【インタビュー】高崎晃 vs マーティ・フリードマン、出会い~ギター~音作り~そして未来への15,000文字超ロング対談

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■レコーディングのときはルール違反、マナー違反、法律違反、なんでもやります(マーティ)
■マーティは歌心を持っているしビブラートが大きいしトーンも素晴らしい(高崎)


――海外に向けて発信している邦楽アーティストは、自然と滲み出る日本らしさを大事にすべきですね。お互いに、ギタリストとしての相手の魅力や強みなどをあげると?

マーティ:高崎さんのプレイに初めて触れたときは、世の中にはこんなに器用な人がいるのかと思ってビックリしました。それが、かなり印象的でした。僕がティーンネイジャーでニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビィメタルにハマっていた頃に、いろんな人とカセットテープを交換していたんですよ。そういう中でMasa Ito(伊藤政則)さんと知り合って、彼がLOUDNESSのドーナツ盤を僕に送ってくれたんです。

高崎:そのときは、どこにいたの?

マーティ:ハワイです。

高崎:そうなんだ。政則さんが、ハワイに送ってくれたんや。

マーティ:そう。それに、Masa Itoさんは切手くらいのサイズの記事を『音楽専科』に書いてくれたんです(笑)。そうしたら、本当に小さい記事だったのに、日本からファンレターが来たんですよ。すごい感動でした。ハワイでは、メタルをやっているということで超嫌われていたのに、日本のかわいい女の子からファンレターが来たから日本はいい国だなと思いました(笑)。話が逸れたけど、LOUDNESSのドーナツ盤をもらった後に、がんばってアルバムを手に入れて。アルバムを聴いたときは、自分と趣味が似ているかもしれないと感じました。ただ、僕より全然レベルが高かったです。今にして思えば当たり前のことだけど、高崎さんは完全にプロ・レベルのプレイヤーなのに対して、当時の僕は演奏は自分なりに変態だったけど、まだ超インディーズ・レベルだったから。たぶん、原点はちょっと似ているんじゃないかなと思います。

高崎:そうかもしれないね。俺がマーティのギターをちゃんと聴いたのはメガデスに入ってからだけど、俺なんかと違って、ちゃんと音楽を勉強してるなと思った(笑)。マーティのプレイは、知的な味わいがあるよね。それに、ギター・ソロを聴いていても、他のアメリカ人ギタリストとは全然違う旋律を奏でていて。すごく個性的なギタリストやなという印象を受けた。マーティは、弾き方も個性的やし。

マーティ:僕のフォーム、カッコ悪いですよね(笑)。ギターを持ってきているから、実際に弾きましょうか?

高崎:うん、見せて欲しい。

マーティ:(ギターを持って)普通の人は、こういう風にブリッジの辺りに軽く右手をあてて弾くじゃないですか。そうするとハーフ・ミュートした音になってしまって、僕はそれが好きじゃないんですよ。僕の伝えたいものがギターの音に入らないから。ミュートしないでクリアに音が出るように弾いていたら、自然と今のフォームになりました。

高崎:(弾いているのを見て)やっぱり、すごく変わってる。右手は完全に浮かした状態で弾いているんだ。こういう弾き方をする人は初めて見た。

マーティ:ノー・ミュート状態だから、メロディーを弾くときは他の弦を右手の指でミュートしています。それも無意識にやっていて、意識的にミュートしているわけじゃないんですが。僕の弾き方は音がすごくクリアに出るけど、一長一短なところもあって。アンプとギターの距離とかによって、弾いていない弦が勝手に鳴ってしまうことがあるんですよ。それが新しさにつながるときもあるけど、基本的によろしくないですね。

――マーティさんがレコーディングされている映像を見たことがあるのですが、ソロ録りのときに、ローディーにナットの辺りを指でミュートしてもらっていました。

マーティ:やりますね。二人羽織(笑)。

高崎:レコーディングのときに?

マーティ:はい(笑)。僕は、ほとんどの場合アドリブで弾くんですよ。アドリブで弾いていて自分でも驚くようなフレーズが出てきたり、マジカルな瞬間が訪れたりしたときに、変な音が鳴ってしまったせいで使えなかったら悲しいじゃないですか。だから、念のためにローディーにナットのところでミュートしてもらっています。

高崎:へぇー(笑)。でも、そうすると開放音が弾けへんよね?

