【インタビュー】ふくろうず、『マジックモーメント』完成「結果的にほんとに3人で作ったアルバム」

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ふくろうずが6月18日、フルアルバム『マジックモーメント』をリリースする。『砂漠の流刑地』以来約3年ぶりのオリジナルアルバムにして、前ミニアルバム『テレフォンNo.1』より約11ヵ月ぶりとなる同アルバムのイロドリは素晴らしく、メンバー3人が、3人だからこそ成し得るサウンドに挑戦したもの。結果、12曲の最新楽曲に加え、the pillowsのカバー曲「ハイブリッド レインボウ」を収録した全13曲が、ふくろうずというバンドのポップで自由な側面を見事なまでに浮き彫りにしている。

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言葉は鋭く、絵画的だ。時にカラフルに、時に情景を描くように、心模様を綴る言葉の数々が胸に突き刺さり、日常の言葉選びが楽曲の持つ世界をよりリアルに響かせる。このアルバムにつけられたタイトルは『マジックモーメント』。魔法のような瞬間の奇跡を封じ込めた作品は、ある意味では現在のふくろうずの輝きをとらえたものだ。ドラムレスバンドの新境地あり、変わらぬ本質あり。それぞれがプレイヤーとして大きく躍進したアルバムについて、メンバー3人がじっくりと語ってくれたロングインタビューをお届けしたい。

■「GINGA GO」は突然こういうギターが入ってびっくりしたんです
■でも手応えを感じて、メンバーのなかで大事な曲になっています

▲内田万里(Vo.Key.)
──『マジックモーメント』はとてもキャッチーで、でも、フックとしての引っかかりが強い部分や独特のポップ色が濃厚なアルバムになりましたね。制作はいつごろスタートしたんですか。

石井:2013年の10月くらいですね。ミニアルバム『テレフォンNo.1』リリース後にツアーをして、すぐでした。

──そのときに、次はこういう感じと思い描いていたものは?

内田:アルバム1曲目の「GINGA GO」は先に作ってあって。なんとなくこれをきっかけにアルバムを作っていこうっていう話にはなっていましたね。

──「GINGA GO」はどのようにして作っていった曲ですか。

内田:私がすごく大きな形で持っていって、細かいところはみんなでアイデアを出しながら。

──ギターが目立つ曲になりましたね、とてもノイジーなギターで。

内田:最初はすごくシンプルだったんですけど、突然こういうギターが入っているデモが送られてきて、すごいびっくりしたんです。けど、手応えも感じたので。メンバーのなかで大事な曲になっていると思います。

──このギターは銀河をイメージしたような?

石井:そういうわけでもないんですけどね(笑)。コードも少ないし、メロディも少ないので、これは好きにやっていい曲かなっていうところはありましたけど。

──「GINGA GO」ができたことで、アルバムのトーンをまとめていく上での、バンドとしてのサウンド的テーマもより明確に?

内田:ドラムがいないので、ドラムレスという今の状況のバンドを、どういうふうに見せられるかというのは工夫をして作ったと思います。

安西:ドラマーがいないからこそ、堂々とできるアレンジというのもやれたかなと。

──それは前ミニアルバム『テレフォン No.1』という作品を経て、そこでいろいろな遊びができたことも大きいですか。

内田:そうですね。ある程度そこで確立した作り方を、もっと自由な形でやれたと思います。

▲石井竜太(Gt.)
──なるほど。ドラムの話はまた後で詳しくお訊きするとして、たとえば、中盤の「ユアソング」「ドキドキ」「マーベラス!」。このあたりの流れはすごくフックが強いアレンジというか、言うなればふくろうず独特のヘンテコな匂いもあって。一方でメロディがとてもキャッチーでツルリと聴いてしまうような。でも、サウンドには毒が入っていたり、変調な部分もあってそれがより濃く出ているように思いました。アレンジ面にも、よりこだわりを感じます。

内田:「ドキドキ」は意図的に、今までにないアレンジでやろうかなっていう気持ちがありましたね。

──内田さんによる「ドキドキ」のセルフライナーノーツでは、“いつも失恋の曲ばかりだから、ラブラブの曲を敢えて書いた”という記述もあるんですが、それでいてフックが強いアレンジも入った曲になって。

内田:どうなんでしょうね。この曲は、原曲を書いて持っていった時点から、(安西)卓丸が中心になってアレンジを加えていったんですね。なので、結果的にそれでよかったんですけど、もともと持っていた自分のイメージとはすごく違うものになったんです。「ドキドキ」はわりと、シンセとかいろいろ入ってるんですけど、最初は、極端に言ったらリズムとベースとキーボードと歌で成り立ってる状態でしたから。

安西:うん。原曲は今とはだいぶ違いますね。

石井:ちょっと暗い感じだったかな。

安西:無機質な感じがどこかあったかなと思う。

内田:ああ、そう感じたんだ。かえって、打ち込みとかが入って無機質っぽくなったなあという感じはしてたんだけど。

──原曲を作ったときのイメージは無機質な感じでは?

内田:全然なかったですね。

──アレンジの前段階では、内田さんと安西さんとでは異なるイメージを持っていたわけですね。安西さんがアレンジしていく上で、曲のどういう面を出していこうと?

安西:実は、今までにない感じっていうのも意識してなかったんです。けど、自分的にドキドキしているムードっていうのを出せたらなと(笑)。自分主導で全体的にやった曲は、これまでそんなになかったので、これは好きにやってみようという。

安西卓丸(Ba.Vo)
──では逆に、内田さんのなかでイメージが出来上がっていた曲というと。

内田:もちろん演奏するのはメンバーなので、どんな曲でもイメージ通りそのままっていうことはないんです。でも、「37.3」とかは比較的人の手に委ねないでわりと自分主導でアレンジはしていったかなという感じですね。

──頭のなかに、音の感じや質感っていうものもあるんですか。

内田:質感っていうのはよくわからないんですけど、具体的にドラムのフレーズ、ベースのフレーズ、ギターのフレーズを大きくするのが私の曲の作り方なので。どんな曲でもまず一回それをやってもらうことが多いですね。

──作り方としては感覚的にというより、ロジカルに積み上げていくという感じなんですかね。

内田:全然ロジカルではないですね。

──音の合わせ方とかは、不協和音じゃないけれど、スケールアウトした音をすっと差しこんでみたり。そういう狙いがいろいろあるのかなと思ったんです。音の組合せの妙みたいな。

内田:それについては論理的になにか勉強してとかはないですね。論理的ではないですけど、自分たちなりに工夫してっていうのはあると思います。

──例えば「春の嵐」ではシンセの音が入っていますよね。この音色が耳に残るし、フレーズもシーケンス的だけどそうではない。曲だけメロディだけ聴くととても美しいけれども、どこか違う色味が入ってくる感じがあったんです。

内田:ああいうのは、単純にシンセの音色だと思うので。ある程度シンセを使う時は、音色はイメージに合ったものを選ぶようにしているんですね。

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