【インタビュー】Kαin、2daysライブを前に過去~未来を語る「究極の真理とは人間は生まれた瞬間に死が決まっていること」

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■ステージ中央に立ったときに、ものすごく愛されていると感じる
■きめ細やかに神経を使えるメンバーがいるから気持ちよく歌うことができる

──そうして生まれたKαinというバンド名は、聖書の“アベルとカイン”から来ているんですよね。

YUKIYA:そうです。そもそも1990年代の終わりくらい、まだ若かりし頃にD≒SIREで一緒だったSHIGEと“こういう名前のバンドをやりたいね”って話してたんですよ。だからKαinで一緒に組むとなった時点で、彼も「アレですよね」みたいな感じだったし、バンド名を話し合うことも特になく、名刺代わりにリリースした1stアルバムでも、聖書の「創世記」をモチーフにしたんです。バンドの成り立ちからしても、今までのことをリセットしてイチから始ようってバンドだから、意識が人類発祥の起源にまで遡るのも自然なことでしたし。そもそもアベルとカインはアダムとイブから生まれた子供……つまり、人間と人間から生まれた最初の人間であって、それが既に欠陥品だったわけですよね。

──ええ。カインは弟のアベルを殺すわけですから。

YUKIYA:そう考えると人間の抱える原罪みたいなものを考えるにあたって、すごく相応しいバンド名かなと。意図したわけではないけれど、いろいろ符号しましたね。例えば、アダムとイブがエデンを追われて東へ逃げていくというのも、関西の人間である僕らが東京に出て来るのと通じるものがある。

──それで「east of eden」という楽曲があったりするんですね。

YUKIYA:はい。まだ若かった僕らにとって、東京という街が“エデンの東”であってほしかったということですよね。

──なるほど。2007年にKαinが始まって7年弱。その間にメンバーの入れ替わりなどもあって、ともするとKαinはYUKIYAさんのソロプロジェクト的な見え方もするのですが、実際のところ、どうなんでしょう?

YUKIYA:3年くらい前にマニピュレーターが、クリエイター活動との両立ができなくなって辞めたとき、オフィシャルサイトに上げたコメントの中で“恐らくKαinに関わっている人間全員がKαinとはイコール藤田幸也であるという概念のもとに携わっているはずで、自分がKαinというバンドをやっていたのも、それ以外の理由は何もない”的に言ってくれてたんですね。実際、Kαinが今までにやってきたバンドと何が違うか?というと、ステージの真ん中に立ったときに、ものすごく自分が愛されていると感じることなんですよ。呼吸を合わせることに対して、きめ細やかに神経を使えるメンバーが揃っているから、僕も気持ちよく歌うことができる。でも、それってイコールすごくバンドっぽいということでもあって……だから自分でもわからないんですよ。

──バンドといえばバンドだし、ソロプロジェクトといえば、それに近い側面もある。

YUKIYA:はい。ただ、メンバーに楽曲を提示するときに、まず自分の世界観を伝えるのは確かですね。例えば、歌詞の中に橋を渡るシーンが描写されていたとして、その橋の材質は鉄なのかコンクリートなのか? どんなふうに歩いているのか? 時間帯は? 天候は? 地面は乾いているのか湿っているのか?というところまで話します。その上でメンバーも音色やプレイを決めていくんですよ。

──共通認識として浮かぶ景色の設定が、ものすごく具体的で緻密なんですね。それだけ歌詞に注力しているアーティストは昨今珍しくもあって、昨年末に渋谷公会堂で行われた“OVER THE EDGE”では、なんとオーディエンスに歌詞を携帯で読ませながら歌われたじゃないですか。おかげで、より歌詞が心に沁みましたし、そういった意味でも独特な役割をシーンで果たしていらっしゃるなと。

YUKIYA:でも、あれも苦肉の策だったんです。“OVER THE EDGE”も初年度から実行委員としても関わらせてもらっていて、運営側からも出演バンドからも毎年“YUKIYAさんの枠”みたいなものを用意していただけるのは、とてもありがたいことなんですね。ただ、本来はその年に頑張った人たちが出るべきイベントでもあるから、すごく自分の中でも葛藤はあって、実際、出演を辞退した年もあるんです。例えば女性の方で例えるなら……今、AKB48に入って、ティーンの子たちと一緒に水着で踊ってくださいと言われたら、結構ヘヴィじゃないですか?

──もちろんです(笑)。

YUKIYA:そういうのに近い心境もあるので、今年の自分は出るに値しないだとか、藤田幸也という人間の年齢やキャリアならではの、他の人間にはできない“何か”を提示できないと思った年は出ない。だからアイディアが尽きたら、たぶん、もう出演しないでしょうね。

──とはいえ、ヴィジュアル系も歴史の浅いジャンルですから、そこに20年いらっしゃるYUKIYAさんの存在意義は大きいんじゃないかと思うんですよ。

YUKIYA:まぁ、もともと僕自身はBOφWYフォロワーのつもりで、BUCK-TICKとかUP-BEAT、KATZEあたりに続いてる気持ちでいたから、自分でヴィジュアル系に入ったつもりはまったくなかったんですけどね(笑)。ただ、ものすごく独特なシーンになっちゃったなぁとは思います。言ってみればバンドの序列が固定化していて、若いバンドがどんなに頑張っても、いわゆる大御所を遥かに凌ぐ位置に行けることはないだろうし、端的に言うと売れ筋の商品が20年前と変わっていない。そういう観点で見れば、僕みたいなのが生き残っているのも、そんなに不思議なことではないのかなっていう気もするんですよ。

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