【倉木麻衣×BARKS連載対談】第三回(2001年~2002年)「十代の頃の私はませた歌詞を書いていたなと思うんです。早く大人になりたいと」

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■日記を見られる恥ずかしさみたいなものはありますけど(笑)
■一回レコーディングで泣いちゃった時、ありましたよね

烏丸:大学生活もやっぱり、倉木麻衣がより素晴らしいアーティストになるために、すべての生活はそのために回っていたんですかね? そうでもないのかな。

倉木:歌手としてのボキャブラリーに活かせる大学生活というのは、必然的にあるんですけど、自分自身として、その時はひとりの学生としての思いというものもあると思うんですね。だから、“大学生活もアーティスト活動のためだけに”ということではなくて、ごく普通の学生として大学に行っていたので。そこまではあまり深く考えていなかったかもしれないです。

烏丸:庶民感覚が残ってるんですね。たとえば昔、有名なエピソードで、松任谷由実さんが詞を書く時に、喫茶店にひとりで行って人間観察をして、そこからヒントをもらったりするんですよっておっしゃってたんですけども。それはある種の職業病で、普通の生活とは違うわけですよ。人間観察も、僕らは普通にやっていることで、“私の人生を磨くために”とは思ってないですよね。でもアーティストの人は常にアンテナを張って、そういう目で見てそういう耳で聞いて、そうなっていく話もよく聞くわけです。でも倉木さんの学生時代は、そういうことではなかったわけですね。

▲4thアルバム『If I Believe』(2003.7.9発表)
▲『If I Believe』リリース当時のアーティスト写真
倉木:今のお話の“アンテナを張る”という部分では、それをそのまま歌詞にしたことがあります。4thアルバム『If I Believe』(2003.07.09発表)に入っている「Just A Little Bit」。そこに“何期待しているの? アンテナ伸びているの?”という言葉を書いていて。その時まさにそういうことを感じて、葛藤していたんですよね。歌手として、アンテナを張っていろんな情報を受けることによって、それが自分の表現に出てくるということを、そのまま歌詞にしちゃえ!と思って書いたんですけど。

烏丸:へえええ。面白い。

倉木:歌詞を書くという作業は、デビュー曲の「Love, Day After Tomorrow」が初めてだったので。もともと書いていたわけではなく、そこからのスタートだったので、どうやって書いていいのかもわからずに。「Love, Day After Tomorrow」の場合は、日記を書くように自分の気持ちを書いて、言葉をパズルのように音にはめて作ったもので、そこからスタートして、だんだんとやっていくうちに、言葉のボキャブラリーをたくさん情報として入れたいなと思うようにはなりましたね。映画を見て、主人公になりきって歌詞を書いてみたりとか。自分自身がこうなれたらいいなという夢を書いたりとか。それで十代の頃の私は、ませた歌詞を書いていたなと思うんですよ。

烏丸:今振り返ると?

倉木:はい。早く大人になりたいという気持ちがあったんですね。背伸びしたような歌詞が多かったのは、たぶん周りに大人の方たちがたくさんいて、自分も早くしっかりとした大人にならなきゃ、という思いもあって、そういう歌詞を書いていたのかな?と思うんですけど。

烏丸:歌詞を書くって、そんなに簡単なことではないですよね。

▲3rdアルバム『FAIRY TALE』(2002.10.23発表)
▲『FAIRY TALE』リリース当時のアーティスト写真
倉木:今でも難しいです。同じ人間が書いているので、どうしても同じ目線や同じ言葉が出てきてしまって、それで煮詰まったりもするので。私の詞の書き方は“曲先(きょくせん)”で、デモテープを聴いてから書くようにしているので、メロディが言葉を連れてきたりすることがあるんですよ。それによって膨らんでくるものがあったり、自分にないものを引き出してくれたりするので、そのやり方が合ってると思うんですね。でも“詞先(しせん)”をやってみたいと思うことがあって、一度やったことがあるんですね。そしたら思いのほか、すごく面白い楽曲が仕上がったんです。「不思議の国」(3rdアルバム『FAIRY TALE』収録曲/2002.10.23発表)という曲があるんですけど。

西室:「fantasy」(3rdアルバム『FAIRY TALE』収録曲/2002.10.23発表)もそう。

倉木:あ、そうですね。詞先だと、また違った面白いものができるので、またやりたいと思ってます。

烏丸:たぶん詞先とか曲先って、テクニカルな問題でもあると思うんですけど、その前の段階で、「言えることを言う」から「言いたいことを言う」というふうに変わってくると思うんですよ。あるいは、「言わなくちゃいけないことを言う」とか。そうなってくると、非常に苦しんだり、自分を切り刻んだりとか、よく言われることですけど、そういう痛みや苦しみを感じることはありますか。詞を書く時に。

倉木:うーん……。

烏丸:出し尽くしてスカスカになるとか。すごくつらいこともあると聞きますけど。

倉木:それは曲によりますね。自分が経験したことを書く時は、やっぱり辛いという思いはあります。ライブで披露する時にも、泣いちゃったりとか、そういうこともあります。でも、自分の理想とか夢を書く時には、楽しみながらすんなり書けたりもするので。自分の経験を通して書く時は、感情が言葉の中に入るので、すごく大変な作業だとは思いますね。でもそれをライブで受け入れてもらったり、みんなが自分とリンクして聴いてもらえたり、共感してもらえてることが実感できた時は、またこういうふうに自分の経験を包み隠さず言葉にして、一緒に思いを共有したいなという気持ちになるので。

烏丸:それはアーティストの醍醐味だよね。

▲2nd アルバム『Perfect Crime』( 2001.7.4発表)
▲『Perfect Crime』リリース当時のアーティスト写真
倉木:そうですね。日記を見られる恥ずかしさみたいなものはありますけど(笑)。一回泣いちゃった時、ありましたよね。「The ROSE~melody in the sky~」(2ndアルバム『Perfect Crime』収録曲/2001.07.04発表)だったかな。

西室:あと「happy days」(1stアルバム『delicious way』収録曲/2000.06.28発表)の時も、泣く寸前だった。レコーディングで。

倉木:「happy days」は親友に向けた曲で、ちょうど高校時代に学校が変わる時のことを書いた歌詞なので。

西室:レコーディングは早々に切り上げましたね。2回ぐらいしか歌ってない。

烏丸:それが音源になっている?

西室:はい。もう、これ以上歌うとヤバイと。

倉木:それに限らず、バラードは、いつも最初のテイクが良かったりするんですよね。

烏丸:それは今でも変わらない?

倉木:変わらないですね。何なんでしょう? あんまり思い入れが深くならずに、考えて歌わないほうがいいのかもしれないですね。思い入れが深すぎると、逆に良くないみたいです。歌というのは、いろんな部分でリンクするというか、人の性格みたいなものというか。人格みたいなところがありますよね。

烏丸:それを作っていく作業ですよね。

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