【インタビュー】lynch.「俺たちのダークな雰囲気であるとか世界観、メイク、黒づくめの服といった特徴を全部武器にしようと思った」

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■自分の意志で堂々とやってしまえば逆に武器になる
■そう思考を切り替えて臨んだんで殺傷力が段違いなんです


――そんな従来のlynch.らしさと新しい側面の双方が詰め込まれた作品で、リード曲になるのが3曲目の「DEVIL」ですが、何やらこの曲に決まるまでは紆余曲折があったとか。

玲央:みんなの意見がバラバラになったんですよね。それも結局、どの曲をリードで出しても恥ずかしくなかったからだと思う。

葉月:2曲目の「GALLOWS」にしたいメンバーもいれば、ディレクターは「GREED」推してたり、もう決まんないからラストの「PHOENIX」にしようとか、無茶苦茶なことを僕が言い出したり(笑)。結局アーティスト写真とのイメージ的な結びつきだとか、タイトルからも不吉な雰囲気を出せているということで、いろいろと辻褄が合うのが「DEVIL」だったんです。

――へヴィネスと軽快さを併せ持つノリの良い楽曲で、丹修一監督によるMVも100%スタイリッシュでカッコいいんですが……何故カポエラによるバトルシーンが差し込まれているんでしょう?

葉月:理由は何も無いですね。ただ、回し蹴りをされる絵が欲しくて。

明徳:回し蹴りでスピード感が加速してるんですよ!

玲央:スピード感があっても上品っていうところには、ちょっとこだわりましたね。最近はギラついた色味のMVが主流ですが、僕らが表現するものとしてはソコとは一線を画したかったんです。

――“上品さ”というのはlynch.の個性としてピンと来ます。ピアノ・インストゥルメンタルによる幕開けも、ハイセンスな雰囲気を醸し出していますし、あのピアノは葉月さん自ら弾かれているとか。

葉月:途中から打ち込みなんで、頭の部分だけなんですけどね。「EXODUS-EP」のときも、その前の『INFERIORITY COMPLEX』(2012年6月発売2ndアルバム)のときも“SE欲しい”と思いながら、いつも作る時間が無くて。だから今回こそは絶対入れよう!って、最後に勝手に作って持っていったんです。そしたら13曲っていう史上最多の曲数になった(笑)。

玲央:その「INTRODUCTION」に続く「GALLOWS」は、ホントにアルバム本編のスタート曲に相応しい曲になりましたね。高揚感があって、一聴して“これはキタな”と思ったから、僕はリードに推してたくらい。

――頭からシャウトで攻め立ててサビで急展開する、実に爽快な曲ですよね。ちなみに他の皆さんの推し曲は?

晁直:俺は「GREED」ですかね。リズムが跳ねの中に跳ねてるっていうか、何の変哲もないリズムに聴こえて、実は叩いてるとすごく難しいんです。テンポが変わったりだとか展開も多いし、叩けるようになるまでは結構苦労して、でも、叩けるようになってきたら楽しくなって。音もアルバムの中で一番好きな仕上がりになってます。

明徳:僕は「TOMORROW」。デモが上がって初めてスタジオで合わせたときに、葉月さんが歌詞もナシでサビを歌ったときの衝撃が、もう、ホントに凄くて! すごく新しいものにも聴こえるし、でも、馴染みのあるキャッチーなところもあるし。“このアルバムはイケる!”って、一気に気持ちのスイッチが入ったんですよ。

――ただ、シャウトからクリーンへの切り替えが激しい曲なので、ライブが若干心配。

葉月:そのへんも実はあらかじめ計算してあって、よくよく聴いてもらうとサビ前の切り替わり部分とかは、シャウトじゃなくてガヤ系のコーラスになってる曲が多いんですよ。そこは楽器隊に任せて僕は呼吸を整えるタイムに充てようと。

悠介:僕は「GREED」と「GUILLOTINE」なんですけど、単純に歌詞が好きというか。僕らの武器の一つである卑猥さだったり色気に加えて、言葉遊びも入ってるんですよね。「GREED」の“なんちゅうド卑猥な”とか、そういう口語的な言葉遣いも面白い。

葉月:「GREED」は新しい手法で作っていて、まず、インチキ英語でメロを歌ってから、音が似ている日本語を当てはめたんです。日本語が合いにくいメロなんで、困ったなぁとやってみたら意外とハマって。だから日本語なのに響きが英語みたいな感じになっている。

――そういえば今回は日本語詞の割合が、以前に比べて飛躍的に高まりましたよね。

葉月:その理由も最初の話と同じなんです。今、日本の激しいロックって英語が主流で、自分も海外のバンドの影響とか憧れもあったから、日本語で書くことに劣等感みたいなものがあったんですよ。サビで急に日本語詞の歌謡メロになる展開にも二番煎じ的なものを感じていたし。でも、他と比べてどうこうじゃなく、俺は日本語で書きたいから書くんだ!と、自分の意志で堂々とやってしまえば、逆に武器になる。そう思考を切り替えて臨んだんで、殺傷力が段違いなんです。今までは日本語っぽさを薄めるために、わざと抽象的に書いていたのが、全然包み隠さず書けるようになったし、だから普段喋っているのと変わらない言葉遣いも出てきたんですよ。

玲央:カッコつけなくなりましたね。今までは背伸び感というか、考えて言葉を選んでいるようなところがあったけれど、今回はホントに口語のようにスンナリ降りてきたかのような言葉遣いに変わっているなと思いました。

――おかげでメロディと歌詞が一緒になって耳に飛び込んでくるので、強烈なインパクトを残してくれますし、その芯に“GALLOWS=絞首台”のようなギリギリの崖っぷちに追い詰められた人の強さや、どんな状況でも前に進もうとする想いを痛烈に感じました。

葉月:まぁ……生きてるんで(笑)。前向きじゃなかったら死んじゃってると思うし、生きてる限りはこうです!みたいな。

――特に「PHOENIX」の“此処に生きて、此処に死ぬ”というワードにはグッと来ましたね。低音を利かせた艶やかなヴォーカルからも凛とした決意が感じられて、アルバムを締め括るに相応しい曲だなと。

葉月:そうなんですよ。これは歌を入れ終わって、評価が一番変わった曲ですね。歌の力が強くて個人的にも好きな曲だし、歌詞に出て来る“鴉”もジャケット写真に引っ張られたところはあるかな。

――「DEVIL」「MERCILESS」「TOMORROW」等の英詞部分にも、そういった背水の想いはストレートに表れていますが、そもそも『GALLOWS』などという不吉な単語をアルバムタイトルに付けたのは何故だったんでしょう?

葉月:もともと友達が“gallowsline”というブランドをやっていて、その言葉を見たときに“どういう意味なんだろう?”と思って調べたんです。それで“え、こんな意味なんだ”とインパクトを受けて。今回はどういうアルバムなのか?というところを考えたときに、代表作であり勝負作……いわば腹を括って作った、もう、背水の陣の1枚っていうところで、この単語がピッタリだなと。実は今回、僕が着ている衣装もgallowslineなんで、すごく運命を感じますね。


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