【レポート】MUCC『SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~』、第2章:<Episode 2.> to <Episode 5.>

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MUCCが2014年3月より、全55本におよぶライヴプロジェクト<SIX NINE WARS –ぼくらの七ヶ月間戦争->を開催中だ。七ヶ月間連続で毎月異なる全6種類のツアーを各9公演ずつ行なっていくこのプロジェクトは9月23日、国立代々木競技場第一体育館にてファイナルを迎える。ここでは200日を超える戦いの日々を3章に分け、総括していく。

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古くからMUCCを知るファンたちに向けたコアなライヴであった<SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~Episode1.『ムッP LIVES』>を無事終了させ、彼らはいよいよ本格的な戦いの場へと身を置いた。第2章では、the telephones、THE BACK HORN、ROTTENGRAFFTY、FAKE?、SEBASTIAN X、ストレイテナーらと戦った<Episode 2.「VS 異種格闘技2マン Tour」>から、MUCCの中でも特にヘヴィチューンを集めたセットリストで挑んだ<Episode 3.「Thanatos & Thanatos」>、同じシーンをリードするMERRY、SuG、LM.C、vistlipらと3マンで戦った<Episode 4. 「TRIANGLE」>、最新アルバム『THE END OF THE WORLD』を引っ提げてのアルバムツアーであった<Episode 5.「THE END OF THE WORLD」>を振り返っていこうと思う。

   ◆   ◆   ◆

ここでは、「VS 異種格闘2マンTour」というタイトルが示す通り、the telephones、THE BACK HORN、ROTTENGRAFFTY、FAKE?、SEBASTIAN X、ストレイテナーという異なるジャンルの音楽性を持つバンドとの対バン形式でライヴは行われた。コアなファン層に向けてのライヴとも言えた<Episode 1.>から、まったく音楽性の違うバンドとの対バン<Episode 2.>へと大きく舵を切った彼らは、先陣を切り、おもいっきりこの対バンライヴを楽しみながらステージを盛り上げてくれた各バンドに触発され、いつも以上のテンション感でライヴを盛り上げた。まさに、それは、闘う相手があってこそのテンション感と、闘志が漲ったライヴだったと言える。

常にMUCCらしく闘うことは根底に置いていたと思うのだが、このブロックでは、対バン相手を意識した選曲でセットリストを組んでいたように思った。オーディエンスも、普段はあまり目にすることのないお互いのバンドの個性をしっかりと受け止め、自然にそのノリに身を任せ、互いのバンドの音も手放しで楽しんでいたことから、アーティストも、“音楽”というツールを使った、“交友を兼ねた理想的な戦い”を成立させられたのではないかと思う。

これは、初日であったthe telephonesとの闘いのときに改めて感じたことなのだが、とことん自らのジャンルを追求するthe telephonesに対し、1つのジャンルに止まることなく、いろんな音楽を吸収してMUCCの個性と同居させ、それらを融合させることによって新たなMUCCの個性を確立していく、まったく真逆な方向性を持つ異色のバンドが、それぞれの信者であるすべてのオーディエンスを楽しませることが出来たとは、実に素晴しいことであったと思う。

そして、5月。彼らは<Episode 3.>へとさらに突進んだ。激しいナンバーばかりを集めたセットリストで挑んだ<「Thanatos & Thanatos」死の神、再臨 単独Live Tour>は、MUCCというバンドの生き様を見せつけられた、最高のツアーだった。確実に<Episode 2.>での対バンがバネになっていたことだろう。彼らは<Episode 2.>を経験し、MUCCというバンドがどう在るべきかをしっかりと感じ取ったに違いない。故に、<Episode 3.>では、MUCCという個性を徹底的に吐き出したライヴを魅せてくれたのである。

