【インタビュー】新作「SHINING」から解く、Alice Nineが聴き手を光ある場所へ導く理由

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2014年、結成10周年を迎えるAlice Nineが、ニューアルバム『Supernova』発売を前に、シングル「SHINING」をリリースした。アルバムのリード曲となる「SHINING」、アルバムへの架け橋となるカップリング曲「from KURAYAMI」。届けられた新曲2曲は、轟音と静寂が混在する歌ものポストロックだ。今回はそんなAlice Nineのサウンドメイクについて、そして彼らの歌はなぜここまで献身的に聴き手に愛情を注ぎ、光ある場所へと導くのか、を大分析する。さらに、結成10周年にちなみ、“自分がいちばん感動したAlice Nineの曲”をそれぞれあげてもらった。

◆この曲で“夢、希望、Alice Nine”という
夢のトライアングルができたんじゃない?(Nao)


──ニューシングル「SHINING」は、平出悟さんを迎えて制作した作品ということで、「Daybreak」同様、ロックなんだけど音像は“ポストロック”な仕上がりですね。サビ以外、ギター押しじゃないところも「Daybreak」と共通していますよね。

虎(G):そうなんですよ。平出さんはギターに関して特長がありますね。ギターがパワーコードで押していくところは別の音で埋めていく。その上で両サイドのギターで別のことを弾くので、爽やかに聴こえるんだけど、(サビでは)音圧がある感じなんです。平出さんはエンジニアもやりながらなので、完成形の音を見据えてのアレンジ。俺なんかは自分で曲作るとギターはガッチガチに入れたくなるタイプだから“これだけでいいの?”って思うところもあるんですけど、自分とはまったく逆の作りだから、勉強にはなりますね。

──そして、ギターを前に出さないところでは、ベースがガンガン曲を引っぱっていって。

沙我(B):僕の中の平出さんの印象って、歌とリズムをすごく強調する人なんですよ。ギターよりもビートを全面にバーンと出しているからこそ、僕は曲がただのロックじゃなく、キャッチーに聴こえると思っていて。この曲もミックス変えるだけでめちゃくちゃパンクっぽくもなるんですね。だから、ライブでやると全然変わる。もっと同期を減らして、ロックっぽい肉感が出ると思いますよ。

──最初に曲を作ったときも、今のポストロックな雰囲気とは違う感じだったんですか?

沙我:僕のなかで「Daybreak」はライブで見たことがないところにいけた曲なんですね。セットリストではライブ中に1回沈んで、そこからまた這い上がるところに持ってくることが多かったんです。「Daybreak」のような曲が今まで僕らの曲にはなかった。いきなりガッと上がるんじゃなくて、「Daybreak」はすごくナチュラルに、本当に夜が明けるみたいに光が射していく曲になった。そこは平出さんとやって大成功したなと僕は思ってたんです。それで「SHINING」も一緒にやってみたら、単純に肉感だけじゃない仕上がりになった。例えば、すごいヘコんでる人がいるとしたら、無理矢理“元気出せよ”ってアゲていくのではなくて、包容力というか。優しく起こしてあげる大人のポジティブさが平出さんによって引き出されたかなと思いました。

将(Vo):確かにね。

ヒロト(G):「SHINING」は光と包容力を持った大人の強さに溢れたものになったと思う。

Nao(Dr):だからこの曲で“夢、希望、Alice Nine”という夢のトライアングルができたんじゃない?

──わー、ステキっ! どうしちゃったんですか、Naoさん(笑)。

Nao:今までみんなが言っていたとおりなんですけど、自然と幸せになれるような空気の曲だと思うんですよ。あとは、今まで以上に力まずに自然体で制作できたというのもあって、結果、その三角形ができましたね。

◆伝えたいことをちゃんと言える、お膳立てがちゃんとされていた曲。
そのお陰で自分的に良い歌詞が書けた(将)


──将さんの歌詞もそこを後押ししてくれていて。この曲を象徴するフレーズ“蹴飛ばせ”は、これひとつでネガティブな感情を吹っ飛ばすような、威力を持ったパワーワードだと思いました。

