【インタビュー】吉澤嘉代子、メジャーデビュー。ラブリーポップ全開『変身少女』で放つ素晴らしき妄想世界

ポスト

5月14日にメジャー1st ミニアルバム『変身少女』をリリースした吉澤嘉代子。2013年6月、インディーズ 1st mini Album『魔女図鑑』を発売。その後、テレビ朝日系全国放送『music るTV』の「”もし売れ”コーナー」にてMCのヒャダイン、綾小路翔から「他に無い世界感」と大絶賛を受け、話題となっていた彼女がついにメジャーデビューを果たした。BARKSではそんな吉澤嘉代子にインタビューを敢行。歌い始めたきっかけから今作『変身少女』について、またキャラクターについても探ってみた。

◆曲を作ってそこに歌詞を乗せて完成させると、人と繋がれたなって
思えたというか。足りない自分を補える感覚になれた。それが楽しくて。


――初登場なので、嘉代子ちゃんが歌い始めたきっかけから聞いてもいいですか?

吉澤:はい。きっかけかは分からないのですが、物心着いたことから、井上陽水さんのファンだった父親の歌を聴いて育ったので、ずっと音楽というモノが身近にあったんです。父は、地元ののど自慢大会に出るとか、そんな感じの程度ではあったんですが、とにかく井上陽水さんが大好きで、自前のサングラスと鬘も持っていたほどでして。

――あ、そこまで(笑)!?

吉澤:はい、そこまで(笑)。なので、車の中では常に井上陽水さんのCDか、父の歌った井上陽水さんの歌が流れていました。それもあって、自分も歌いたいなって思うようになったのは、すごく自然なことでした。高校生になったら軽音楽部に入りたいと思うようになり、そしてその夢どおりに軽音楽部に入って、いろいろとカヴァーをしたりしたんですけど、自分の中で人の歌を歌うということにだんだん違和感を感じるようになったんです。それで、自分の曲を作るようになっていったんです。最初は何の知識もなかったので、自分で曲が作れるとは思っていなかったんですけど、作ってみたら作れたので、それでだんだん楽しくなっていったというか。曲を作るのは苦しい作業ではあるんですけど、普段、あまり上手く人と話せなかったりするので、曲を作ってそこに歌詞を乗せて完成させると、人と繋がれたなって思えたというか。足りない自分を補える感覚になれたんです。それが楽しくて。

――なるほどね。最初から1人で歌うように?

吉澤:いえ。高校の頃は、軽音楽部の女の子たちとずっとバンドをやっていました。大学に入った頃くらいまでやっていましたね。最初はコピーばっかりをやっていたんですけど。

――どのあたりをコピーしてたの?

吉澤:「タッチ」とか。

――「タッチ」!? 岩崎良美の!?

吉澤:はい! 大好きなんです! いまだにカラオケでは絶対歌う曲なんです! その他は、「ひょっこりひょうたん島」とか。

――へ!? 待って待って。

吉澤:あははは。いやいや、チャットモンチーさんとか、ミッシェルガンエレファントさんとか、いきものがかりさんとかのコピーもしてました。

――なるほど。今回の1sメジャーミニアルバム『変身少女』の曲たちは、80年代歌謡曲が流行っていたど真ん中を生きて来た私たちからすると、とても懐かしさがあったり、フィフティーズ、エイティーズの要素も感じたりもするんだけど、嘉代子ちゃんは、少し懐かしさを感じる曲に惹かれるってことなのかな?

吉澤:いや、自分自身が曲を作っているときは、そこまで懐かしさは感じていないんです。でも、そういうふうに言われることはたしかに多かったりするんです。なので、みんなに言われて後からそのあたりをじっくりと聴いてみるようになったというか。今回の『変身少女』も、私の作った原曲がそういう匂いがするからということで、アレンジャーさんがさらにそこをアレンジでより深く感じるようにしてくださっているんです。

◆昔の職業作家さんが作る曲が大好きなんです。松本隆さんとか大好きで。
そこへの憧れもあるから、聴いてくれる方が懐かしく思ってくれたりするのかな?


――音色もそうだけど、カスタネットとかグロッケンやタンバリンとか、音楽室にありそうな楽器が積極的に使われてたりするのも印象的だったから。

吉澤:そうですね。そこもアレンジャーさんが、私の作った原曲を膨らませてくれているところです。そういう音色も、懐かしさを際立たせているのかもしれないですね。すごく魅力的だし、曲がそこでまた一気に表情を持つというか。とても素敵だなって思います。

――音色って、すごく印象深い部分でもあると思うからね。

吉澤:そうですね。雰囲気もすごく変化するし。アレンジが加わってから、歌い方が変わる曲もあったりするんです。私自身、最初に曲を作っていたときは、懐かしさを感じなくても、アレンジが加わってから聴くと、そこに懐かしさを覚えることがあるんです。今回のアルバムの中で言うと、「涙のイヤリング」なんて、アレンジが加わってすごく印象が変化した曲でもあって、最初に作ったときとは、歌い方がすごく変化したんです。あと、もともと私は、言葉が短い曲とか、歌詞が少なめな曲とかに惹かれることが多いので、自分もそういう曲を作りたいなって思っているところはあります。それに、これは父の影響もあるのか、昔の職業作家さんが作る曲が大好きなんです。松本隆さんとか大好きで。そこへの憧れもあるから、聴いてくれる方が懐かしく思ってくれたりするのかな? とは思いますね。

――そうなのかもね。単なる焼き直しになっていないのは、嘉代子ちゃんの中から自然に生まれてくるモノだからこそなのかもね。リアルタイムにそれを聴いていた訳じゃないから、自分では懐かしさを感じないっていう。

吉澤:そうですね。大学に入学してから、今一緒にお仕事をさせて頂いているディレクターさんに会ったんですけど、最初に出逢って私の曲を聴いて下さったときに、“大瀧詠一みたいなメロディーだね”って言われて、そこで初めて大瀧さんを知ったんです。それで、遡って聴いたら、大瀧さんの作るメロディーに自分自身がすごくハマったというか。とても新鮮に感じたんです。そこから、いろんな曲を勧めてもらって聴くようになったんです。

――遡って知っていったんだね。今回の1stメジャーミニアルバム『変身少女』に収録される6曲は、いつくらいに作られたモノだったりするの?

