【インタビュー】映画『フルスロットル』にRZA出演、「悪から善まで演じられるのが楽しい」

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9月6日に公開となった映画『フルスロットル』から、ウータン・クランのRZAのインタビューが到着したので紹介しよう。

◆映画『フルスロットル』画像

映画『フルスロットル』は、『レオン』『ニキータ』などで日本でも有名なリュック・ベッソンが脚本・製作をつとめ、2013年交通事故で亡くなったポール・ウォーカーの最後の主演作となる、驚愕のアクション映画だ。派手なアクションと美女、速い車が登場する誰でも楽しめる映画に仕上がっているが、映画に刺激的なスパイスを与えているのが、悪党のボスを演じ準主役で出演しているウータン・クランのRZAなのだ。

エンディングテーマもRZAの楽曲「We're Stronger Now」が使用されているが、RZAはポール・ウォーカーが事故で亡くなった数日後、追悼曲「Destiny Bends」を発表していた。

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『フルスロットル』はリュック・ベッソンが作ったフランス映画「アルティメット」シリーズが原点だ。僕はアクションが好きだし、あれは僕が好きなアクション映画だった。ところがアメリカ版をやるチャンスが来て、僕はその脚本をもらって読み、出演に大きな興味を抱いたんだ。

僕が演じるトレメイン・アレクサンダーは、僕とは違うけれど、同感できる。自分のコミュニティのリーダーなんだ。たとえそれがネガティブな力であったとしても、とにかくリーダーシップは必要だ。トレメインは環境のせいで、ネガティブな人生を生きるしかなかった。でも彼にはどこかポジティブなところがある。彼は何かを見つけようとしているんだ。

僕は自分の能力を尽くしてグループのリーダーを務めてきた。“ウータン・クラン”のメンバーとして、僕らは世界中を旅して騒動を引き起こしてきたからね。だからって僕は部下を撃つようなクレイジーじゃない。それに車や物にこだわる物質主義でもない。そこが違うところだ。でも似ているところが一つある。あまり知られていないが、僕は料理好きなんだ。トレメインも母親のレシピを使って料理をするのが好きだと脚本に書かれていた。だからシーンを演じながら料理の材料を刻むのは、いい気分だったよ。自宅でくつろいでやっている気持ちになれたんだ。

トレメインがどんな人間かを考えると、ぼくの近所にはボス的な僕より年長の子たちが数人いたんだ。一人の男がいた。ダスティという名前だった。ダスティはジャマイカ人でジャマイカから近所に引っ越してきた。彼がビル全体を乗っ取ったんだ。誰もが、14~16歳くらいの少年たちは全員彼のために働いた。ある意味彼はいいやつだった。自分の部下を助けたからね。でも彼はタフガイで、多くの暴力沙汰や問題を引き起こした。でも僕らは男として彼から多くを学んだよ。でも最後には、ダスティは75年の刑に服した。今でも刑務所にいる。刑務所で死ぬだろう。彼がやった犯罪が稼いだ金で報われたとは思わない。彼の家族全体が、彼女も、子供たち数人も、誰もいなくなった。でも僕たちは、彼を尊敬した。彼には金があって、たくましくて、パワーがあったからだ。トレメインは彼を連想させる。

選んできたキャラクターたちを見てみると、自分の人格とは違うキャラクターを選ぼうとしている。平均的な黒人男性でもない。悪役を演じるのはこれが2度目なんだ。粋なキャラクターだと思う。僕はベストを着ない。でも彼はデトロイトかニューヨーク出身のギャングみたいで楽しい。僕はこんな役は演じたことがなかった。ロケ地も初めてだし、楽しんでいるよ。

すごいキャストが揃っている。まず、ポールは超クールだよ。彼の作品の大ファンだ。「ワイルド・スピード」シリーズなんて、いつも特大ポップコーンを片手に観ているよ。オリジナル版でダヴィッドのファンになった。ダヴィッドがやったことは、彼が先駆者だ。フランス出身で、パルクールを始め、それを世界的な舞台に押し上げた。彼が好きだ。セットでシーンを撮っていて、スタントの時間になる。「アクション」と言われると、自分の前に立っているのはスタントマンじゃない。俳優なんだ。すごいと思うよ。

