【連載】山岸賢介(ウラニーノ)[vol.8]「ツアーメン~バイトのシフトに入れない~」

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すっかりご無沙汰になってしまいました!「コラム更新しなきゃ―」って言ったら、「まだやってたの?」って言われました。「いったいいつぶりだろう?」という当然の疑問を抱いても、はい前回の更新日見ちゃだめー!!もちろんその間、BARKSさんからは一切の連絡はございません!究極の放置プレイ!

さて、久しぶりすぎるので当コラムの趣旨を振り返っておきますと、当初は「ツアーバンドが教えちゃうとっておきグルメスポット」とか「バンドマン直伝ゆるふわ愛されヘア」みたいな、女子力上げちゃうぞ感満載のan・anのコラムみたいなのにしたかったのですが、いつしか「バンドマンの内情をどこまでぶっ込めるか」みたいな空気になってきまして、暴露本の様相を呈してきました。コラムのタイトルを「凛として」に変えようか検討しています。

さて今回です!今回取り上げるのはライブ好きにはたまらない、最近増えてきたサーキットイベントについてです!1つの町の複数の会場で同時にライブが進行し、お客さんは全会場行き来自由!人気のバンドのところは入場規制。そうでもないバンドのとこは…。お客さんにとってはお得なイベントですが、バンドマンにとってはまさに肝を冷やす、試練のようなイベントです。今回はそんなサーキットイベントを100倍楽しむ方法!…といきたいところですが、それはぶっちゃけ皆さんの方がよくご存知でしょう。ずばり今回のテーマはこちら!

「サーキットイベントに出演した際、上手に途中で帰る方法」

です。過去に「打ち上げの上手な抜け方」という特集をやりましたが、今回はさらに上級です。イベントの途中で帰っちゃうんですから。しかし、まじめな話、金のないバンドマンにとっては地方公演でも単発日帰りは当たり前。翌日早朝から仕事だったりアルバイトだったり、やむを得ない事情もあるわけです。しかし、そんな中でも誰も傷つけずに、もちろん自分たちも傷つかずにうまくいなくなる方法、それを今回も例によってレベル別にご紹介いたしましょう。

レベル1 事前に正直言う
まず基本です。正直に言う。主催のイベンターさん、もしくはバンドに事前に告知しておきましょう。一番ベストは誘われたタイミングで言うことです。「終わったらすぐ帰らなきゃいけなそうなんですけど…」。そうすれば「つき合い悪い感」よりも「忙しい中出てくれてる感」が強くなります。あとイベント当日、主催者は忙しくてだいたいテンパってます。事前に言えなかった場合は、当日たくさんの出演者への挨拶や対応で追われている主催者に、どさくさに紛れて告げるのもありですね。「今日ちょっと出ちゃうかもしれないんですけど…」。こんな感じに尻すぼみでオッケー。言ったという事実を作ればいいのです。あまり他の出演者と無理には絡まず、出演時以外は影を潜めておきましょう。絡むと帰りづらくなります。サクッと抜け出したら帰り道にTwitterでつぶやいておきましょう。模範ツイートは「○○(イベント名)最高でしたー!△△さん(主催者)ありがとうございました!もっとバンド見たかったけど明日レコーディングなので帰ります!ありがとうございました!」。勘のいい皆さんはわかると思いますが、「レコーディング」は言い訳の常套句です。実際はアルバイトだとしてもレコーディングにしておきましょう。前向きな感じがします。「レコーディング」は黄門様の印籠のようなもの。誰も文句言えません。

レベル2 こっそり帰る
さて次はちょっと作戦の方向性を変えます。うまくイベントに馴染みながら、途中でこっそり帰る。上記の「レベル1」では他の出演者とあまり絡まないことをオヌヌメしましたが、この場合は逆。むしろ積極的に絡んでください。サーキットイベントですから、とりあえず全会場に顔だけ出しておきましょう。楽屋に突撃して、先輩には挨拶、後輩には「最近どうよ?」的な。重要なことは一人でも多くの人に会って目撃情報を残し、「あいつらいた」という印象を植え付けること。言ってみれば楽屋サーキット。フェスを楽しんでいる感を全面に出すために、いろんな人と写真撮ってツイートするのも有効ですね。まさかこの後いなくなるとは誰も思わないような笑顔で写ります。そして自分たちでも「え!今!?」と思うような意表をつくタイミングで手分けして速やかに搬出を行い、死角にスタンバイした機材車にしれっと乗り込みます。この場合ツイートはしなくていいでしょう。代わりに夜も更けて打ち上げがカオスになってきたかなくらいのタイミングで、主催者にお礼のメールしておきましょう。「明日レコーディングでお先に失礼しました」という定型文も忘れずに。

レベル3 いたことにする
最後はレベル3。これは最も上級であり、凶悪犯のアリバイ工作レベルですので、あまりオヌヌメはいたしません。だって、いないのにそこにいたことにするんですから、言い換えればイリュージョンですよ。フェードアウトまでの立ち位置ははレベル1とレベル2の中間でしょうか。いることは主張しつつ、出過ぎない。サブリミナル効果のように、さりげなく。そしてこの作戦の場合、会場を後にして走り去った時から本番が始まります。出演者でよくツイートしてるやつをリストアップし、彼らのツイートを追いましょう。もちろん片手にはタイムテーブル。イベントのハッシュタグ♯がある場合はお客さんのツイートも追えるので大変便利ですね。押し時間等も考慮しつつ、あたかも自分がそこにいるかのようにリアルタイムに臨場感あふれるツイートを、罪悪感と戦いながら時折投下しましょう。「○○(バンド名)、最高でした!」。打ち上げの様子も出演者のツイートを追えば意外と目の前で繰り広げられているかのようにわかります。誰が暴走しているか、誰が脱いでいるか。あなたはそこにいるのです…。あなたはそこに…。

今年も数々のイベントに呼んでいただきましたが、どれも本当に素晴らしいイベントでした。やむなき事情で途中で帰っちゃったことも正直ありましたが、後ろ髪引かれる思いであったのは事実!そして最後に言っておくと恥ずかしながらこんなぼくでも、上記のようなセコい作戦考えても無駄と言われるような、いてもいなくてもバレるような存在感を放つロックスターに憧れているのも事実であります。まさに群雄割拠のサーキットイベント、その中で少しでもその町に足跡を、お客さんの心に爪痕を残したいと30分弱のステージに全てをかけるバンドマンの生き様を、どうか一人でも多くの方に見に来ていただけたらと思うわけです。珍しく、やや真面目な終わり方になりましたが、最後にぼくの尊敬する永六輔さんの名言を。

「いると困る、いないともっと困る。そういう人間に私はなりたい」

そういうバンドに私はなりたい!

写真がないので最後にghostnoteの大平くんの写真貼っておきます。

◆【連載】山岸賢介(ウラニーノ)「ツアーメン~バイトのシフトに入れない~」まとめページ
◆ウラニーノ・オフィシャルサイト
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