マーティ:開放音を絡めたフレーズを弾きたくなったら、サッと合図するんです。トリッキーに感じるかもしれないけど、意外とうまくいきます(笑)。レコーディングでは、いろいろやりますね。チョーキングしたときに、ローディーにナットとチューナーの間の弦を引っ張ってもらって、さらに音程を上げたりとか。そうすると、信じられないようなチョーキングができるんですよ。あとは、ケータイで弦を擦ったり、叩いたりもするし。そういう風に、レコーディングのときは出したい音を出すために何でもする。ルール違反、マナー違反、法律違反、なんでもやります(笑)。

高崎:法律違反は、ヤバいやろ(笑)。

――ヤバいです(笑)。それに、かなりネック寄りのところでピッキングすることも、マーティさんのまろやかなトーンの要因になっている気がします。

マーティ:そんなこと、考えたことがないです(笑)。

高崎:フォームが独特やから、自然とネック寄りで弾く形になるみたいやね。でも、マーティが弾いている辺りというのが、一番ピックが弦にあたっている音が抑えられて、実音がきれいに出るんだよ。

マーティ:そうなんですか? 知らなかった。知らずにやっていたことが、たまたまいい方向に出ているんですね。嬉しいです(笑)。

――ということは、高崎さんもネック寄りで弾かれているのでしょうか?

高崎:いや、俺は弾くフレーズとかによって自然と変わる。逆に言うと、ここで弾かなアカンみたいなことは決めてないね。

マーティ:高崎さんのフォームも見たいです。

高崎:(ギターを弾きながら)俺は、マーティとは真逆な感じだよ。特にリフを弾くときは、弦の上から下にピッキングする感じやね。親指とピックと人差指の爪を同時に弦にあてる感じで、ピックを弦に押し込むような感覚で弾いてる。

マーティ:ちょっと独特ですね。高崎さんは、フォームをいろいろ試してみたりしましたか?

高崎:試した。小指とか薬指をピンと伸ばして弾いてるときあったし、マーティに近いくらい手首を曲げて弾くフォームを試してた時代もあったし。ニール・ショーンは、ちょっとマーティに近い感じのフォームで弾くよね。マーティは、ピックはどういうのを使ってるの?

マーティ:結構硬いですね。

高崎:硬いんや。俺は、若干しなるくらいの硬さ。

――ということは、高崎さんのエッジの立った音はピックよりもピッキングということになりますね。それぞれ、ギターを弾くうえで大事にしていることは?

マーティ:僕に対してテクニカル・ギタリストというイメージを持っている人も多いと思うけど、さっきも言ったように最近はテクニカルということはもう目指してなくて。テクニックがすごいと褒められても、あまり嬉しくはないですね。曲が好きとか、ソロのニュアンスが良いとか言われたほうが嬉しいです。テクニカルということに関しては、子供の頃にもう十二分にテクニカルでしたから。あの頃から、ちょっと成長すればいいなと思って(笑)。それに、今回のアルバムでも速弾きをしているけど、ずっと速く弾いてるわけではなくて。一番大事なところや、僕が必要だと感じたところだけで速弾きしています。そういうアプローチは、すごくインパクトがあるから。

――メリハリですね。それに、『インフェルノ』に収録されているスロー・チューンの「アンダートウ」や「バラッド・オブ・ザ・バービー・バンデッツ」で聴けるエモーショナルなリード・プレイは必聴と言えます。

マーティ:ありがとうございます。あの2曲が実は僕にとっては一番楽勝で、ああいうプレイが大好きなんです。エキサイティングな速弾きがフィットするパワフルな曲が沢山あるけど、そういう曲は僕より上手く弾く人は多分いっぱいいると思います。でも、バラードとか国家みたいな曲に合うエモーショナルなプレイには自信があります。

高崎:分かる。マーティは曲を歌わせる歌心を持っているし、ビブラートが大きくて気持ちいいし、そういうときのトーンも素晴らしい。俺もマーティのエモーショナルなプレイは、すごく良いと思ってるよ。俺がギターを弾くうえで心がけているのは、リスナーを楽しませること。リスナーが喜んでくれて、聴いてて飽きないようなギターを弾きたいという想いが常にある。

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