【インタビュー】サイキックラバー、王道の中にも新機軸『RAISE YOUR HANDS!!』

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オリジナル・アルバムとしては3年ぶりとなるサイキックラバーのアルバム『RAISE YOUR HANDS!!』が完成、6月18日(水)に発売になる。中には、「カードファイト!! ヴァンガード リンクジョーカー編」の主題歌「Vanguard Fight」と「Break your spell」。『フューチャーカード バディファイト』のOPテーマ「Card of the Future」。『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ』のOP曲「ギガントシューターだっちゅーの!」と、アニメテーマも4曲も収録。サイキックラバーらしい熱い魂を濃縮させたアルバムの魅力を、ここにお届けしよう。

◆サイキックラバー画像

――最新アルバム『RAISE YOUR HANDS!!』を6月18日に発売、アメリカン(西海岸系)ハードロックにも繋がる激しくも開放的な表情の数々は、サイキックラバーの得意な曲調でもありませんか?

YOFFY:サイキックラバーにはいろんな表情があるけど、「Vanguard Fight」や「Break your spell」など『カードファイト!! ヴァンガード』系の楽曲や、今回のアルバムに収録した曲たちに関しては、"サイキックラバーの王道スタイルに改めて取り組んだ"という確かな手応えがあります。

――アルバム『RAISE YOUR HANDS!!』には、突き抜けた開放さを持った曲たちを数多く収録、それもサイキックラバーが手がけた『カードファイト!! ヴァンガード』ナンバーたちとの出会いが呼び水になったからなのでしょうか。

YOFFY:そうですね。『カードファイト!! ヴァンガード リンクジョーカー編』も『フューチャーカード バディファイト』や『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ』も、タイアップ曲とはいえ、楽曲制作に対する自由度が高くて、制約がほとんどなかったんです。ストレスフリーな感覚で作れたからこそ『RAISE YOUR HANDS!!』のバラエティに富んだ作風に繋がったのかもしれないですね。ただ、『フューチャーカード バディファイト』の主題歌として制作した「Card of the Future」とシングルのC/Wに収録した「Now and Forever」は、サイキックラバー×Suara名義で、シンガーのSuaraさんとのコラボ作として制作したもの。かなり通常のサイキックラバーとは違うテイストを意識したんですが、それを今回のアルバム用に新たにボーカルをリレコーディングして、セルフカバーバージョンとして収録する事になったのは、思いがけない展開でした。

IMAJO:リズム・アプローチ面では、サイキックラバーにはない斬新さを出していたからね。

YOFFY:そう。「Card of the Future」も「Now and Forever」も、サイキックラバーらしいハードロックなテイストも匂わせてるんですけど、それ以上に、今までにはないアプローチとしてワブルベースを用いたダブステップ+ハードロックナンバーへと仕上げていったんです。IMAJOのギタープレイ以外は、2曲ともこれまでのサイキックラバーが作ったのとは違うサウンドなんですよね。

IMAJO:制作面での面白さと言えば「Save My Soul」。僕が持ってきた「Save My Soul」の原曲は、メジャー・コード展開の楽曲でした。それを、あえてマイナー・コードの楽曲に変えたんですよ。

YOFFY:「Break your spell」は例外的にマイナー調なんですが、アニメタイアップ曲に関しては、作品のイメージもあって、明るいメジャー感を持った楽曲が多くなりましたね。だからこそ、どう全体のバランスを調整していくか。そこが、アルバムの方向性を絞り込んでいく上での勝負みたいなところがあったからこそ、あえて「Save My Soul」はマイナー・コード進行に変えてみたんですよ。

――本編最後に収録した英詞ナンバーの「Welcome to the Real World」、このスケールあふれた楽曲は、まるでスペクタクル映画のエンディングで流れるに相応しい雄大さと感動を持った楽曲。この手の表情も、とても印象深く耳に入ってきました。

YOFFY:あの曲、元々はある演劇用に頼まれて制作した楽曲が元になっているんだけど、そのストーリーが、簡単に言うと映画「アルマゲドン」の学園版みたいな物語で。その舞台楽曲を手がけるうえで依頼されたテーマが、「明日世界が終わるとして、どんな曲を作る?」でした。その題材をもとにメッセージ性を持った歌詞を日本語で書いたんだけど、ちょっと重すぎるように思えて、あえて今回は英語詞に挑戦しました。ちょうどシンガポールなどの東南アジアで『カードファイト!!ヴァンガード』や『フューチャーカード バディファイト』のアニメ放送が始まって、テーマ曲の英語バージョンも制作したんです。その経験を「Welcome to the Real World」に活かすことが出来ましたね。