“死の神、再臨”とは、彼らが2013年に行った2daysツアー「Hypnos & Thanatos」からの流れを意味するモノ。彼らは当時、眠りの神であるHypnosと死の神であるThanatosをテーマとし、メロウな楽曲たちで構成されたHypnos Dayとヘヴィなナンバーを中心に集めた死神Thanatos Dayに相応しいセットリストで構成されたライヴを魅せてくれたのだ。Thanatosとは死神。「Thanatos & Thanatos」とは、その字のごとく、Thanatosの二乗。つまり、Thanatosは、威力を増し、ここに再臨したのである。

“初日の名古屋では、ここまで激しい構成で最後までこのツアーを乗り切れるのか不安になった”と言うYUKKEの言葉からも、その激しさがいかに凄まじいモノであったかがわかるように、セットリストに並んだ楽曲たちは、言うまでもなくどれも激しいモノばかりだった。抑揚をつけることなく、最初から最後まで200%のヘヴィチューンが羅列されていたここでの戦いは、まさに己との戦いでもあったのである。ここで素晴しかったのが、その激しさに応えたオーディエンスの熱量だった。

「てめえらの全部差し出せよ! 全部よこせよ!」と叫んだ、いつもよりも挑発的な逹瑯の煽りが、オーディエンスの心に火をつけたのだろう。オーディエンスは、全身全霊でぶつかる4人に負けじと、間髪入れずに届けられる全力の音と唄に全力で応え、4人がそこに見たかった景色を、最高の景色として魅せたのである。全力で自らの力の全てを吐き出すMUCCと、彼らの音と唄を渇望したオーディエンス。この景色の意味こそが、MUCCというバンドが求められる答えであったと思う。

ミヤの独断によるライヴ中の予期しない曲変更は日常茶飯事のMUCCだが、この「Thanatos & Thanatos」では、そんな予期しない曲変更が1番多かった。そんな情景からも、この「Thanatos & Thanatos」が、いかにガチンコの闘い(ライヴ)だったかが計り知れる。しかしながらいつも思うことだが、ムックルー(MUCCを支えるクルーたち)は、この予期せぬ曲変更に、よくもよくも焦ることなく、取り乱すことなく対応し、彼らがその場で欲しいと求める景色を即座に描き出せるモノだと感心する。「Thanatos & Thanatos」は、MUCCはもちろん、ムックルーと、大きく振りかぶったヘドバンやモッシュで盛り上げてくれたオーディエンスによって最高にロックな景色が描き上げられ、次なるEpisodeへと繋がれていったのである。

6月4日からスタートさせた全国3マン対バンツアーであった<Episode 4.「TRIANGLE」>。ここでは、同じシーンを共に盛り上げてきた顔なじみのバンドたちとの戦いを魅せた。ツアー全ヵ所に参戦してくれた同世代のMERRYとのライヴに、SuG、LM.C、vistlipが3daysずつ華を添えるという形で行われたのだが、気心知れた仲ということもあり、その景色は<Episode 2.「VS 異種格闘2マンTour」>で見せた闘いとは明らかに異なるモノだった。

もちろん、戦いとしては100%全力のガチンコ勝負なのだが、がむしゃらな戦いというよりも、その闘いを手放しで楽しんでいたと言った方がしっくりくるのかもしれない。互いのバンドに、各バンドからサポートとしてメンバーを呼び込み合い、ここでしか見れないライヴを作り上げていった対バンならではの光景に、オーディエンスは歓喜の声を上げ、お目当てで来たバンドのライヴだけを楽しむという閉鎖的な楽しみ方ではなく、バンド同士の関係性までをも楽しもうとする、一歩踏込んだ受け止め方で楽しんでいた様に思う。この『SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~』の中で、唯一の息抜きでもあったとも言えるかもしれない。もちろん、これは、決して手を抜いて挑んだという意味ではなく、“イベントライヴ”として純粋に楽しめたブロックでもあったであろうと言う意味でのことである。

