【インタビュー】大沢伸一プロデュースのMUSIC BARが銀座にオープン。「時間旅行と世界旅行が瞬時にできるのは音楽だけ」

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小林武史が総合プロデュースした商業施設・代々木VILLAGE by kurkku。この一角に、大沢伸一がこだわりぬいた音響設備で最高の音を楽しむことができる「MUSIC BAR」がある。2014年9月16日、この2号店にあたる「GINZA MUSIC BAR」が銀座にオープンする。というわけで、大沢伸一に新しい店舗の話を伺うことにした。

◆「GINZA MUSIC BAR」店舗の画像、サウンド システム 画像

ところがインタビューは、代々木店、そして新規開店の銀座店の話から、機材の話、そして大沢伸一が語るプロデュース論にまで発展し……。

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── 大沢さんが小林武史さんとプロデュースされた代々木VILLAGE内「Music Bar」はますます盛況ですが、9月半ばには、銀座に「GINZA MUSIC BAR」もオープンするそうですね。銀座というコンサヴァティヴな土地柄などを踏まえて、お店のコンセプトを変えたりするのでしょうか?

大沢伸一:店の内装などの雰囲気は代々木とがらりと変わると思います。代々木はどこか懐古的なムードもある空間ですが、銀座は店がブルー一色でまるで深海に迷い込んだかのよう(笑)。コンセプトも特に銀座に合わせる予定はないんです。選曲も場所や店の雰囲気に合わせるということではなく、僕をはじめとして店に関わる人間が「良い」「好きだ」と思う音楽ならなんでもありなんです。なので、もしかしたらレコードが聴ける店なのに大ヒットしたあのアルバムはないということもあるかもしれないですね(笑)。

── ノンジャンル、ノンカテゴリーで良い音楽をかけるけれど、そこには発信者の意志や思いが密かに、けれど確かに内包されていると?

大沢伸一:はい、なので代々木のオープン当初好きなレコードをリクエストしたらかけてもらえると思っていた人もいらっしゃいましたね。勿論そういう要望にお応えする場合もありますが、そういう店はすでに沢山あるし、ここではもっと「選曲の妙」も込みで音楽を発信したい。今ではその提案も含めて楽しんでくれる方がすごく増えましたよ。

── そもそも、大沢さんはなぜ「Music Bar」のプロデュースを手がけることになったのですか?

大沢伸一:「代々木VILLAGE」全体を立ち上げる話が出たとき、小林武史さんから「一緒にやらないか」と声をかけてもらったんです。音楽に直接的に関係するプロデュースはこれまで数多くやってきましたが、その延長線上で飲食関係のプロデュースをいつかはやってみたいと思っていたので嬉しかったですね。ただ、どんな内容にするかその時は全然まだイメージできていなかったので、僕らは音が出せる場所として仮の名前として「スタジオ」って呼んでたんですよ(笑)。

── その仮の名前からすでに、音を気兼ねなく出せたり音を創り出せる場所という、新機軸のお店が想像できますね。

大沢伸一:音楽にまつわるお店の在り方として色々なアイデアが沢山でました。そして辿り着いたのがこの音楽を存分に楽しめるバーというスタイルでした。小林さんには言葉や文字で説明するより体験してもらった方がわかりやすいと思ったので、都内でレコードが聴けるバーへ何度となく連れて行きました(笑)。そこで、「堅苦しくなくて僕らが好きな音楽を鳴らせる店にしませんか」と提案したら、小林さんも「いいね。そうだね」って。

── 確かに、日本でお酒が飲めて大音量で音を聴けるとなると、クラブやライブハウス等だったり、ジャズなどのある一定のジャンルに限られてしまいがちですね。

大沢伸一:そうなんです。欧米では大きな音で音楽をカジュアルに楽しめる店はどこにでもあるのに、なぜか東京ではそういう飲食店やレコード店、CDショップはどんどん減っている。それは残念なことだなと思いますね。

── 実際に開店してからは、手応えを感じているのではありませんか?

大沢伸一:いわゆる一般の飲食店とは違った盛り上がり方をしているなと思います。開店当初の話題性でのにぎわいは勿論ありましたが、2年目、さらに今は3年目ですが、どんどん尻上がりに人が集まってきてます。既存のライブハウスなどとはまた違った形態でのミニライブや、ダンスミュージックに特化したインターネットラジオ局block.fmでの番組の生放送と木曜サロンという文字通りサロン的空間を目指したイベントのドッキングをやってみたりと本当に自由な使い方をしてますから、その場で行なわれている事に感化されたり、それを面白いと感じた人たちが口コミで広めてくれている感覚はありますね。「Music Bar」を含め、代々木Villageという施設全体がひとつの新しいコンテンツとして受け入れてもらえてるんじゃないかなと感じています。

── 音楽との新しい出会いの場として「Music Bar」という狙いは見事的中したと?

大沢伸一:だといいですね。音楽との出会いの場を増やしたいという根源的な欲求はありました。僕の口から、エデュケーションというとおこがましいですが、今の10代は僕らが10代の頃のようには音楽に接することが出来てないと思います。人から聞いた話ですが、ある女の子が洋楽を聴いていたら友達から「英語で(歌詞の)意味がわからない曲を聴く理由がわかんない。」って言われたそうなんです。音楽って芸術の中でも様々な垣根を超えて自由に楽しめるものなのに、なんだか気の毒だなと。今って情報は過多なのに一番多感な時期に、いい音楽に偶然出会える喜びの機会が圧倒的に少ない。僕らは大人の責任として、それをどうにかしたいと思ったんです。そのことも(立ち上げた)理由のひとつですね。

── 何言ってるか分からないけどカッコいい、みたいなところに音楽ならではの魅力があると思うのですが……。

大沢伸一:ええ。音楽って言葉や世代、地域性といった壁を取っ払える唯一のものだと思うんですよ。あと、昔からよく言われていることですが、音楽って静止しているとまったく意味をなさない芸術なんです。絵画や映画のように止まっていても何かしらの形で成立するものと違い、自分の人生の何分の一かの瞬間を切り取らないとそれを享受できない刹那で儚いものでもあります。だからこそ、僕は丁寧に扱いたいと思うんです。

── そんな大切な音楽を流すための装置、サウンドシステムにもかなりこだわっているそうですね?

大沢伸一:そう言われると、かえって恐縮ですが、単純に歴史的名器と呼ばれるものを使っているだけなんですよ。ただ、名前で選ぶのではなく、実際に聴き比べて「これがいい」と決めました。アンプに関してはスタッフ間でも好みはまちまちだったりするんですが、スピーカーは「絶対にTANNOYがいいね」と。JBLとよく比較されますが、ジャズ専門店などで大音量で音楽と真正面から向き合って聴き入るみたいな場合は、きっとJBLが素晴らしいと思います。一方で集中力も必要になるし長時間聴くと疲労を感じることにもあるかも知れません。その点TANNOYは一瞬、頼りなく聴こえるかもしれないけど、店のどんな場所で聴いてもそれぞれで良い音が鳴る、なおかつ長時間聴いても疲れないところが店にはぴったりだなと思いました。

── 銀座店でも同じサウンドシステムですか?

大沢伸一:ええ、基本的には同じです。

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