デビュー10周年を迎えた滴草由実が6月11日、初のベストアルバム『#10 story ~Best of Yumi Shizukusa~』を発表する。2枚組全25曲という大ボリュームでリリースされる今作は、3曲の新曲をはじめ、デビューシングル「Don’t you wanna see me<oh>tonight?」と2ndシングル「TAKE ME TAKE ME」のリアレンジバージョンやライブ音源を収録するなど、単にキャリアを総括するために過去の曲を集めたベスト盤ではない。現在の彼女が、音楽を作る喜びに溢れていることがひしひしと伝わる仕上がりをみせた。2013年12月、5年のブランクを経て発表された前オリジナルアルバム『A woman's heart』をステップに、新たなスタートを切った滴草由実がベストアルバムへの想いを語るロングインタビューをお届けしたい。

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■DISC1とDISC 2の曲順を同じ並びにしているのは
■10年前の私と成長した今の私の歌声を聴き比べてもらえるように

──まず、2013年12月にリリースした前アルバム『A woman's heart』の反響はご自身にどのように届いてましたか?

滴草:『A woman's heart』は、以前とは音の面でイメージを変化させて作ったアルバムだったので、その変化を良く感じられたという意見があってうれしかったですね。あとはライヴを観たいという声も多くて。

──2014年3月28日には久しぶりのワンマンライブ<“A woman's heart”Live>もありましたよね。これは“音と食の響宴”をコンセプトにしたものでした。

滴草:『A woman's heart』の世界観をどう表現するかということで、音だけではなく、目黒Blues Alley Japanという会場全体のイメージもアルバムに近づけたかったんです。それで、「Rainy」(『#10 story ~Best of Yumi Shizukusa~』収録曲)のミュージックビデオを作ってくださったSTOIQUEさんに会場レイアウトのプロデュースをしてもらって。たとえば、『A woman's heart』アートワークのテーマでもある“モノトーン”に合わせて、グラスに黒い薔薇を飾ったりとか、私が曲をイメージしながら描いた絵を展示させてもらったり。それに、食事も曲タイトルに合わせたメニューを用意していただいたりしたんですよ。

──ライブは二部制で行われましたね。

滴草:そうです。一部と二部の間にはインタビュー映像を流したりして、曲だけではなく、自分自身の言葉でそれまでの想いを伝えさせてもらったりしました。ブランクがあった分、ファンの人たちをもうずっとお待たせしていたし、私自身も伝えたかったから。結果、アットホームで、温かいライブになったなと思います。

──初のベストアルバム『#10 story ~Best of Yumi Shizukusa~』は、そのライブの後にリリースの準備を始めたものですか?

滴草:リリースが決定したのはちょうどそのワンマンライブの前あたりで。10周年を迎えたので、その間にベストアルバムを出そうということになったんです。

──10年のキャリアを総括した選曲であり、収録全25曲とボリュームも満点ですが、コンセプトは?

滴草:最初は1枚のベストアルバムという形で考えていたんです。流れ的には、最初に今の滴草由実のサウンドや歌声を聴いてもらって、そこから過去の曲たちに触れていってもらうというような。でもCD1枚だとシングル曲に加えて、ちょっとだけアルバム曲を入れる感じで、全然曲が収まりきらなくて(笑)。ベストアルバムリリースの発表後、今まで支えてくれていたファンの方から、“この曲を入れてください”とか“この曲が大好きなんです”とか、“この曲にすごく助けられた”というありがたい声をたくさんいただいたんです。

──ファンの方々の声も大切にされたんですね。

滴草:はい。シングル曲以外のアルバム収録曲に、意外と人気のあるものが多くて。やっぱりシングル曲だけではこの10年間は収まりきらないと思って、「2枚組にしませんか?」という提案をしたんですね。もうスケジュール的にギリギリだったんですけど(笑)。そこからイメージしていた流れを崩さず、収録曲を増やすことで内容の濃い作品にしようということになりました。

──DISC1、DISC2はそれぞれ新曲からスタートしますよね。加えて、DISC1の2曲目はリアレンジバージョンを収録しているのに対して、DISC2の2曲目にはその原曲が入っている。3曲目も同様にDISC1がリアレンジバージョンで、DISC2にその原曲といった流れで、ある種、この2枚が対になっているんですよね。

滴草:まず、DISC1前半の1~3曲目には新曲とリアレンジ曲を絶対入れようと思っていたんです。この作品をきっかけに初めて滴草由実を知る方たちもいると思ったので、DISC2であっても現在の私を物語るように新曲からスタートしたいなという気持がありました。それに、曲順を同じ並びにしているのは、10年前の私と成長した私の今の歌声を聴き比べてもらえるように、あえてそうしています。

──なるほど。3曲の新曲が収録されていますけど、この短い期間での制作は大変だったんじゃないですか?

滴草:先ほどお話したライブ直後に、新曲とかリアレンジバージョンを作ってましたから、本当に怒涛の1ヶ月でしたね(笑)。でも、過去の曲だけではなくて、今の自分もみなさんに聴いてもらえるものにしたかったし、絶対妥協はしたくなかったです。

──では、その新曲についてうかがいます。DISC1冒頭の「Rainy」は梅雨の季節を意識したものですか?

滴草:していましたね。作ったのは2月とか3月だったんですけど、たとえこのアルバムに収録できなくても、配信とかで梅雨の時期に発表できたらなと思っていました。

──10周年記念となるベストアルバムのオープニングナンバーでありながら、切ない楽曲に仕上がっています。

滴草:自然にそういう風になりましたね。別れた後の女性の切ない心情と、降り続いて止まない雨の風景をリンクさせて書いたんです。大人になると言いたいことも押し殺してしまうこともあって。でも、何かに身を任せて気持ちを吐き出すことも必要なんじゃないかなという思いがあったんです。この歌の場合は、雨に身を任せて気持ちを洗い流すイメージというか。だから、サビに出てくる“Rainy”という言葉は“雨降り”という意味だけではなく、女性が思い続けている相手の名前を“Rainy”に重ねて吐き出している感じです。雨に打たれてワ~ってなっているイメージで歌ったので、レコーディングの時はすごく感情が溢れました。女の人は、涙を流すことでスッキリすることも多いと思うんですね。この曲は気持がしっとりとしているときとか、なにかが溜まっているときに聴いてもらってもいいと思います。

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