【インタビュー】植田真梨恵、デビュー作発表「全部をそぎ落としてもいいというのが今の私のキーワード」

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■すべてをそぎ落としたときの“歌”がまっすぐに届いたら
■それは刺さるものなのかもしれなくて

──大阪に出て来て、最初のうちはどうやって過ごしていたんですか。

植田:たまにレッスンがあるんですけど、ほかはやることがなくて。これは時間があるぞと。お父さんには「音楽やりにいったんやから、アルバイトはしちゃダメ」って言われたんです(笑)。でも仕送りだけで生活できるわけでもなく、お金が足りなくてバイトをしながら、このままじゃよくないってなって、曲を書き始めて。なるべく早く、なにかしらできるようにと思ったんですよね。でも最初は、自分は曲が書けると思ってなかったので、詞をたくさん書き溜めて。1曲作ってみたんですけど、これは曲なのか?みたいな感じでできたのが、インディーズ1stアルバム『退屈なコッペリア』に入ってる「夜風」という曲です。

──最初って、どうやって作ったんですか。

植田:楽器は中学校3年生のときに、友達と遊び半分でバンドをやろうって話があったから、いとこにギターを借りて夏休みにコードを覚えたんです。それで、簡単なコードで曲を作って。これでいいのかなっていうのを何曲か作っていって、だんだんとこういう曲を書きたいって思うようになっていったという。ありがたいことに、その頃作っていた曲も、「この曲、良いからアレンジに進めてみようか」みたいな話をしてくださって。それがちゃんと人のもとに届くんだっていうのが、ほんとにびっくりでしたね。

──こういう歌を歌いたい、こういう音楽がやってみたかったんだなっていうのは、10代のなかで芽生えていったんですか。

植田:中学校時代には好きな音楽ができていって。でも面白いものとか、面白いけど嘘のないものっていうのが好きで。聴いていて、ふーんって思うことが生意気にもあったから(笑)。だから、嘘っぽいことを歌う人にはなりたくないなって。なので、もし曲を作っていただいたとしても、これは歌いたくないなって内心思うものもあったかもしれないし。実際に自分で作れたことはよかったのかもしれないって、今は思っているんです。

──会社の方もシンガーソングライターとしての才能を見抜いていたのかもしれないですね。しかも、自分で作ったものがするっと採用されていくんですもんね(笑)。

植田:そういうと、すごくねえ(笑)。実験的なものもあったと思うんですけどね。

──そういうふうに曲を作って歌っていくうちに、だんだんと自分の内側にあったモヤモヤは整理されていくわけですよね。どうしようかっていうところで、聴いてくれる人の顔が見えてきたんですか?

植田:そうですね。私自身も音楽を聴いていて、いいんだけど別に……とか思うこともあったりするんですけど、自分がそこに属してしまうことはむちゃくちゃ怖くて。“植田真梨恵いいけど、別に”ってなったら音楽やってる意味がないのかもしれないって思うと、ちゃんといいものを、私がやりたいというパワーをアツアツで持ってやってないと意味ないと思ったし。ぬるいものがいっぱいになってきちゃったら、イヤだなと。せっかくメジャーっていうところに行けるんだったら、アツアツでいきたいし、パワーを溢れさせていきたいと思ったときに、今までの歌じゃダメだと思った。特に今だからこそ、すべてをそぎ落としたときの“歌”がみなさんのところまでまっすぐに届いたら、それは刺さるものなのかもしれなくて。それを意識して曲を作りました。

──これまでと違う曲作りへのアプローチは、大変さもあったんですか。

植田:今回アレンジをこれまでとはまったく変えて。アレンジャーさんに頼まずにバンドのメンバーで、スタジオで合わせて作ったんです。そういうことをやってみたかったので。バンドメンバーには、歌が際立つようにっていうのはあらかじめ伝えていたので、でき上がりは早かったですね。アレンジで決め込まなくてもいい歌を作ろうって思っていたから、違和感なく歌が耳まで届く方法をみんなで見つけたかったという感じがあって。私はソロなんですが、より生っぽい感じが届きやすいだろうなと意識して、バンドアレンジにしました。

──「彼に守ってほしい10のこと」のアレンジのクレジットに、“いっせーのせ”、とあるのはそういうことだったんですね(笑)。

植田:そうなんです、どう書こうか困っちゃって(笑)。

──ちなみに「彼に守ってほしい10のこと」は、歌詞カードのなかでは“~ください”という守ってほしいことが9つしか出てこないんですが。

植田:これは、曲のなかでは10個言ってるんですね。もう1つは、歌詞には表記していなくて。最後に音源のなかでは、“ずっとそばにいてください”っていうのが入っているんですけど、その守ってほしいことは結果的にそうなったらいいなということであって、強要することじゃないなって。なので、歌詞には書いてないんです。書くのをやめました(笑)。

──2曲目の「ダラダラ -demo-」などは、自分が思うことや光景をなんとかして言葉にしたいっていう思いが伝わってきますし、なんでもないけれど特別な時間の空気っていうのをうまく言葉や歌にした曲ですね。

植田:「ダラダラ」とかはすごく面白くて、歌いたいことがなくなった後で書いた曲なんですよ。私が抱えていることではなくて、生きている時間のなかでの、ふわーっとした、“ああ、今すごくいいな”みたいな感じを音楽で表現できたらいいなと思って。部屋で、何とはなしにギターを弾いていて“ああ、今この瞬間のこの感じいいなあ~”とふと思って作ったので、ほんとダラダラしてる延長で作った曲です(笑)。歌いたいことがなくなって、“ああ、私困ってくるな~”と感じてたんですけど、でもこういう歌だったらたくさん歌いたいと思ったんですよ。

──ある種、今までは自分の心の内をさらしていくことが植田さんの音楽にとっての武器だったわけですよね。そういうのをとっぱらったものを伝えていくって、怖さもありませんか。

植田:たぶん物足りないって思う人もいるだろうし、私の危うさとか、少女性みたいなところを見出して、何をしでかすかわからないって受け取ってくださってる方にはものすごく物足りないのかもしれないですけど(笑)。今、私は女の子たちの歌を歌いたいし、心に寄り添えるものをちゃんと作れたらいいなと思っていて。今まで求めてくれていたようなものは、時がきたらもしかしたらまた出てくるかも知れないしって思っています。

──なるほど、こう見られているな、みんなの期待はここだなっていう自己分析できてるんですね。

植田:それこそBARKSさんが以前記事にしてくださったときのタイトルが、“私が壊れる様を見届けてください”だったのを見て、“ああそうやな”とか(笑)。でも別に全然それでよくって。女の子って面倒くさい生き物だから、ぐちゃぐちゃしてるところを書いてるっていうのは今も変わりないので。まあ、そういう部分は見え隠れするものなのかなって思ってます。

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