――アルバム『RAISE YOUR HANDS!!』には全部で13曲収録。冒頭を飾ったのが、スケールあふれた始まりを告げるインスト・ナンバーの「Overture」です。

YOFFY:「Overture」、続く「RAISE YOUR HANDS!!~Reach for the sky~」を楽曲としては区切っているけど、自分らの中では、この2曲をセットにして一つの作品という感覚です。夏前のリリースに合わせ、同時に、夏のツアーのブッキングも始めていたんですね。そこから「夏が似合う楽曲が欲しいね!」ということで作ったのが、1990年代のサマーソングなイメージを持った「RAISE YOUR HANDS!!~Reach for the sky~」でした。アルバムの一曲目を飾るリードトラックとして、キャッチーで強力な楽曲になったと思うんですが、「アルバムのイントロダクションとして、+αの何かが欲しい」という想いから、アルバムの編曲を手がけてくれた三人目のサイキックラバー大石憲一郎くんにお願いし、ちょっと長めのイントロとなる「Overture」を作ってもらって、冒頭に持ってきたわけなんです。

――「RAISE YOUR HANDS!!~Reach for the sky~」の持つ1990年代サマーソングなテイストには、思いきりハマりました。

IMAJO:四つ打ちのダンサブルなビートの上で演奏していくのが、この「RAISE YOUR HANDS!!~Reach for the sky~」。何処か、懐かしい感じがするのもいいよね。

YOFFY:これまでサイキックラバーがシングルとしてリリースしていなかった、テンポ130(bpm)くらいのディスコビート・ナンバー。歌い方やエフェクトの処理面でも、あえて1990年代J-ROCKな感覚を狙って作りました。

――歌詞に<RAISE YOUR HANDS!!>という言葉も出てくるように、アルバムのタイトルも、この楽曲から引っ張ってきた形でした?

YOFFY:リードトラックをアルバムタイトルにしようと決めてました。最初は「RAISE YOUR HANDS UP!!」ってタイトルを考えてたんですけど、それだとHIP HOP的な英語の表現になっちゃうよ!って、「Vanguard Fight」を英語に翻訳してくれたオーストラリア人のスチュアート氏にアドバイスされたんです。「ROCKならこれしかないよ!」って事で「RAISE YOUR HANDS!!」に落ち着きました。

――続いて流れるのが、『カードファイト!! ヴァンガード リンクジョーカー編』の主題歌として起用していた「Vanguard Fight」です。

YOFFY:この楽曲が、今回のアルバム制作に於ける始まりの歌になりました。それまでの『カードファイト!!ヴァンガード』のテーマ曲というと、JAM Projectさんが手がけた荘厳なマイナー調の世界観がとても強かったので、サイキックラバー流のアプローチで、新しい風を『カードファイト!!ヴァンガード』へぶつけようと思いました。ありったけの爽やかさを持って制作したのが、この「Vanguard Fight」です。歌詞の中に<太陽のビーム 体中に浴びて>と出てくるんですけど、結果的に夏っぽさも出た楽曲になりましたね。

IMAJO:「Vanguard Fight」をライブで演ると、お客さんたちのコール&レスポンスがすごいんですよ。なので、音源とは違う感動や興奮をライブでは感じれると思うので、ぜひ、生でも「Vanguard Fight」に触れてもらいたいですね。

――ここまで開放的で爽やかな楽曲が中心でしたが。続いて流れ出したのが、マイナー調の「Save My Soul」です。

IMAJO:1曲作るのに毎回数十トラックを使っているように、サイキックラバーの楽曲って音数が多いんですよ。なるべくそれを減らし、無骨なサウンドにしたいなと思って作ったのが「Save My Soul」でした。結果、芯となるバンド・サウンドで勝負してゆく楽曲になったみたいな。

YOFFY:ここまで音数が少ないのは珍しいくらい、余計な音を削ぎ落とした楽曲になりましたね。ボーカル・トラックは、相変わらず多いけど(笑)。

――「Break your spell」も、『カードファイト!! ヴァンガード リンクジョーカー編』の主題歌として流れていました。

YOFFY:サイキックラバーが手がけた「カードファイト!!ヴァンガード リンクジョーカー編」の1st OP「Vanguard Fight」のあとを受けたのが、DAIGOさんの唄う2nd OP「無限∞REBIRTH」だったわけですが、次に続く3rd OPを「ふたたびサイキックラバーにお願いしたい」というお話をいただきまして。しかも「次は、思いきりマイナー調で攻めて欲しい」ということで、ちょうど物語の展開的にもあまり明るい方向性ではなかったことや、「リンクジョーカー編」としての闇に向かう最後を締めくくる楽曲だったこともあって、何処か救いのない面も見えながら、それでも前を向いてゆく歌詞の内容を持った王道ハードロック・ナンバーに仕上げました。

