【クロスビート特別コラム】リンキン・パークとサーティー・セカンズ・トゥ・マーズのジョイント・ツアー

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クロスビートの(元)編集部員、中嶋がアメリカからお届けする、現地での公演やヒットに関する不定期コラム。第4回は、リンキン・パークとサーティー・セカンズ・トゥ・マーズのジョイント・ツアーの模様をお届け。

◆<Carnivores Tour>画像

<Carnivores Tour>はリンキンと30STM、そしてスペシャル・ゲストにAFIを迎えた3バンドで北米を回るツアー。9月5日のウッドランズ公演は会場前にリンキンの最新作『The Hunting Party』のラッピング・バスが停車し、会場内のスクリーンではバンドのチャリティ活動やファンクラブの告知映像が流されるなど、来場者の興奮を煽り、退屈させないための演出にも余念がない。開演前には一人の男性がリンキンの「In The End」を様々なアーティスト風にカバーして話題になった動画も流れ、場内が爆笑に沸いた。

オープニング・アクトのAFIは、脱ゴス化して久しいもののメンバー全員がバッチリ黒い衣裳で決め、ナルシシズム溢れるパフォーマンスを披露。しかしフロントマンのデイヴィー・ハボックがハードにシャウトする曲から、「Girl's Not Grey」や「Miss Murder」のようなシンガロングできるメロディアスな曲までその幅は実に広い。名曲「Love Like Winter」をプレイした時は、それまでうだるような暑さだった会場に雨雲が最接近し、急に冷たい風が吹き抜けるというプチ・ミラクルも起こした。

30STMは2013年にリリースした最新作『Love Lust Faith + Dreams』をひっさげて登場。ドラムのシャノン、ベースのトモに続き最後にステージに登場したジャレッド・レトは、バンダナにサングラス、白いロングのガウンを羽織ったひげ面で、その姿はさながら往時のアクセル・ローズ。「Up In The Air」で幕を開け、「Search And Destroy」「This Is War」と大アンセムを序盤から惜しげなくプレイしていく。多くの曲でジャレッドは合唱、コール&レスポンス、手拍子を煽り続け、ノリの悪い観客を見つけると「ダメダメ、ストップ!そこのピンクのTシャツの男性、僕は傷ついたよ~」と、客いじりで笑いを取る。ステージ上ではファンクラブの会員たちが後方からライブを見守り、抽選で選ばれたファン1名がライブ中にジャレッドと携帯カメラで自撮りするチャンスをゲット。巨大バルーンに紙風船といった演出、そして「今日会場でCDを買ってくれた人、全員にサインするよ!」と、もう過剰なくらいのサービス精神だ。

日本でも彼らのライブを観る機会は何度かあったが、特にフェス出演時は移動や時差の疲れからか、ジャレッドのボーカリストとしての能力がイマイチ出しきれていないように感じていた。しかし、この日はラウドな楽曲からギター一本で弾き語った曲まで、満遍なく彼のポテンシャルが発揮されていたと思う。後半、ジャレッドはステージを降り客席の中に移動すると、「今日ここで僕が指名されたアイス・バケツ・チャレンジをやろうと思う。次の挑戦者は今夜会場にいるみんなだよ!」と観客を指名すると、上半身裸になって氷水を被り、これには観客も大歓声。そしてアコースティック・ギターで「Attack」などを歌い、再びバンド・セットに戻ってパンテラの「Cowboys From Hell」をカバーから「Closer To The Edge」になだれこみ終了。約1時間のパフォーマンスだが、この後まだリンキンがあるなんて!というくらいの満腹感だ。

セット・チェンジの後、いよいよリンキン・パークのライブがスタート。オープニング映像と共にメンバーが登場したと思うと、画面には感じで大きく『狩人』の文字が映し出される。新作のタイトル『The Hunting Party』を表現しているのだと思うが、日本人である自分は目にした瞬間、つい笑ってしまった。オープニングはそのまま新作からのラウド・チューン「Guilty All The Same」へと繋がり、イントロの印象的なギター・リフがかき鳴らされると最後にチェスターがステージに登場。彼の存在感に、最後のピースがぴたりとはまり圧倒的なリンキン・ワールドが会場を包み込む。

すでにオリジナル・アルバム6枚分のキャリアを築いてきた彼ら、それだけに持ち曲も80曲近くあるわけだが、限られた時間の中でできるだけ多くの曲を詰め込むべく、特に旧譜の人気曲はワンコーラス程度に留めたメドレー形式でプレイしていく。時には「Blackout」をイントロにして「Papercut」をプレイし、「Numb」にはジェイ・Zとのコラボ版をサンプリング。そしてマイク・シノダのソロ・パートでは彼の別プロジェクト、フォート・マイナーの「Remember The Name」を挿入するなど、とにかくファンの聴きたい曲を片っ端から盛り込んでいた。しかも、背景の映像には『Hybrid Theory』の羽の生えた兵士、『Meteora』のスプレー缶、「In The End」のPVに登場した女神像などのモチーフが、CGでハードにデフォルメされて登場。そのさりげなくも意図的な演出に、初期2作のファンなら思わずニンマリしたはずだ。逆に、最新作からの「Rebellion」や「Final Masquerade」は演出も抑え目にフルコーラスでしっかり聴かせる。個人的には最新作のパンキッシュなナンバーをもうちょっと聴きたかったが、2時間で28曲をプレイするほど濃縮されたショウにこれ以上望むのは欲張りすぎか。

アンコールでステージに戻ったチェスターにギターのブラッドが何か耳打ちすると、チェスターが「この公演は<Carnivores Tour>の中でも一番早くソールド・アウトした会場なんだって!」と報告。彼らが2003年にリリースしたライブ・アルバム『Live In Texas』も、実はテキサス州ヒューストン(ウッドランズはヒューストンの隣の市)で録音されている。バンドとこの地のファンの間には、特別なマジックがあるようだ。そしてまた、「Burn It Down」や「New Devide」といったミドル・チューンのメドレーを経て、最後を飾ったのは「Bleed It Out」。マイク・シノダのラップ、チェスターの怒涛のシャウト、そしてロブのドラム・ソロでクライマックスを迎えると、マイクは客席へ降り観客とハイタッチ。演奏が終わっても観客のスマホで写真を撮るなど、最後の最後までファンとの交歓に余念がなかった。
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