カタリーナは美しく、強烈だ。彼女には独特な魅力がある。とてもしっかりした、強い女性だよ。クールに演じている。

キャストと楽しくやっている。僕の仲間にガウチー・ボーイがいるんだ。アイシャ・イッサがレイザを演じている。セットで長い時間過ごすから、皆で打ち解けているよ。でも僕は悪役を演じている。だからある日、ポールとあまり仲良くしないように話し合った。「今日はお互いに冷めていよう」とね。今日は互いに攻撃し合う撮影なんだ。だから互いに距離を保った。僕はこんな目で彼を見る。彼は銃で僕を殴るんだ。だからその気迫を保った。でも数日後には、ランチを一緒に食べる。全部リアルに演じるためさ。

一番難しかったシーンは、ダミアンとリノがトレメインの拠点に連れ戻されるシーンだ。二人は捕えられた。トレメインは爆弾を競売にかけようとしている。5ページくらいのこのシーンを撮影した。TVフォーマットで全部撮影したと思う。何度も何度も全体を繰り返し撮影したんだ。とても大変だった。僕は少しずつ撮るのに慣れている。でもまるでブロードウェイで演じるみたいに、リアルな演技を繰り返さなくちゃいけなかった。とても疲れたし、エネルギーを大量に消費したよ。でも5~6回のテイクのあとで、僕たち全員に、マジックがおき始めたんだ。全員、的を射たように、その精神とエネルギーを感じ取っていた。一瞬、僕はもう自分ではなくなって、この映画の世界にワープしたように感じた。監督の素晴らしい戦術だと思う。全員、不意打ちを食らったからね。

異なる感性があるとはっきり言える。一つには、カミーユが編集者だという利点だ。だから彼は編集者の頭で考え、同時に演出する。そこがユニークだ。そんなことは考えない監督もいる。目の前にある物だけを考える。でも彼は撮影し、演出しながら、頭の中で編集している。だから僕は彼を信頼する。彼の短編映画を観たが、彼は信頼できる。彼が僕に何か望むなら、彼のために僕はやってみる。

僕の役作りの大部分は、ある意味邪悪なこの人物を見つけることだった。自分の周りにある命を尊重しようとしない人間。まず、僕が知っているそういう人間を考えてみることから始めた。それが善意であれ悪意であれ、ドラッグや殺人を僕は認めない。子供の頃僕はそういう近隣で育った。だから子供時代に戻って、そういったエネルギーを引き出す必要があった。

セットに入る時、僕はラップトップをもってこなかった。コンピュータも携帯電話も置いてきた。アメリカでは知人が僕を探していたらしい。「どこにいる?」ってね。誰も僕の居所がわからない。僕もメールに答えなかった。最初の1カ月間はね。キャラクターの核をつかんだ後、ネットに戻った。外界との接続を断ったのはこれが初めてだったよ。トレメインになり切りたかったんだ。

この映画を観るべき第一の理由は、優れたアクション、内包された優れたコメディ性、優れたスタント、そして同時にクールな物語だと思う。『ニュー・ジャック・シティ』(91)、『Sugar Hill』(93)、『デッドフォール』(89)といった数本の有名な映画にあるものだ。ダヴィッドとポールはタンゴとキャッシュを連想させる。この映画にもそういう要素がある。そしてアクションだ。アクロバットと宙返り、それに僕のクールな邪悪さ。最高に楽しい娯楽映画になると思う。

監督がやってきて、サウンドトラック用に数曲やれるかと聞かれた。光栄だと答えたよ。面白いことに監督はヒップポップが大好きなんだ。だからスタジオで魔法の杖を振ってみたんだ。