IMAJO:まさに、サイキックラバーの得意としている楽曲ですね。アップテンポそうで、そんなに速くはないんだけど。楽曲の中へ16ビートのテイストを入れることで、疾走感を描き出してみたり。そういう細かいニュアンスで疾走さを出していけたのも、この曲の面白さです。

――一転、何処か哀切な表情を持ったミッドバラードの「Now and Forever [Psychic style]」が流れ出します。

YOFFY:もともと、サイキックラバー×Suara用に制作した楽曲で、このユニットのためだけに作ったデュエット曲だったんですけど。最初に作ったデモは自分一人で歌っていたので、そのバージョンに戻したのが、この「Now and Forever [Psychic style]」です。アレンジはそのままに、リードボーカルを新たに録り直して、コーラスハーモニーを更に重ねたり、よりサイキックラバーテイストが出るようにアレンジしました。歌メロは何処か懐かしい1980'sハードロックらしさも出ています。

IMAJO:往年のハードロック・バンドが演るロック・バラードみたいな感じがしてて、そこがいいよね。

――「ギガントシューターだっちゅーの! [Retro-future style]」は、『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ』の主題歌として放送中。

YOFFY:シングル・バージョンではドラムが打ち込みになっているところを、アルバム用に生ドラムで録り直しています。ミックスのタイトルへ"Retro-future"と入れてるように、シングルの持っていたエッジ感を多少抑えたスタイルにもなっています。

IMAJO:しょこたん(中川翔子)のバンド・メンバーとして一緒に活動してきたまっしょい君にドラムを頼んだんですけど、彼もスネアの音を割とレトロな音に変えて叩いてくれました。

YOFFY:『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ』の制作チ ームの方々が「Vanguard Fight」のことを気に入ってくれたことから、「「Vanguard Fight」のような爽やかな楽曲を作って欲しい」というリクエストをいただき、この曲を作りました。アニメサイドからのオーダーが「王道のアニソンにして欲しい」というのと、「ギガントシューターのところを“ギガロシューラァー!”と歌って欲しい」という二点。それ以外は自由にやらせていただきました。

――「Mercilless,Heartless」も疾走感ありながら、どこかゴージャスさも抱かせます。

IMAJO:速いビートで演りたいなと思って作った曲でした。アレンジを平松健治さんに依頼。平松さんのストリングス・アレンジがホント素晴らしくて。今回も、とてもスケールの大きなアレンジになりましたね。この曲も、ドラムを山内“まっしょい”優君が担当。2バスのドラムを、テンポ180くらいのもの凄いスピードでドコドコ叩いてるんですよ。あの凄まじさとストリングスのゴージャスさが重なってさえも洗練されたアレンジになっているところは「さすが平松さんだな」と思いましたね。

YOFFY:音数も、コーラスもすごく多いのにね。歌詞には古語を使いたくて、あえて古い言葉のニュアンスも中に活かしたんだけど。同時に沢山の英詞のコーラスも盛り込んでしまって、和洋折衷した、とてもカオスな歌詞にもなりました。

――「Card of the Future [Psychic style]」は、サイキックラバ×Suaraとして制作した『フューチャーカード バディファイト』の主題歌でした。

YOFFY:「Card of the Future [Psychic style]」も、セルフカバー作。こちらも、自分がデモ・トラックを一人で作ったときの状態に戻し、さらにコーラスもパワーアップさせてと、デュエット曲を一人で唄う形にしていきました。もともと、ダブステップとハードロックを合体させるという、すごく斬新なことをやっている楽曲なんですよね。そこら辺はアレンジャー大石くんの手腕によるところが大きいんですけど。「Card of the Future [Psychic style]」バージョンでは、新たなフェイクやシャウトに挑戦したり、ハーモニーの重ね方を変えているように,ぜひ、原曲と聴き比べ、その違いを感じてもらいたいです。

IMAJO:デュエット曲として作ったのに、最初からソロで歌ってると思えるくらい。こちらもまた、メジャー感が出てる楽曲になりました。

――「BIG BANG」は、『カードファイト!! ヴァンガード リンクジョーカー編』との関連性を感じさせる楽曲です。

YOFFY:これは、「Break your spell」のC/Wとして制作されたんですけど。「Break your spell」がマイナー調だったんで、ちょっと対比させたいなと思ってこの曲を持ってきました。実はこれ、全然違う歌詞でアマチュア時代から演奏してきた楽曲なんです。それこそ1990年代Being系のサウンド感というか、ニュージャックスウィング風なリズムとハードロックを合体させたようなビートを持った楽曲を、今のテイストにアレンジ。歌詞も、『カードファイト!!ヴァンガード』の世界における友情をテーマに書きました。