人は憧れられることで輝きを増すモノ。学生時代からMUCCの音に憧れてきたという後輩バンドであるSuGやvistlipとの共演も、4人にはとても刺激だったはずである。ナント、「VS 異種格闘2マンTour」で闘ったthe telephonesのドラマーの誠治も、<Episode 6.「ARMAGEDDON」>での対戦相手であった[Alexandros]のドラマー㽵村聡泰も、MUCCの音を聴き、ライヴに足を運んでくれていたのだという。まさに、継続は力なり。彼らMUCCが17年という歳月を通して放ってきた音と叫びは、しっかりと聴き手に届いていたのである。多くの後輩バンドたちが胸を締め付けられていたであろうMUCCの音は、6月25日にリリースされたニューアルバム『THE END OF THE WORLD』にもしっかりと息づいているのである。

そして7月。少し肌寒かった季節もすっかり色を変え、汗ばむ夏がやって来た。こんな季節の変わり目を肌で感じると、この戦いがいかに長いモノであるかを再認識させられる。「THE END OF THE WORLD」と名付けられた<Episode 5.>は、様々な形での戦いが繰り広げられる中、6月25日にリリースされたニューアルバム『THE END OF THE WORLD』を引っ提げて行われた、純粋なアルバムツアーでもあったのだ。

各所から“実にムックらしいアルバムだ”という絶賛の声が上がっていたほど“ムック純度”の高い作品であったこの『THE END OF THE WORLD』を、実際にライヴで感じてみたいと思っていたのは私だけではないはず。彼らもまた、早く届けたいという想いもあって、タイトル曲となる「THE END OF THE WORLD」を、このツアーの初日であった<Episode 1.「ムッP LIVES」>の1曲目に置いていたのだろう。モノクロの街が映し出される紗幕の向こうで奏でられ唄われたニューミュージックを彷彿させる旋律は、MUCCが追い求めてきた“昭和”な世界をそこに描いた。どんなに貪欲に他ジャンルの要素を取り込もうとも、必ず根底に宿してきたという“フォークバンドであるというMUCCの原点”は、初めて彼らの音に触れ、心を大きく揺さぶられたMUCCというバンドの音との出逢いを改めて呼び起こさせられた時間となった。

アルバムの中で1番の破壊力を放っていたYUKKE作曲の「999-21 Century World-」ではフロアに大きなサークルが4つ出現し、オーディエンスは曲に合わせて全力でフロアを走り回り、女性コーラスを前面に押し出したアプローチでファンクとロックを融合させた「369 -ミロク-」では、これまでにないノリをフロアに生み出し、最後に、今の彼らだからこそ唄えたと痛感した、逆説的な意味を含む柔らかなバラード「死んでほしい人」を届け、集まったオーディエンスに“現在のMUCC”を提示したこのツアーは、最高にMUCCらしいライヴとなったのだった。

逹瑯は、普段からMUCCの音を愛してくれている夢鳥との空間であった久しぶりの単独ライヴであったことと、『THE END OF THE WORLD』という最新ながらもMUCCの原点を感じさせるアルバムに込めた想いに、込み上げる感情感があったのだろう。彼はこのブロックのアンコールで夢鳥たちに、「一緒に歳取っていこうぜ! 兄弟!」という、最上級の愛の言葉を贈ったのだった。

取材・文◎武市尚子


■SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」
2014年9月23日(火・祝)国立代々木競技場第一体育館
OPEN 16:00 START 17:00
前売券¥5,569(税込) 当日券¥6,500(税込)
※全席指定、3歳以上のお子様はチケットが必要です。
チケットぴあ http://bit.ly/UXHMR1 
イープラス http://bit.ly/1sWeGhW 
ローソンチケット http://bit.ly/1mhghcC 

◆チケット詳細&購入ページ
◆MUCC オフィシャルサイト
◆SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- 特設サイト

◆第3章:<Episode 6.> to 代々木第一体育館
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