将:作詞家が言うべき場所をちゃんと作ってくれる曲ですからね。この曲は伝えたいことをちゃんと言える、お膳立てがちゃんとされていた曲なんですよ。そのお陰で自分的に良い歌詞が書けたなと思っています。

──さらに、曲中に手拍子が入ってるところ。あそこもパワーをかき立てられる。

将:あれは平出さんが夜なべしながら一人で作ったと言ってました(笑)。

──ライブではお客さんにあのハンドクラップを。

ヒロト:もちろんやって欲しいですね。

──そしてもう1つのポストロックが2曲目の「from KURAYAMI」。これ、強烈なインパクトを放つタイトルですよね?

将:仮タイトルが「KURAYAMI」だったですよ。初め見たときは、“ヒロト、病んでるのかな?”と思ったんですけど(笑)。10年目にして仮タイトルを初めてタイトルにアレンジして使いました。いつも使えないような仮タイトルが多いので結果使えなかったんですけど。

──それは仮タイトルが下品すぎてってことですか?

虎:でも下ネタ系はないよ! 自分で曲作ってそんなタイトルつけないでしょう。さすがに。

将:俺、そんなタイトル送られてきたらキレるかも! 歌詞書く気が起こらない(笑)。

◆将くんの声をきっかけにギュッと空間が凝縮してビッグバンが起こって、
星が生まれ、アルバムにつながっていくというイメージ(ヒロト)


──個人的にはこの「from KURAYAMI」。音に身を任せて、暗闇に身体が溶けてしまって無になってしまってもいいぐらい大好きな曲です。

将:今、僕らのキャリアのなかで、曲に対していちばん褒めてもらった気がする(笑)。

──唯一、今まで巡りあってきたこの手のタイプの曲と違うところは、暗闇に浸食されたまま終わるんじゃなくて、そこから「生きろ」っていう生命の鼓動を肉感的な音と言葉で感じさせるところ。どんなに闇を歌おうが、必ずそこから光や希望ある場所へと誘う。ここがAlice Nineだからこそだなと。

ヒロト:……俺がしゃべる必要がないぐらい曲の意図を感じ取ってもらえてます(笑)。この曲は「SHINING」とアルバム『Supernova』をつなぐ曲と位置づけて作ったもので、嵐の前の静けさじゃないですけど、宇宙のビッグバンが起こる直前。音も何もない真っ暗闇が訪れる。けれど、そこには髪の毛なのか針なのかわからないけど、それぐらいの細い光りがほんの少しだけ見えている。その後に将くんの声をきっかけにギュッと空間が凝縮してビッグバンが起こって星が生まれ、アルバムにつながっていくというイメージです。10年やってきてそれぞれの力量もずいぶん上がってきたので、曲にダイナミクスをつけていくサウンドも今のメンバーならできるかなと思ったんで、この曲はすごく小さい音から始まり、音でも暗闇からビッグバン、星が生まれる過程を表現しています。

虎:この曲については、めっちゃ厳しかったですけどね。ヒロトさんが(笑)。

将:面白かったのは、虎がヒロトにギターを「家で録る? それともスタジオで録る?」って聞いたら「家で録ったらやり直すことになると思いますけど」って速攻言われたみたいで。「じゃあスタジオで録るよ」って言ってたところ。

ヒロト:虎のパートは生の空気が震えるような音じゃないとダメだったんです。なので、家でやってもらってもその感じが……ね?(苦笑)。

虎:まあ、いいんだけど、とにかくめっちゃ厳しかったのは確か。そういうオーダーだったんで、ギターは手に力入れないで弾いてるんですよ。だから、実際ライブでこれをやれと言われてもできないレベルに近い。すごい大変だった分、RECした感はありましたけどね。

沙我:僕もこれは大変だった記憶しかない(笑)実は、もともとはまったく違う曲を入れる予定だったですよ。そうしたら、RECの4日ぐらい前にこれがバーッと来てビックリした。だから、必死でドラムとかリズムアレンジをしてなんとか切り抜けました。

◆インタビュー続きへ
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