吉澤:4年半前にヤマハ主催のコンテストに出て、グランプリとオーディエンス賞を頂いてから本大会に出て今に至るんですけど、だいたい4年半前くらいから作り溜めていた曲たちなんです。今回の6曲は作った時期はバラバラで、表題曲の「美少女」は2012年くらいに出来た曲で、「チョベリグ」は2013年の6月、「ラブラブ」も2013年の5月、「きらい」が1番古くて2011年くらいに作った曲で。「涙のイヤリング」は2012年だったかな? 「ひゅるリメンバー」も2011年の頃に出来た曲だったと思います。今回の楽曲的なテーマは“ラブリーポップス”なので、そこに似合う曲たちを選んでいきました。

◆上手く人と接することが出来ない自分には、すごく必要なこと。
“こんなことがあればいいなっ!”って妄想を膨らませていく。歌詞はそういうモノが多いんです


――まさに6曲の印象は“ラブリーポップス”だもんね。タイトルの『変身少女』にはどんな意味が?

吉澤:『変身少女』というタイトルは、2013年の6月にリリースしたインディーズのミニアルバム『魔女図鑑』とリンクさせてあったりもするんです。今回のリード曲の「美少女」は、姿形の美しさではなく、自分が理想とする自分、変身した自分という意味があったのと、実は私、子供の頃、魔女修行をしていたことがありまして、今の歌詞は、その頃自分の頭の中で妄想していた世界があってこそのモノだと思っているので、そんな自分とのリンクを考えて、アルバムタイトルを『変身少女』にしたんです。

――なるほど。嘉代子ちゃんの中では、『魔女図鑑』からも続いているというモノでもあるんだね。

吉澤:そうですね。そこは示したかったところではありましたね。

――しかし。すいません、魔女修行とは……? すっごく気になっちゃったんですけど。

吉澤:あははは。やっぱり気になりますよね(笑)。でも、本当にしていたんです、小学校の5年生頃まで(笑)。そんなにたいしたことではないんですけど……。私は出身が川口で、家が工場をやっていたんですが、その工場の屋上にほったて小屋がありまして、そこが使われていなかったので、そこを自分の部屋として使っていたんです。そこにお菓子を持ち込んで、飼っていた犬とウサギを連れ込んで、ずっと話しかけていたりとか、お年玉で買ったほうきにまたがって空を飛ぶ練習をしたりしていました。

――その妄想が今の吉澤嘉代子の歌詞を生んでるんだと思うと、すごく重要な時期であったってことだよね。

吉澤:そうなんです。私、子供の頃、ずっと夢と現実が混同してしまっていて。ある日、魔女のおばあさんに攫われる夢を見たんです。そのまま攫われていたら、私も特別な人間になっていたかもしれないと思ったところから、いろいろと妄想は広がっていって。当時は、妄想することによって、自分を保っていたというか。マジカル・ウィンディーちゃんっていう名前を自分に付けて、現実世界で生きる吉澤嘉代子と、魔女であるマジカル・ウィンディーちゃんの2人で私は出来ているんだ! って妄想しながら生きていたんです。その感覚って、今、こうして歌詞を書くときと同じなんです。上手く人と接することが出来ない自分には、すごく必要なことで。“こんなことがあればいいなっ!”って思ってだんだん妄想を膨らませていく。私の歌詞はそういうモノが多いんです。魔女修行していた頃に1番出来るようになりたかったのは、誰かに変身することだったんです。自分ではない人になってみたいという願望からだと思うんですが。今、曲を作っているときも、自分がこういうふうにしたいと言うより、自分とは別の人格や人生を曲に詰めて疑似体験をしているという感覚だったりするんです。

――実体験を描いているというのではなく、完全に妄想の世界の中に入っていく感覚なんだね。

吉澤:はい。恋愛の曲とかでも、自分が本当に好きな人に、“こんなふうにしたい!”っていう想いで書くのではなく、ほとんど妄想なんです。自分ではない主人公の人生を100%曲に詰め込んでいきたい! っていう感覚で作っているんです。そして、ライブでは、その人になりきって歌っていたりもするんです。曲によっては、本当にまったくの別人格になるんですよ。

――だから歌い方や声質が曲によって極端に違っていたりするんだね。今回の6曲の中では「ラブラブ」の歌い方や声質がとても特徴的だったから。

吉澤:そうですね。この「ラブラブ」は、もともとはすごく暗い曲だったんですけど、それを、もっと広くに伝わるように変えた1曲なんです。でも、1番目のサビの“わたしの心のくらい場所 魔法がかかるの”っていう部分だけは、どうしても元に戻したくて、最後の最後に元通りにしたんです。そういう意味では、1番自分の感情に近いのかなって思いますね。

◆インタビュー続きへ
この記事をポスト

この記事の関連情報