【ライヴレポート】MUCC、geek sleep sheepを迎えた<ARMAGEDDON>で「飛びっきり激しい愛のカタチを」

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MUCCが2014年3月より、全55本におよぶライヴプロジェクト<SIX NINE WARS –ぼくらの七ヶ月間戦争->を開催中だ。七ヶ月間連続で毎月異なる全6種類のツアーを各9公演ずつ行なっていくこのプロジェクトは、8月から毎公演ごとにビッグネームを迎えたツーマンツアー<Episode 6.「ARMAGEDDON」>へ突入。その第9夜が8月28日、恵比寿LIQUIDROOMで行われた。

◆MUCC×geek sleep sheep 拡大画像

<Episode 6.「ARMAGEDDON」>最終公演の対バン相手は、geek sleep sheepだ。MO'SOME TONEBENDERのkazuhiro momo(Vo & G)、凛として時雨の345(Vo & B)、そしてL’Arc~en~Cielのyukihiro(Dr)からなるツワモノ揃いの3ピースとのガチンコ対決は、アルマゲドン=最終決戦のラストを飾るに相応しい。また、ここ恵比寿LIQUIDROOMは、FC限定でスタートした<SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~ Episode 1.「ムッP LIVES」>の初日公演が行われた場所でもある。全55公演の始まりにして「ARMAGEDDON」の最後を締めくくる会場の熱気は凄まじく、もちろんソールドアウトとなった客席は開演前から白い湯気が目視できるほど。

MUCCとgeek sleep sheepの共演は、2012年12月に開催されたイベント<DECEMBER'S CHILDREN>以来のことであり、両バンドのツーマン直接対決は今回が初になる。開演前の楽屋でgeek sleep sheepのmomoは、「今回のセットリストは345ちゃんが、出音の大きい楽曲を中心にセレクトした」と教えてくれた。そしてこの夜、彼らのステージを目撃した誰もが、このバンドの持つ音楽的懐の深さを実感したに違いない。

定刻の18時30分を少し過ぎた頃に暗転すると、場内にはブルーのライトとともに一瞬の静寂が交錯した。次の瞬間、momoによるフィードバック音が高らかに鳴り響く。オープニングナンバーは1stアルバム『nightporter』の1曲目でもある「Weekend Parade」だ。momoと345の男女ツインヴォーカルによる清涼なサウンドは、逆巻く荒波のような激戦が続いた<Episode 6.「ARMAGEDDON」>にはなかったもの。この豊かで美しい旋律のポップネスを序曲に据えながら、彼らのステージが「SANPO」「Last Scene」といったナンバーの連発で加速していく。とりわけ、サングラス姿のmomoが奏でる「SANPO」のロックンロールフレーズがオーディエンスのパーティームードをより華やかなものにした。

「居心地いい感じで楽しんでいただければ。たぶん後々、みなさんクッタクタになるんでしょうから(笑)。ちょっと癒しを与えるくらいの」というmomoの最初のMCに続いて披露されたナンバーは、「frame」だった。たゆたうように大きく切ない345のメロディが場内に響き渡る。しかし、実際のBPM以上の疾走感を感じさせたのは、yukihiroによる正確無比な16ビートが土台となっているからだ。また、「Addicted」「Kakurenbo」といったミディアムテンポのナンバーは1音1音が重く強い説得力を持ち、だからこそサウンドはよりエモーショナルに届く。このブロックはmomoのMC通りに“癒し”に満ちたもの。経験豊富なメンバーたちが集結したバンドだけに、70分という時間のなかで緩急をつけながら彼ららしさをアピールする術は、さすがに心得ている。

geek sleep sheepライヴ恒例の345によるグッズ紹介MCが、会場を和やかムードに。そして、「ここから元気になって行きますんで。“今、元気を使ってもいいわ”という方がいらっしゃったら、一緒に盛り上がってください」というmomoのMCに導かれて、キレの良いギターリフが鳴り響いた。「GOHAN」は徹頭徹尾5/8拍子というイレギュラービートで展開されるナンバーだが、リフのキャッチーさと演奏のダイナミズムが楽曲をポップでカラフルなものにしているがゆえ、フロアは瞬時にダンスホール状態となる。

また、言葉数の少ない「Good Dream」は、ある種のギターインストとも言える側面を持つナンバー。3人の演奏力を中心に推し進める楽曲構成は決して複雑ではないシンプルなもの。贅肉をそぎ落とした必要最小限の3ピースには他人にお任せ的な邪念のない潔さと、3人でしか出すことが出来ないサウンドを心の底から楽しむスタンスがあるようで、演奏中に顔を見合わせた345とmomo、そしてyukihiroの呼吸が楽曲にしなやかな一体感を描き出す。エンディングのyukihiroによるキックの連打は、その感情のボルテージの高まりを示すかのごとく、長く激しく打ち鳴らされた。

momoが愛器ムスタングを手にすると、ステージがいよいよ狂演へと変貌する。momoと345によるユニゾンリフがオルタナティヴな狂気を奏でる「Jesus wa gokigen naname」で演奏はますます激しくなる一方だ。ブレイク後の倍テンポによるエンディングアレンジは、yukihiroによる2ビートがハードコアさながらのスピード感とスリルを生み出してフロアを加熱させた。