それも考えた。サウンドトラックをプロデュースして、音楽をやるのは好きだ。たぶん、メソッド・マンとレッドマンにラップしてもらうかも。二人には、ダヴィッドとポールのような雰囲気がある。キャラクターを生かして、僕の音楽は威圧的で激しい曲になるだろう。

リノを演じるダヴィッドを見るのが、最高の驚きだよ。天井から落ちてくるし、片足で宙返りするし、あいつはすごいよ。彼は最高だよ。

もっと僕を見ることになるよ。アクション映画やドラマでもっと僕と会える。『アイアン・フィスト』(12)のパート2を考えているんだ。映画界で多いに楽しむ僕にもっと会えるはずだ。演技と映画製作は人生の異なる時期にある異なる活力だと思う。でも何かロマンチックなものをやりたい。RZAがロマンチックになれるなんて誰も思わないだろう。でもそういう才能も少しあるんだ!

『フルスロットル』は5年後を描いた映画だ。歪んだ政治家も、危険な隣人も出てくる。ここは強化されたスラム街なんだ。中性子爆弾がそのスラム街の帝王の手に渡ってしまう。爆発を止めようと、街中が必死になるんだ。カーチェイスもアクションも満載だ。誰もが決着を付けようとするが、あとは見てのお楽しみだ。

悪から善まで演じられるのが楽しい。同時に両方はできないからね。トレメイン・アレクサンダーが好きか?個人的には、好きだね。最後には、彼はOKだと思うよ。

RZA



映画『フルスロットル』
主人公・潜入捜査官ダミアンを演じるのは、昨年事故により急逝、本作が最期の主演作となる、ポール・ウォーカー。お馴染みのカーアクションバトルから、手に汗握る肉弾戦にも挑戦。ダミアンの相棒となるリノには、人並み外れた身体能力で魅せる“パルクール”の共同創始者ダヴィッド・ベル。2人の息の合ったアクションは本作最大の見どころ。
数々の名作を世に送り出しているリュック・ベッソンが脚本を担当。監督は『トランスポーター3 アンリミテッド』などでベッソン監督の編集を手掛けたカミーユ・ドゥラマーレ。観る者の度肝を抜き、全世界を熱狂させたフレンチ・アクション『アルティメット』(04)が、限界ギリギリの肉体アクションに、ド迫力のカーチェイスを加えてパワーアップ!アジア各国でも初登場No.1を記録するなど、世界的に大ヒット!!驚異の身体能力を持つ2人の男が廃墟ビルが立ち並ぶ無法地帯で、クールに、スマートに、画面狭しと暴れまくる、“無重力-ゼロG”アクションが誕生した。
◆STORY
高さ12Mの隔離壁 乱立する廃墟ビル ミサイル発射までのタイムリミットは10時間!向かうは、【潜入捜査官】と【ならず者】の2人組。都市ひとつを消し去る最凶の爆弾がデトロイトを狙う!300万人の命は、この2人に託された。暴力とドラッグがはびこり、周囲と隔離され、無法地帯と化したデトロイトの一角。その地を仕切るマフィアの捜査にあたる潜入捜査官ダミアン(ポール・ウォーカー)は、彼らが中性子爆弾を奪い、起動させたという情報を得る。タイムリミットはわずか10時間!人質は300万人のデトロイト市民。ダミアンは、マフィアに恋人を誘拐された驚異の身体能力を持つ男リノ(ダヴィッド・ベル)と手を組み、命がけで危険なミッションに挑む。2人は果たして、爆弾まで辿り着き、彼女を救うことができるのか?そして、タイムリミットの裏に隠された、巨大な陰謀とは?
キャスト:ポール・ウォーカー
ダヴィッド・ベル RZA
監督:カミーユ・ドゥラマーレ
脚本:リュック・ベッソン、サミ・ナセリ
2013年アメリカ
配給:アスミック・エース
協力:ワーナーブラザーズ・ホームエンターテインメント
上映時間:91分
(C)2013 EUROPACORP - BRICK MANSIONS PRODUCTIONS INC.
0-g.asmik-ace.co.jp
9月6日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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