【インタビュー】人間椅子、バンド生活25年 貫いた信念「ロックは自由。その気持ちを忘れなければ、豊かになれる」

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■人間椅子の主催フェスを

――バンドサウンドとして、この25年間で変わったところと変わらないところはいかがでしょう。

和嶋:あえて変えないところは、まさに自分たちがいちばんカッコいいと思ったハードロックのサウンドを未だに演っていることですね。ほんとに変えてないです。ギブソンのギターをマーシャルに入れてボリューム全開でやると。それこそがまずロックギターのサウンドなわけですよ。世界標準というか。それがいちばんカッコいいし、長時間聴いても痛くないし疲れない美しい音色。ロックを表現する、感情を表現するのにいちばんいい音だと思って、そこは変えてないですね。

――SGも頑なにSGですよね。別のギターを使ってみることは?

和嶋:やっぱりSGのあの音がいいですね。レスポールでもなく…SGの音っていうのは“少し物足りない”なんです。

――私もSG大好きなので、それ、分かります。

和嶋:そう、少し物足りないんですよ。アタックがちょっと遅れて出るっていうか。で、ローも出すぎず中域寄り。自分たちは基本暗めのサウンドなわけで、湿ったウェットな感じの音なんだけど、そのウェット感を演出するのにいちばんいい。「うわ、すげえいい音」に聴こえないところがいいところだと思うんですよね。

――なるほど。すごいいい音って世の中にはもっとありますもんね。レスポールをボグナーで鳴らしたら現代的で素晴らしい音がするでしょ?

和嶋:あぁ、すごいいいでしょうね。多分タッチもキレイに出るはずですよ。ただ昔の機材はちゃんと弾かないといけないというところがいいんです。だから真剣さがより出る気がするんですね。いい加減な気持ちで弾くとショボい音しか出ないんですよ。

――けっこうつらいですよね、それ。

和嶋:昔の楽器でいい音出そうとするのはつらい作業です。

――若い人は「この人アホなのかな」と思っているかも(笑)。

和嶋:アホですよ(笑)。ほんとは足元に機材入れてもっとハイゲインなアンプにすれば、たぶん握力とかなくてもキレイに聴こえるんだけど、それはちょっと味がなくなっていくっていうかな。自分たちのやりたかったものから離れていく気がする。

――それは人間椅子を始めた頃から変わらぬ感覚なんですか?

和嶋:でも、続けることでより自覚したかも。最初はそれしかないと思って演っていたけどね。

――人間椅子はウワモノの音はギターだけですが、ドラム&ベースのリズム隊は、ギターサウンドは和嶋さんに完全に一任ですか?

鈴木:ウワモノの音に聞こえるけど、実は、ノリを全部出してるのはギターなんですよね。ギターのタメがノリを作っている、実は。

和嶋:ハードロックですからね。リズムの刻みってけっこう重要。で、そこに他の楽器がどう絡むか、で、快感が生まれる(笑)。ピタっと合っててもダメなんだよね。

ノブ:ズレてるからこそグルーヴって生まれるとやっぱり思うし。

鈴木:たぶん他のバンドと違うように聴こえるのは、半端じゃなくギターをタメて弾くからだと。

――重たい。

鈴木:そう。それに俺らも合わせるんだけど、結果として上に乗ってるように聴こえるから、それはいいんだけど、その感じは和嶋くんのギターなんですよ。

和嶋:まあ、個性的な弾き方ですよ、確かに。

――普通はドラムとベースがボトムを支えその上にギターが乗るんですが、人間椅子は3人が同じ高さの立ち位置でグルーブを出している感じでしょうか。

鈴木:そうなんですよね。だからギターがリズムを出してるんでしょうね。

和嶋:全員ですよ。

ノブ:レコーディングもね、最初のベーシックを録る時は必ず3人で、ギターも一緒にOKになるんです。

――ほお、なるほど、そこは一発録りに近い感じですね。

和嶋:そう、いいテイクは全員で一緒にやったやつ。それは25年間変わらないです。

ノブ:ノブ:やっぱりその時に同じ空間で顔見ながら演奏してるんで、僕はふたりの手元を見ながらやってますね。聴きながら見ながら演っているから、打点を合わすこともできるし。

――やっぱりちょっと職人芸というか、人間椅子には無形文化財的な芸風がありますね。

和嶋:一流のミュージシャンはみんな無形文化財ですよ。それができる人たちですから。それがロックのカッコよさだと思うんですけどね。いくらデジタルな世の中になっても、たぶん人間が弾いて、その人の個性…まあ気合いと言いますか、生きざまと言いますか、大げさに言えば、気持ちですよね、その人の気持ちが音で出る、いちばん出しやすいのがロックだと思う。

――そのようなスタンスであれば、CDもライブも同じ匂いのパフォーマンスになりますね。

和嶋:ライブ観て「あれ?」とはならないですよね。ライブもレコーディングも同じこと演っているんで。そういうカッコよさを感じたのが、僕らが聴いてきたロックだったから、それを日本語でやりたいっていうところだけなわけですよ。話は戻りますけど(笑)。

――それをただやってるだけだと。

和嶋:そう、やってるだけ。で、それをやるのは意外に難しいから、努力しないといけないんですけどね。

――そんな人間椅子であればこそ、人間椅子プロデュースのライブフェスとかイベントがあったら面白そうだなと思うんですが。

和嶋:うーん、カルトなバンドばっかりになっちゃうんじゃないかな。大丈夫かな(笑)。

――それでいいのではないかと。フェス<人間失格>ってどう?

