【ライヴレポート】VAMPS、2014年初ワンマンに過熱する会場と果敢に切り拓かれる未来「夏ぐらいから動けたらいいなって」

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VAMPSが3月24日(月)、ZEPP DIVERCITY TOKYOにて<VAMPS LIVE 2014:LONDON PRE-LIVE>を開催した。タイトルが象徴するようにこのライヴは3月28日(金)のロンドン公演を目前に控えたものであり、2014年の初ワンマンとなる。OBLIVION DUSTのツアーファイナルから2週間後、L'Arc~en~Cielの国立競技場2Daysからわずか3日後というタイミングで行われたステージはHYDE曰く「すごいスケジュール(笑)」だが、やはりVAMPS。ステージは疾走する獣のような凄まじいサウンドが支配していた。ファンクラブ会員で埋め尽くされた客席も熱気の上昇が烈しい。

◆VAMPS 拡大画像

黒幕に覆われたステージ、投影されたデジタル時計の数字が刻々と時を巻き上げていくのをフロアの全員が固唾を呑んで見守る。ライヴのスタートは今日も19時06分、すなわち“6:66”。悪魔の数字が浮かび上がるその瞬間、怒濤のサバトが開宴する。緊張と興奮が交錯した空気、一分一秒、近づくほどに場内の熱は切迫して募る。

“5、4、3、2、1――――!”

ほとばしるカウントダウンの声。中央から厳かに開いた幕の向こうにはHYDE、K.A.Zを筆頭にギラリと剣呑な佇まいで構える5人の姿があった。VAMPS2014年初のワンマンライヴだ。ファンクラブ会員“VAMPADDICT”オンリーのライヴとはいえ、わずか20日足らず前という開催直前の告知だったにもかかわらずチケットは当然のごとく完売御礼、1階のオールスタンディングフロアはもちろん2階席には急遽座席が追加されるまでの盛況ぶりに、いかに彼らが待ち望まれてきたのかをつくづくと知らされる。

去る3月1日にはイベント<U-EXPRESS LIVE 2014>にてヘッドライナーを務め、さいたまスーパーアリーナを圧倒したVAMPS。また予てよりアナウンスされている通り、4日後の3月28日には二度目のロンドン公演が控えている。<VAMPS LIVE 2014: LONDON PRE-LIVE>と冠されたこの日のステージはいわば前哨戦だろうか。

だが、VAMPSの辞書にそんな言葉はないとばかり、のっけの「DEVIL SIDE」からフロアに飛び込まんばかりの勢いで5人はオーディエンスに挑みかかる。床に手をついては艶かしく身をくねらせ、かと思えば猛々しい咆哮を轟かせるHYDE。K.A.Zのクールでしなやかな身のこなしは却って内に秘めたる激情を感じさせて鋭い。ふたりをボトムから支えるJu-ken、ARIMATSU、JINの分厚いアンサンブル、三位一体ならぬ五位一体の闘志が容赦なく客席を巻き込んで大きななうねりを生む。応えてフロアもダイヴの嵐、狂騒がとめどない。

「VAMPS参上! ずいぶん溜まってるんでしょ、みんな。今日は全部、絞り取ってやるから一緒にいこうぜ」

「REDRUM」のあと、「THE PAST」の乾いたシーケンスに乗せて、HYDEがそう呼びかけると無数の拳が突き上がった。研ぎ澄まされたK.A.ZのリフにHYDEの歌とギターが絡んで増幅するエモーション。端正な曲の輪郭から滲み出てくる情感が胸に迫る。久しぶりに披露される曲も多いからだろうか、「THE PAST」に限らず、この日の演奏がいつになく初々しく感じられた。手慣れた技に頼るのではなく、真摯に“今”というモードで楽曲に向き合い、もう一度ていねいに奏で直そうとしているような、そんな印象があった。VAMPS結成から6年、活動が新たな周回を迎えるたびにさらなる高みへとフェイズを上げてきた彼らだ。VAMPSの立つ足元はいつだってまっさらな未踏の地。だからこそ、どれだけ聴き馴染んでこようとも彼らの音楽に触れる瞬間はいつも初めて肌を合わせるのと同じときめきがあるのだろう。

愁いさえも扇情的な「SECRET IN MY HEART」、「REPLAY」に匂い立つデモーニッシュな妖艶。「DOLLY」の冒頭、ARIMATSUが打ち鳴らすハイハットを合図にHYDEの体が宙高く舞うと熱狂は早くも最初のピークを迎えた。ヘヴィにして縦横無尽。HYDEソロ名義時代の楽曲ながら、これぞVAMPSの真骨頂というべき盤石のバンドサウンドになす術もなく身を委ねる。過熱した序盤戦の昂揚をやさしく冷ましたのは「SWEET DREAMS」だ。JINのピアノがリズム隊を先導して紡ぐ曲前のアコースティックなインタールード、慈愛と寂寥感溢れるHYDEの歌声をK.A.Zのたおやかな音色が世界観にしっとりとした余韻を添える。一語一句に自らの感情を乗せ、楔を打ち込むように放たれる歌と、その心情を受け取って郷愁の遥か先へとまっすぐに飛ばすK.A.Zのギターソロ。このリレーションがとてもいい。かと思えば一転、「Life On Mars?」の不穏な翳りが場内を浸食。緩急自在に翻弄されるこの快感もVAMPSライヴの醍醐味に他ならない。