会場を埋め尽くしたオーディエンスのなかにはgeek sleep sheepについて、サイドプロジェクト的な印象を持っていた人たちもいたはずだ。もちろん、実績を積んだミュージシャンによる集合体であることに変わりないが、これら音楽的なフレキシビリティの高さや一朝一夕には成し得ない高度なアンサンブルは、十分過ぎるほどバンド感に満ち溢れていた。結果、そうした人たちの多くがgeek sleep sheepに対する認識を新たにすることとなったに違いない。

「MUCCさんとは、2年前の年末の武道館イベントで楽屋が一緒でした。あのとき、geek sleep sheepでステージに上がって。お客さんがなんて言ったかというと、“yukihiro!”“345!”“yukihiro!”“345!”……“ヴォーカルの人!”って(笑)」と自虐ギャグを盛り込んで当時を振り返り客席の笑いを誘ったmomo。さらには「10月3日に恵比寿LIQUIDROOMで……あ、ここでワンマンライヴをやります」との345のMCに場内が沸いた。

そして、momoの「今夜が、すべてのみなさまにとって素敵な夜になりますように。この曲を贈ります」という曲紹介に導かれて「IMAGINATION」を披露、最後はgeek sleep sheepの1stシングルにして代表曲のひとつ「hitsuji」で、全70分全12曲のステージを駆け抜けた。MUCCとオーディエンスに感謝の気持ちを述べながら彼らが去った会場には、盛大な拍手と「すごい!」という言葉がそこかしこに聞こえる。序章で記した“出音の大きい”とはラウドでヘヴィという意味だけにあらず。バンドサウンドの存在感そのものの大きさや1音1音に込められた気持ちが、オーディエンスの心を鷲づかみにしてMUCCのステージへとつなげた。

約15分の舞台転換を挟んで、場内が再び暗転。幕が上がるとブルーのフラッシュライトがステージ背後の「ARMAGEDDON」フラッグを浮かび上げた。「THE END OF THE WORLD」を皮切りにスタートしたこの日、MUCCのサウンドがいつも以上に力強い。ひとつの言葉ひとつの音を噛み締めるような演奏は、全55本のツアーのセミファイナルにして、休むことなく続けてきた6ヵ月間のすべてが鳴らされているようで、厚く重いのだ。また、最新アルバムのタイトル曲にしてオープニングを飾る同曲はレコーディングで作り込まれた繊細なサウンドよりも、逹瑯の叙情的な歌声と旋律が一段と生々しく、演奏もソリッド。音源で聴くものとはまた違った繊細さを生み出していた。

冒頭でオーディエンスを圧倒した彼らは、このツアーのセットリストでお馴染みとなったキレ味鋭い爆音ナンバーを立て続けに披露する。デスヴォイスやラップ、オートチューンなどが随所に盛り込まれた「ENDER ENDER」や「Ms. Fear」などの最新アルバム収録曲はスクリーモやヘヴィメタルの要素をMUCC流に昇華した楽曲構築ながら、客席のシンガロングを巻き込むキャッチーさを伴って、攻撃的で親しみやすいライヴのテッパン曲に成長した感がある。

客席の歓声が一際高まったのは、ミヤの7弦ギターからスタートする「幻燈讃歌」だ。同曲はレコーディング時の楽曲アレンジにyukihiroが参加したもの。反復するヘヴィリフと硬質なビートが規則的で暴力的なインダストリアルを描くナンバーで、<Episode 6.「ARMAGEDDON」>にて披露されたのは初となる。MUCCからyukihiroに贈られた選曲と言っていいはずだ。

「ただいま、リキッド! 「ARMAGEDDON」ファイナルですね。そして<SIX NINE WARS –ぼくらの七ヶ月間戦争->もセミファイナル。思えば、3月にここリキッドから始まったツアーも、最初は“長ぇなー”と思っていたけど、あっという間にここまで来ました」という逹瑯の最初のMCでは、geek sleep sheepへ賛辞が贈られた。「アルマゲドン! 闘うぜ!って感じで。気合いを入れてgeek sleep sheepに立ち向かうぜ!って思ってたら……いい感じに削がれるというか。ゆるーく。こういう闘い方もあるんだと。力で押せ押せとは違う私の知らない闘い方があって、ホントに楽しいです!」という逹瑯のMCに続いて、ミヤがCのコードを鳴らすと「World's End」へ。