――力強くパワフルな「Eternal Flame~永遠の炎」が、アルバムの終盤に流れ出します。

YOFFY:「Eternal Flame~永遠の炎」は「Vanguard Fight」のC/Wに収録していた曲だったんですよね。アルバム収録用に曲順を考えつつ並べて聴いてて、この位置にしたときにしっくりとハマったんです、「すげぇイイ曲だなぁ」とその時改めて思って。この楽曲、ズーッとベースがスラップ演奏してるんですけど。あの速いテンポでスラップし続けているのは驚異的じゃないかな。

IMAJO:ベースを弾いてる田中っちの親指がどっかへ飛んでっちゃうんじゃないかってくらいのね。あれをライブで演奏しているときの田中っちのプレイは見どころだと思います。

――アルバム本編の最後を締めくくるのが、スケールあふれたロックナンバーの「Welcome to the Real World」になります。

YOFFY:サイキックラバーの楽曲の中では珍しい5分超えのナンバー。でも、メジャー・コードを3つしか使ってないという。この曲は、Led Zeppelinの「Kashmir」のようなリズムをモチーフにしたビートが印象深い楽曲。サビでも、かなり叫び上げています。

IMAJO:ギターも、8分の音を和音でどんどん重ね、それをエフェクト処理していく形で構築しているのも、この曲の面白さだね。ギター・ソロでは、久しぶりにワウギターを使ってますし。

――歌詞が英詞なのも、この楽曲をスケールアップさせているポイントかなとも感じました。

YOFFY:いつもコーラスで参加してくれているシンガーの柴田浩之さんが帰国子女ということで、一緒に言葉や文章を選んでもらいつつ、レコーディングでも発音のディレクションをしてもらいながら作りあげました。この歌詞へ詰め込んだ意味深な想いがどう届くのか楽しみです。

――最後は、Bonus trackという形で「Vanguard Fight [English style]」を収録しました。

YOFFY:こちらは、「Vanguard Fight」の英詞バージョン。同じメロディーラインでも、英詞にすると不思議と音圧が違うんですよね。それを発見出来たのも面白かったです。

IMAJO:一度ぜひ、英詞バージョンをライブで聞いてみたいよね。

――完成したアルバム『RAISE YOUR HANDS!!』に対して、今、どんな手応えを覚えています?

YOFFY:まさに「サイキックラバーの今」を詰め込んだ1枚。この世界観を、今度はライブを通してキチッと表現したいですね。

IMAJO:全曲に目を光らせることが出来る作品であり。あと、ジャケットのデザインが格好いいですよ。

YOFFY:このデザイン、1990年代のスカアコ・ムーブメントの頃を意識した感じになっているんだけど。アルバム全体が西海岸(ハードロック)的なカラッとした感じだから、むしろ似合うジャケットじゃないかな。あと、今回は96KHz24Bitのハイレゾ音源でも制作しましたよ、ここもぜひ注目して欲しいところ。

IMAJO:だからこそ、細かいところまでしっかり聞いて欲しいなと思える作品になっているので。

――あとは、7月から始まるライブ・ツアーで、どれだけ臨場感たっぷりに伝えていけるかですね。

IMAJO:バンドでがっつり生演奏した臨場感って、CDで聞いたのとはぜんぜん迫力が違いますからね。その「肌で体感する感動」を与えていけるよう頑張ります。

TEXT:長澤智典



サイキックラバー『RAISE YOUR HANDS!!』
HKMM-0011 ¥3,000(本体)+税
1.Overture
2.RAISE YOUR HANDS!! ~Reach for the sky~
3.Vanguard Fight
4.Save My Soul
5.Break your spell
6.Now and Forever [Psychic style]
7.ギガントシューターだっちゅーの! [Retro-future style]
8.Merciless, Heartless
9.Card of the Future [Psychic style]
10.BIG BANG
11.Eternal Flame ~永遠の炎
12.Welcome to the Real World
13.Vanguard Fight [English style] ※bonus track
特典:アルバム発売記念ツアー(※)会場での特典ポスター引換券
※サイキックラバー アルバム発売記念ツアー “RAISE YOUR HANDS!!”

<サイキックラバー アルバム発売記念ツアー“RAISE YOUR HANDS!!”>
7/5(土)大阪 「ASH大阪」
7/6(日)名古屋 「HOLIDAY NEXT NAGOYA」
7/12(土)札幌 「Duce Sapporo」
7/19(土)東京 「初台 LIVE-BAR-The DOORS」        

<サイキックラバー vs 流田Project「アニソン&特ソン カヴァーライブ」>
7/20(日)東京 「初台 LIVE-BAR-The DOORS」

◆サイキックラバー・オフィシャルサイト
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