【ライブレポート】中島卓偉、15周年記念ツアー終了。「自分の人生後悔ないように、お互い頑張ろうぜ」

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中島卓偉が、デビュー15周年を記念したツアー<15thAnniversary 15years of Rock'n Roll Tour 2014 The Greatest Takui Nakajima>のファイナル公演を恵比寿リキッドルームにて開催した。

◆<15thAnniversary 15years of Rock'n Roll Tour 2014 The Greatest Takui Nakajima>ファイナル 画像

会場は、開演前からすでに熱量が凝縮されていつ破裂してもおかしくない状態。開演に先立っての場内アナウンスが始まる前から、客席では「卓偉」コールの応酬が続けられていた。

開演時間が過ぎて、会場が暗転する。フラッシュライトの中で、まずは、生熊耕治(Guitar/cune)、鈴木賢二(Bass)、石井悠也(Drums/カムロバウンス)のサポートメンバーがステージイン。ドッと沸き返るフロアをさらに煽って、ボルテージをギリギリまで高めていく。そしてオープニングを飾ったのは、「Boys Look Ahead」。ファンなら言わずと知れた、1999年発表の中島卓偉デビューシングル「トライアングル」にカップリングとして収録されていたナンバー。そして<天空の城を描くのさ>という歌詞からもわかるように、いくつかのジブリ作品を卓偉のセンスで融合したグッドロッキンチューンだ。

グリーンのミリタリージャケットに身を包んだ卓偉が、ライトに照らされて姿を見せると、フロアは堤防が決壊したかのように、中央付近から最前へ向けて人が流れ込んでいく。そして約1000人全員が両手を挙げて、大歓声で今宵のロックスターを迎え入れた。

「Come on 東京ーッ!!」 卓偉は咆える。オーディエンスは心地よいビートに体を委ねて、叫びながらボルテージが上がっていく……いや、厳密に言うと、最初から完全に上がりきっている。続く「TOTHE MAX」「I'M A SOD」「真夜中のパラノイア」のスリリングな展開に、大合唱と絶叫、無数のメロイックサインが熱狂した空間を飛び交う。「聞こえねえな!」「もっと来いよ!」と、観客を対峙して煽り続ける中島卓偉。抑えきれない衝動を拳に宿し、全身全霊で叫ぶオーディエンス。ぶつかり合う感情と感情。ライブ後半の盛り上がりと錯覚するかのような光景が、早くも開始15分で展開されていた。

冒頭から並べられた数曲を見てもわかるように、今回のツアーは、15周年記念ということもあって、これまでに中島卓偉がリリースしてきた作品をもとにセットリストが組まれている。しかし、かといって過去の作品だけで完結させようとしないのが中島卓偉だ。「新曲買ってくれた? OK、じゃあ一緒に歌えるってことだよね? 一緒に踊れるってことだよね? じゃあ、4曲目に入っている政治をDisったやついこうかな!」と、軽いMCを挟んで、7月16日にリリースされたDVDシングル「どんなことがあっても / 忘れてしまえよ 許してしまえよ」収録曲から1曲。ニューウェイヴ調なサウンドに日本政治の悪しき特徴ともいえる、次々に変わっていく大臣の辞任劇を「続投」まで含めて強烈なアイロニーとともに綴った「辞任」を歌い上げる。

「オーイエー! 元気しとったかー! お前らにとってかけがいのない存在、中島卓偉です!」 激しいステージングを展開した後に、こんなMCで笑いまでも取っていく。ロックボーカリストとしてのストイックな面がフォーカスされがちな卓偉だが、トークを中心とした彼の“もうひとつの面”も、昨今、自身が音楽監督をするライブイベント<ミュージックフェスタ>や、田中れいなと渡瀬マキとともにMCを務めるYouTubeの番組『MUSIC+』などを通じて、卓偉ファン以外にも認知が広がっている。

「ファイナルってわかってる? 15本のライブの一番いいライブをしないといかんわけよ。それがファイナルなわけよ! 行けるか!」

自身の周りにいるすごい人たちに共通して言えることを盛り込んだというパンキッシュな新曲「僕の周りの天才達」、2002年発表「BLACKSIDE IN THE MIRROR」では、跳ねたリズムに鈴木の奏でる艶かしいベースラインと卓偉のボーカルが絡みあう。そして「15年いろいろあって。傷ついたこと、悔しかったこと、辛かったこと。たくさんあったけど、この曲で全部忘れてしまおうかと思ってます。」と、再度新曲の「忘れてしまえよ 許してしまえよ」。卓偉は、新旧楽曲を緩急つけながら縦横無尽に披露し、会場の上がりきったボルテージをなおも引き上げていく。それはまさしく、膨大な数の楽曲を制作した上で作品(アルバム)を完成させていくという、作品制作へのスタンスをライブに当てはめているかのよう。目指すは最高の、その先。

「夏っぽいやつを続けていきます。」と、テレキャスターを手にしての「恋の一方通行」「HELLO MY FRIENDS」「RE-SET」。さらに『僕は君のオモチャ』のジャケットなどでもおなじみ、Epiphone SUPERNOVAに持ち替えての「ROCK THE FUTURE」「BE MY BABE?(ROCK OF LIFE)」。卓偉がステージから放つ強烈なエナジーに呼応するオーディエンスのシャウト。ステージとフロアが一体となった熱いロックが恵比寿リキッドルームを揺らしていく。

「聞かせる歌」として、生熊のアルペジオからの「FORK IN THE ROAD」。卓偉が<抱きしめても>と歌いだせば、もうそれだけで拍手喝采。さらに「LONG WAY」「Without You」。そしてギブソン・J-45を抱えての大合唱となった「Mother Sky」。前半からあれだけ激しく歌い続けたこのロックボーカリストは、折り返し地点を過ぎて、今度は伸びやかで柔軟性ある歌声を存分に響かせてミドルチューンの作品群を披露していく。その圧倒的なボーカルを前にして、客席側からはワンコーラス終わることに自然と拍手が起こる。

「BE HAPPY」からの後半戦。「ギャンブルーレット」「トライアングル」と、生熊のヒリつくギターと鈴木&石井のリズム隊が会場の空気を刺激し、ジャンプを誘発するスピード感溢れるロックチューンの連続。卓偉もステージを動き回りながら叫び続ける。魂の奥底から揺さぶられる「BOOM BOOM BOOM」では、タオルを振り回すオーディエンスに対し、卓偉もドラムスティックを手に感情をシンバルに叩きつける熱狂のパフォーマンス。さらにこの熱量は「YES,MY WAY」の大合唱へと一気になだれ込む。「行こうぜ! やろうぜ!」「もっと来んか! ナメとんかー!!」と絶叫する卓偉に、今にも掴みかかる勢いで拳を突き上げて声を絞り出していく客席。それは、上がりきったボルテージのその先にある光景が見えた瞬間だった。
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