この日のセットリストは全14曲中、最新アルバム『THE END OF THE WORLD』収録曲を8曲披露、しかもオープニングからの3曲はアルバム収録曲順がなぞられたもので、同アルバムが中心といっていいだろう。しかし、このツアー序盤の速レポに記したとおり、さまざまな時代のナンバーたちが散りばめられたセットリストは過去の楽曲も最新曲も同等に、今の4人が鳴らすヘヴィで胸を射貫かれるような切れ味を伴っている。つまりこの54本のツアーは、最新曲を、そしてMUCCを、より大きくスケールアップさせることに成功したようだ。事前に行なったyukihiroとの対談取材で逹瑯が語った「3月の頃とは絶対に景色が違うはずなんで」という言葉がそれを裏付けているかのようでもあった。また一方で、ミヤが赤いストラトを手にした「369 -ミロク-」はクリーンの16ビートカッティングを主体に、休符を活かしたYUKKEのベースラインやSATOちの4つ打ちなどファンクアレンジを土台としたもので、MUCCの未知を感じさせることに一役かっていた。

「やっぱりgeek sleep sheepでも、yukihiroさんはしゃべってくれなかったな。ま、俺が同じステージに立っても、yukihiroさんに話を振れないけどね。カッコいいよね」という逹瑯のMCは、再びこれまでの54公演を振り返る。「長かったね、345ちゃんのベースのネックくらい(笑)。「ARMAGEDDON」だ、ツーマンだ、ガチンコバトルだっていっても、どうしてもセミファイナルだと感慨深いものがあるさ……」と逹瑯。YUKKEは「ここは最初の会場でしょ。セミファイナルの54本目でここに帰ってこれるという、上手いこと考えてあるね」と続けた。「今回のツアーは初心に戻ることが多くて。高校当時、コピーしてたバンドと対バンしたりね。ファイナルの代々木体育館まで、ここでケガとかしないように」と次のステージを見据えたのはミヤ。そしてSATOちは「54本のライヴの日に毎回ストレッチをやってたら、すげぇ身体が柔らかくなったよ。人間やれば出来る」と笑いで締めた。

怒濤の後半は、9月リリースのニューシングル「故に、摩天楼」からスタート。SATOちの16ビートが冴えわたるこの楽曲では、激しい曲展開ながら安定したドラムプレイに圧倒された。ここで余談をひとつ。リキッドルームという、客席とステージが至近距離の会場だから確認できたことだが、SATOちの左足はずっと8ビートを感じている。それはyukihiroのプレイにも共通して言えることで、だからこそ両者のビートは4ビートへ移行しようが16ビートへ移行しようがスムーズなのだ。

この日のクライマックスはSATOちによるライドの刻みから。「恵比寿、いろんな愛のカタチがあると思うけどさ。飛びっきり激しい愛のカタチをみせてくれよ!」と叫んだ逹瑯に煽られるように、「MAD YACK」で客席が暴発、幾重にも描かれたサークルが激しいモッシュでぶつかり合う。完璧な流れが組み込まれたセットリストのなかで、逹瑯のシルエットが輝かしい光りを放ったころ、本編ラストの「蘭鋳」でそのアグレッシヴなグルーヴに後押しされるかのごとく客席が一体となって、熱すぎるステージが幕を閉じた。

終演を告げるアナウンスに、客席から自然発生的な拍手が巻き起こった。ツアーの大成功を讃える歓声は、この後の国立代々木第一体育館へつながるように、しばらく鳴り止むことがなかった。なお、BARKSではこのライヴ前に行なった逹瑯とyukihiroの対談を現在公開しているほか、この後、同ライヴの詳細レポートも紹介する予定だ。お楽しみに。

取材・文◎梶原靖夫(BARKS編集部) 撮影◎釘野孝宏

<Episode 6.「ARMAGEDDON」>
2014年8月28日@恵比寿LIQUIDROOM
geek sleep sheep セットリスト
01.Weekend Parade
02.SANPO
03.Last Scene
04.frame
05.Addicted
06.kakurenbo
07.GOHAN
08.Good Dream
09.Jesus wa gokigen naname
10.Strange Circus
11.IMAGINATION
12.hitsuji

MUCCセットリスト
※後日掲載予定


■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 6.「ARMAGEDDON」>毎公演異なるアーティストとの2マンTour
2014年8月06日(水) Zepp Nagoya VS [Alexandros]
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月09日(土) 新木場Studio Coast VS 氣志團
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月17日(日) 京都KBS HALL VS GRANRODEO
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月19日(火) Zepp Namba VS BUCK-TICK
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月20日(水) Zepp Namba VS シド
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月22日(金) 川崎CLUB CITTA' VS D'ERLANGER
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月24日(日) 大阪城野外音楽堂 VS ゴールデンボンバー
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月26日(火) Zepp DiverCity VS MICHAEL
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月28日(木) 恵比寿LIQUIDROOM VS geek sleep sheep
OPEN 17:30 START 18:30

■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」>
2014年9月23日(火・祝) 国立代々木競技場第一体育館
前売券¥5,569(税込) 当日券¥6,500(税込)
※全席指定、3歳以上のお子様はチケットが必要です。
チケット一般発売日:2014年8月2日(土)

◆<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争->BARKS内特集ページ
◆SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- 特設サイト
◆チケット詳細&購入ページ
◆MUCC オフィシャルサイト
◆geek sleep sheep オフィシャルサイト
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