵庫県加古川市 ダイニングカフェ Cecil(セシル)
出演:リクオ×中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)
前売り\4000当日\4500(1ドリンク別オーダー) 開場18:30 開演19:30

「うたのありか 2014」
2014年3月6日(木)Ohana Cafe(オハナカフェ)
出演:リクオ×中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)
前¥3500当¥4000(1ドリンク別オーダー) 開場18:30 開演19:00
キッズチケット前売¥2000 当日¥2500(税込・ドリンク別)
※中学生以下は入場無料。(保護者同伴にてご入場ください)

「HOBO CONNECTION 2014~福岡 LIV LABO コネクション~」
2014年3月8日(土)福岡市大名・LIV LABO
出演:福島康之(バンバンバザール)/リクオ/中川敬(SOUL FLOWER UNION)/新井武人(Rue de Valse)開場 19:00/開演 19:30
前売(予約)¥4000/当日¥4500

「HOBO CONNECTION 2014~featuringもじゃまつり~」
2014年3月14日(金)下北沢 440 four forty
出演:出演 大柴広己/岩崎慧(セカイイチ)/リクオ/追加出演者あり
開場 18:30/開演 19:30
前売(予約)¥3500/当日¥4000(入場時 別途2オーダー分1000円)

「HOBO CONNECTION 2013 ~ローリング・ジェントルメン~ 」
2014年3月15日(土)横浜 ThumbsUp
出演:仲井戸"CHABO"麗市/花田裕之/リクオ
オープニングアクト:SASAKLA(笹倉慎介)
開場 18:00/開演 19:00
前売(予約)¥5000/当日¥5500(要飲食オーダー)

「HOBO CONNECTION 2014 ~シェキナ・コネクション ~」
2014年3月21日(金)心斎橋 Bar Musze
出演:高木まひことシェキナベイべーズ/大西ユカリ/片山尚志(片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティー)/リクオ
開場 18:30/開演 19:30
予約 ¥3500/当日¥4000(入場時 別途飲食チケット1000円)

「HOBO CONNECTION 2014 ~コーヒーハウスの夜~」
2014年3月22日(土)   京都・拾得 075-841-1691
出演:友部正人/吉田省念(ex.くるり)/リクオ
開場 17:30/開演 18:30
前売(予約)¥3800/当日¥4300(要飲食オーダー)

「HOBO CONNECTION 2014 ~Good Music Good Feelling~」
2014年3月23日(日)   京都 西陣さらさ
出演:ふちがみとふなと/ナオユキ/バンバンバザール
開場 18:00/開演 19:00
予約 ¥3500/当日¥4000 (要1オーダー)

「HOBO CONNECTION 2014 ~Good Music Good Singing~」
2014年3月24日(月)名古屋・得三
出演:友部正人/奇妙礼太郎/バンバンバザール/リクオ
開場 18:00/開演 19:00
前売(予約)¥4000/当日¥4500(飲食別)

「HOBO CONNECTION 2014 ~HOBO NORTH BOUND~」
2014年3月27日(木)札幌 DIXIE ROUX
出演:友部正人/バンバンバザール/リクオ
開場18:00/開演19:30
前売(予約)¥4000/当日¥4500 (ドリンク代別途)

「HOBO CONNECTION 2014 ~フジサワ・コネクション~」
2014年3月30日(日)   神奈川県藤沢市 BarCane's 0466-28-5584
出演:リクオ/福島康之(バンバンバザール)/金 佑龍(キムウリョン)/SASAKLA(笹倉慎介)/宮下広輔(ペダルスティール)
DJ George(from sausalito)
開場 17:30/開演 18:30
予約 ¥3500/当日¥4000 (ドリンク代別途)

「リクオ・ソロアルバム「HOBO HOUSE」発売記念スペシャルライブ」
5/16(金)福岡市大名・LIV LABO 詳細近日告知

「リクオ・ソロアルバム「HOBO HOUSE」発売記念スペシャルライブ」
5/30(金)名古屋 TOKUZO(得三)  詳細近日告知

「リクオ・ソロアルバム「HOBO HOUSE」発売記念スペシャルライブ」
5/31(土)大阪 シャングリラ  詳細近日告知

「リクオ・ソロアルバム「HOBO HOUSE」発売記念スペシャルライブ」
6/3(火)渋谷 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール 詳細近日告知


◆リクオ オフィシャル・ウェブサイト
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