蘇生の日、到来か? MERRYの“ゾンビ”ツアー最終公演迫る

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「以前の自分には、報われないことを何かのせいにしてるところがあった。だけどこのツアーでは、すべてを背負おうと思ってます。ここで何か見つけられなきゃ本当に先がない。本気でそう思ってますから」

◆MERRY画像

これはMERRYのフロントマンであるガラの、去る2月末の発言である。その約1ヵ月半後に開幕を控えていた全国ツアー<THE ZOMBIE~地獄に堕ちた野郎ども~>に向けての決意を語るなかで出てきた言葉だった。事情を知らない読者には「なんか深刻そうだけど、いったい何があったんだ?」と思われるかもしれないが、このバンドは現在、ベーシストのテツを欠いた状態にある。2013年10月のツアー中に事故に見舞われ頚椎に損傷を負い、治療を経て回復に向かってはいるものの、依然としてリハビリ生活が続いているのだ。そして同事故後から年始にかけてのライブについては、複数のベーシストをゲスト・ミュージシャンとして招きながら行なわれてきたが、今回のツアー開催に際してバンドが下したのは“4人だけでの敢行”という決断だった。もちろんそれが、彼ら自身が悩みに悩み抜いた結果の選択だったことは言うまでもない。

そしてこの<THE ZOMBIE~地獄に堕ちた野郎ども~>というツアー・タイトル自体にも、バンドの覚悟が現れている。テツの事故以前にはガラのヘルニア療養のための活動休止期間も経てきたMERRY。そうした紆余曲折についてガラは「自分たちはまさに地獄を見てきたなと思う」と語り、そこに堕ちた以上はもう這い上がっていくしかないという想いを、“一度死んでいる以上、もはや生き返る以外に道のないゾンビ”になぞらえながら、このタイトルを考えついたことを認めている。

そして4月12日に幕を開けたこのツアーも、残すところ5月24日、Zepp Diver City Tokyoでのツアー・ファイナル公演のみとなった。実際のところ、サポート・ベーシスト不在でのツアー敢行には、“テツがツアー途中で復帰可能な状態になったら、いつでも迎え入れられるように”というメンバーたちの願いも込められていたわけだが、これまでのところそれは実現に至っていない。が、ツアー開始当初こそ、慣れない形態での演奏にまごつきもあったようだが、そのライブは回を重ねていくごとに精度を上げ、熱を高め、これまでのMERRYとはひと味違った凄味を伝えるようになってきた。筆者自身は去る5月3日、HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2での公演(今回掲載のライブ写真はすべてその際のもの)に足を伸ばしたのだが、そこで目撃できたのは、一言でいえばまさに鬼気迫るようなライブ・パフォーマンスだった。冒頭に引用したガラの発言から感じられた“覚悟”が、すべてのメンバーたちから伝わってきた。

今回のツアーで自らにゾンビ的なメイクを施すことにした理由について、ガラは、「自分自身のMERRYに対するオマージュ的なものでもあるし、“MERRYってそもそもこういうバンドだったよな?”、“こういうMERRYだったら俺自身も観てみたいな”という考えからでもある」と語っている。もちろんサウナのように蒸し暑いライブハウスで全身全霊のパフォーマンスを繰り広げる彼らだけに、ライブが終盤を迎える頃にはメイクもほぼ落ちてしまっていた。が、そうしてメイクが剥げ落ちたときの生気に満ちた表情に、筆者は“蘇生”を連想させられたのだった。

今回のツアー最終公演では、いわゆるゾンビ・メイクでの来場者には粗品が進呈されるという企画も用意されている。そうした発想もいかにもMERRYらしいが、もちろん肝心なのは、今回の過酷なツアーを経てきたうえで彼らがどんな景色を見せてくれるか、だ。そしてその場できっと、“これから”に向けての何かが見えてくるに違いない。とにかく、この場でしか目撃することのできないMERRYの“今”を、そして地獄を見てきた野郎どもの生きざまを、1人でも多くの人たちに体感してほしいものである。

文/写真:増田勇一

MERRY<THE ZOMBIE~地獄に堕ちた野郎ども~』ツアー最終公演>
-【D・D・D】-★ZOMBIE NIGHT
5月24日(土)Zepp Diver City Tokyo
開場17:30/開演18:30


◆MERRYオフィシャルサイト
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