和嶋:<人間失格>って(笑)。まあ25年やってきたから知り合いも増えてきつつありますし…できなくもないかもしれませんね。いっぱいいい友達もできたから。

鈴木:俺は、頭の中ではずっとフェスは主催してましたよ。

一同:え?(笑)。

和嶋:妄想ですか?

――誰がヘッドライナーでした?

鈴木:それは外タレなんですけどね。ブルー・オイスター・カルトとかナザレスとかを呼ぶわけですよ(笑)。

──凄いセレクションだな。

鈴木:そこに人間椅子と筋肉少女帯も参加します。

――いいですねえ。今、めっちゃ目が輝いてますけど(笑)。

鈴木:俺、ずっと頭の中で主催してましたから。俺は「絶対人が来る」って言っているんだけど、「誰もこねえ」ってみんな言う。

――あははは。いいですね、そのラインナップ。

鈴木:いいですよねえ。

――ブルー・オイスター・カルトが出るなら、最後はみんなギター持って勢揃いですね。

鈴木:あぁ~いいですね、あのファイブギターの。そしたら俺もギターを弾きますよ。あ、ユーライア・ヒープもまだやってますね、彼らも呼ばないと。

■自由であれば豊かになれる

――ぜひ実現を。BARKS応援します。

和嶋:やりたいです。

ノブ:和嶋くんが選んだらまた違う色のが出そうだよね。

和嶋:いや、僕はそこはあまり口挟みません。だってロビン・トロワーとか呼んじゃうから。

鈴木:ロビン・トロワーは、まだ演ってるんだね。

和嶋:演ってますよ。っていうか昔よりギター上手いぐらいですよ。

鈴木:あ、じゃあ許可しますよ。

一同:(笑)。

和嶋:ただ、動員っていう意味では僕は何とも言えませんけどね。

鈴木:いや、でもハードロックばっかりだとやっぱりイマイチだと思う。ブルースもあってのフェスだね。いいかもしれない、それは。ちょっと渋くてニコニコしてるような。

和嶋:一部の人は「おぉっ!」ってなる。

ノブ:一部の人(笑)。

和嶋:我々も25周年を節目として、今までこれだけやれてこれたのをほんとに感謝してるんです。なおかつ、これからもさらに続けられそうな、道が広がってる感がある。それはなんでかなと思うと、やっぱりピュアな気持ちでやってきたっていうことだと思っているんです。それは言葉を変えれば、自由な気持ちでやってきたということなんですよ。売れなかったらどうしようとか、そういう考えはもうまったくなくね。で、自由な気持ちでやってきたら、だんだん豊かになってきた。自由であれば豊かになれるんだっていうことを、言葉として使いたかったんです。それでアルバムを『無頼豊饒』っていうタイトルにした。

――『無頼豊饒』ってどういう意味なんですか?

和嶋:無頼っていうのは、それをロック的というか日本語で言葉にしてみたんです。ロック≒自由だと思うんですよね。豊かなものに繋がっていく、その気持ちを忘れなければ、豊かになれると思ったんで、だからきっとイベントも実現するんじゃないですかね。自由な活動を続けていけば。

──そうですね、イベントは<人間失格>ではなく<無頼豊饒フェス>のほうがいいですね。今後の活躍も期待しています。ありがとうございました。

text by BARKS編集長 烏丸哲也
photo by KASSAI / 3PO DESIGN WORKSHOP


<二十五周年記念ツアー ~無頼豊饒~>
8月20日(水) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
8月22日(金) 青森 Quarter
8月24日(日) 札幌 Bessie Hall
8月30日(土) 熊本 B.9 V1
8月31日(日) 博多 DRUM Be-1
9月3日(水) 広島 HIROSHIMA BACK BEAT
9月4日(木) 香川 高松 モンスター
9月12日(金) 大阪 梅田 Shangri-La
9月14日(日) 名古屋 Electric Lady Land
9月20日(土) 恵比寿 LIQUIDROOM

New Album
『無頼豊饒』
2014年6月25日発売
[初回盤]CD+DVD
TKCA-74080 ¥4800(税込)
[通常盤CD]
TKCA-74085 ¥3086(税込)
CD 13曲収録(曲順未定)
表徴の帝国
地獄の料理人
迷信
生まれ出づる魂
悉有仏性(しつうぶっしょう)
宇宙船弥勒号
隷従の叫び
ミス・アンドロイド
リジイア
結婚狂想曲
がらんどうの地球
グスコーブドリ
なまはげ
■初回盤DVD収録内容
『バンド生活二十五年~猟奇の果~』 @TSUTAYA O-EAST
2014/1/18より
1.新調きゅらきゅきゅ節
2.爆弾行進曲
3.時間からの影
4.怪人二十面相
5.九相図のスキャット
6.ねぷたのもんどりこ
7.品川心中
8.踊る一寸法師
9.相剋の家
10.蜘蛛の糸
11.針の山
12.猟奇が街にやって来る

<『無頼豊饒』CDショップ別購入特典&インストアイベント>
詳細: http://www.tkma.co.jp/jpop_news_detail/ningen-isu.html?nid=4623
購入特典詳細
■タワーレコード全店及びオンライン
先着でタワーレコードオリジナル・ライブDVD(1曲収録)が付きます
収録曲:『冥土喫茶』
<バンド生活二十五年~猟奇の果~> @TSUTAYA O-EAST 2014/1/18より
■ディスクユニオン全店(通販、オンライン含む)
人間椅子ロゴ付きの「特製扇子」がつきます
■HMV全店及びHMVオンライン
先着でプリントサイン入りポートレートがつきます

◆人間椅子オフィシャルサイト
◆人間椅子オフィシャルfacebook
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