「今日はVAMPADDICTオンリーということで。一緒にグイグイ行きたいなと。身内みたいなもんですから、これ。さあさあ、やれんの!? 頼むで」「今日のライヴはロンドンと同じメニューでやらせてもらってます」と前置きしたあと、そうハッパをかけると間髪入れずに「アー・ユー・ハビング・ファン?」と英語で問いかけるHYDE。追いかけるようにJu-kenが「“楽しんでますか?”」と和訳する。
「アー・ユー・ハビング・ファン?」
「“楽しんでますか?”」
「アイム・ソー・フィーリング・エンプティ」
「“すごく腹減った”って言ってます!」
「フー・ウィル・アイ・イート?」
「“誰、食べよっかなー?”」
「フー・ウィル・アイ・イート?」
「“誰食べちゃおっかなー?”」
「フー・イズ・ザ・クレイジー・ワン? ウェア・アー・ユー?」
「“狂ったヤツはどこにいる?”」
ロンドン仕様のアジテーションで煽りに煽って突入した「HUNTING」では、またもダイバーが続出だ。続く「WORLD'S END」は「AHEAD」の完全英語詞バージョン、HYDEのMCによれば最初はそちらのタイトルにするつもりだったとのこと。しかし久々のシングルで“世界の終わり”というのもどうかと思い、使い分けることにしたらしい。もともと英詞パートの多い曲ではあるが、よりドライヴ感が増して聴こえる。果敢に切り拓かれるVAMPSの未来、世界の果てのその先がリアルに迫って見える気がした。

演奏が加速すればするほどにオーディエンスの昂揚にも拍車がかかる。あまりの過熱ぶりを見兼ねてか、ふだんはファンの自主性に任せるHYDEが「ANGEL TRIP」の曲中、いつものブレイクタイミングで自ら「ちょっと下がってみ? 前に押すことがノることじゃないからな。大丈夫? できるか?」と注意を促す場面もあった。身内同然の大切な仲間だからこそ誰も危険な目には遭わせたくない、そうした彼なりの心配りがざっくばらんな口調にひしと伝わってくるようだ。

そうして「TROUBLE」「MIDNIGHT CELABRATION」と一気に本編を畳み掛ける。気づけば序盤に感じた初々しさはどこへやら、やはりVAMPSはVAMPS。ボス・オブ・ロックンロールの健在をまざまざと見せつけられた。まったくの蛇足だがVAMPSには“キング”より“ボス”の称号が似合う。

「いい感じじゃないか、君たち。元サヤって感じでね、やるほどに気持ちよくなる」

再び登場しての「REVOLUTION II」、満場のストンプを響かせた直後に開口一番、HYDEはしみじみ言った。読者諸兄もご存知のようにHYDEもK.A.Zも各々、もうひとつのバンドにて、片や国立競技場2DAYSライヴ、片や4大都市ツアーを敢行したばかりだ。それぞれがふたりにとってかけがえのないものであるのと同様に、VAMPSにはVAMPSでしか味わえない空気が、熱が、光景があって、それらはこの親密な空間にこそ満ち満ちている。やはり前哨戦などではない、相思相愛のエネルギーを存分に充填してロンドンに臨みたかったに違いない。そう確信した。

VAMPSのVAMPSたる所以、その揺るぎなき体現はこの日の「LOVE ADDICT」に凝縮されていたように思う。K.A.ZからHYDEへ、HYDEからK.A.Zへと小気味よいカッティングフレーズの交歓。不意にJu-kenがステージ後方に下がり、向き合って弾き合うふたりがクローズアップされた刹那の、視界に溢れるカタルシスといったらなかった。やはりVAMPSの原点はこれだ。ここから生まれる未来が見たい、そういうことなのだと思う。

ちなみに今回のお披露目は叶わなかったが、ロンドンではミュージックビデオの撮影も行われること、つまりは新曲のリリースを匂わせるうれしい予告も本人たちの口から出た。レコーディングもそう遠くないらしい。「とりあえずはそれをとっとと終わらせて夏頃には本格的に動き始められればいいな、それまでは散々浮気しといてください」と自信のほども覗かせる。

オーラスはエンディングの大定番「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」が飾った。旅立ちの餞にふさわしい大団円だ。演奏終了後、まっすぐに伸びるファンの腕に応えるようにバラの花びらをむしっては撒き散らすHYDE。K.A.Zの投げたピックがシャープな軌道を描いてフロアの怒濤に飛び込んでいく。Ju-kenは水を、ARIMATSUはスティックを、JINはタオルを、と五人五様なのが面白い。

「また帰ってくるから、それまでいい子で首洗って待ってろよ!」

確かな約束。どうやら浮気はできそうにない。まずはロンドンからの凱旋報告を心待ちにしていよう。

取材・文◎本間夕子 撮影◎田中和子

■<VAMPS LIVE 2014:LONDON PRE-LIVE>
2014年3月24日@ZEPP DIVERCITY TOKYOセットリスト
1.DEVIL SIDE
2.REDRUM
3.THE PAST
4.SECRET IN MY HEART
5.REPLAY
6.DOLLY
7.SWEET DREAMS
8.Life On Mars?
9.HUNTING
10.WORLD'S END
11.ANGEL TRIP
12.TROUBLE
13.MIDNIGHT CELEBRATION
14.REVOLUTION II
15.MEMORIES
16.LOVE ADDICT
17.SEX BLOOD ROCK N' ROLL


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