【インタビュー/前編】SUGIZO、自然再生エネルギーを利用して音楽家が出来ること

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◆お互いに“皆で共有したい”、“分け与えたい”、“良い音楽を聴かせてあげたい”というような
発想のもと、自己顕示欲を取り払ったところで進んでいくのが美しいのでは、と思っています。


──ちょっと紹介が遅くなってしまいましたが、今迄話をしている伊藤さんって、何者なんだ!?と思われている人がほとんどだと思うので、紹介しておきますが、これまでの話にもチラチラと出て来ていましたが、90年代にイベントのオーガナイズを僕らはやっていたんですね。伊藤さんはそのオーガナイザーの代表だったんですが、今ではソーラー業界から有意義なイベントをサポートするという立場で積極的に活動をしてくれているんです。それこそティピの中でプレイしていたアーティストというのは、今ではSUGIZOさんがギタリストとして参加している「JUNO REACTOR」のことなんですよね。そこで伊藤とSUGIZOさんが現在繋がっている……という流れを、一応言っておきますね。で、そんな僕らがパーティーやイベントをオーガナイズしていた時代のテクノやトランスのアーティストは、実名を名乗って活躍している人はあまり居なかったし、匿名性が高かった。レコードやCDのジャケットにアーティストの写真が使われるようなこともなかったですし、そうしたことに重要性は感じていなかったと思います。そこに集う人々も、ロックのステージのようにアーティスト側を向いているというような光景は、2000年に突入する以前迄は殆どありませんでした。ただハッピーな空間や自然をそれぞれに楽しみ、そこにいる人たちと共有しているという。90年代迄はそうしたパーティーが主流だった時代です。

SUGIZO:そこに徐々にビジネス的な付加価値がついて来てしまって様相が変わって来てしまいましたよね……。周りと繋がり合って行くことで世の中を構築する…それは自分たちの住む街でも良いし学校でも良いし…。そういう考え方の人たちが今の時代だからこそもっと世に出てくるべきだと思いますね。今までの世の在り方は自己顕示欲の強い人が周りを押しのけて競争に勝ち世の中に出て来た故に、このような社会になってしまっているけれど、それはそろそろ根底から変わるべき時期に来ているんじゃないかと感じています。<選挙フェス!>のような動きもそうですし、パーティーシーンもそうですし、僕自身が今後やって行こうとしている音楽活動もそうですけれど、今はお互いに“これを皆で共有したい”、“分け与えたい”、“良い音楽を聴かせてあげたい”というような発想のもと、自己顕示欲を取り払ったところで進んで行くのが美しいのでは、と思っています。でもそういう思考の人はとてもお人好しの良い人たちばかりなので、あまり前に前に出てこようとしないんですよね……。

伊藤:そういう人たちと繋がって、彼らを世の中のマイノリティとして埋もれさせない為にはどうすれば良いのか?を考えていくのも僕たちの仕事だし、やりがいのあることだとも思いますね。戦後の中小企業の力ってすごかったんだな!と今になってつくづく思うことがあるんですが、あれがなければ今の日本はなかったと思っています。中小企業の社長さんや社員たちは数字だけではない「この状況で自分たちに何が出来るのか?どうすれば日本は良くなるのか?」という想いや夢があったからこそ復興を成し遂げられたんだと思います。本来であれば、今そういう力が必要なんですけどね……。

SUGIZO:当時の日本には発展や収益と言う物理的なことだけでなく、自分たちの力がどれほどのモノなのかというクリエイティビティにチャレンジする「夢」が根幹に在ったと思うんですよね。

伊藤:今の起業する人たちの発想と言うのは、ベンチャーキャピタルからお金を集めて上場させて投資家たちが納得する数字を上げるためのモデルを作って行くことを優先して、商品やモノに対する根底が全て数字だけで計られてしまっている。数字以外のことは重要ではないと言うところまで来てしまっている気がします。SUGIZOさんが居心地の悪さを感じながらも音楽業界にいるのと同様に、僕もソーラービジネスの立ち位置から、上場企業の方々と深い付き合いをしている中で、某商社のエリートサラリーマンが僕のところに来て言ったことが結構衝撃だったのですが、「僕らは家も、車も、銀行にお金を預けるのも、全て所属している会社のグループ企業なんです。妻はその企業の主催するグループ会に所属させられて、結局入ってくる給料は殆ど企業に吸い上げられてしまっているような構図になってしまっています」と……。大企業内でのピラミッドの構図ってそうなっているんだな……と、彼らの生きている世界は世界で、独自の哀しい縮図が在るのだと言うことを目の当たりにしました。そういう金融崇拝スパイラルにお金が流れて行ってしまう社会システムが台頭してしまっていますが、僕らのようなマインドの人たちがもっと増えて行けば自然とお金の流れはこちら側に来ると思うんですけどね……。

SUGIZO:そうであって欲しいですよね。

伊藤:僕は太陽光ビジネスに関しては、そういう想いがあってこのポジションを活かし、“得る利益を何処にどう還元すれば世の中を良い方向に変えて行けるのか?”を考えています。株主への配当だけで終わってしまうような企業であれば、その時点でそのような会社は離れようと思います。今回、<Art of Parties>に協力をさせてもらったソーラーパネルの会社(株)WWBの龍社長は僕のような想いを理解してくれている心強い人で、自らもそうした思いで起業している人だと思いますよ。

──そういうことで言うと、龍社長は3.11直後、福島第一原発に放水車「キリン」を2機無償で提供したんですよね? そのことを敢えて外に向けて公表していない姿勢を伺うに、会社のアピールだとか、メリットを考えずに、ただ皆の役に立つことをしていると言うのが本当に純粋に社会貢献を考えているんだな、という印象を受けました。

SUGIZO:僕も龍社長と初めてお会いした時、もの凄く好印象だったのを覚えています。

伊藤:とはいえ起業家は大変で、連結している親会社もいるので龍社長の想いだけで会社を動かすことが出来ない実情なんですよね。資本家たちは「気持ち」は2の次で来期の売上げ目標や数字、自分たちへの配当は幾らなのか、というところしか観ない。そういう部分だけでしか会社というものは動いて行かないんだと言う厳しい現実もあります。でもそういうシステムを壊して行けるのが僕らのような発想ですよね!? ただし、そこにはきちんと実績を伴って「こういうやり方でも回って行きますよ!」というのを証明して見せて行かなければならないんですよね。そういうことは僕のような異端児が外部からあまり会社に迷惑をかけないレベルで「新しいやりかた」を提案して行くしかないんですよね。なので、僕がここで話していることは、会社の意見と言うことではなく、あくまでも個人的な発言と思って聞いていてもらえると助かります。

SUGIZO:僕もある意味、音楽業界の中で全く龍社長と同じような境遇にいます。

──メジャーレコード会社はCDの売上げ枚数しか気にしないという点ですかね?

SUGIZO:僕はそんなにしゃかりきになって売りつけなくても良いのでは!?と思ってしまうんですけどね。でもメーカーはそれをやらざるを得ないわけですよね。そのジレンマの中に僕はずっといる感じです。職種は違うけれど、龍社長の境遇は凄くよくわかります。

インタビュー後編へ続く。

取材/文&写真◎KOTARO MABABE

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◆中津川 THE SOLAR BUDOKAN オフィシャルサイト
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