【インタビュー】minus(-)、1stミニアルバム『D』完成「絶望しかなかった」

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■意図的に派手にした部分は藤井が全部排除していきましたね
■子供が絵を描くみたいな感覚で僕が作ったものだけが残ってる

──10代で初めて出会ったときはお互いどう思ってたんですか?

藤井:僕は彼に出会う前に、彼が作った楽曲が入ったカセットを「こういう音楽をやってる人がいるんだけど」って人づてにもらったんですよ。

森岡:そうなの?

藤井:そうそう。で、聴いてみたら、当時のレコードぐらいのクオリティだったから“これオリジナルじゃないだろ? 僕が知らない洋楽のアーティストの曲をそのままカセットに入れただけなんじゃないの?"って半信半疑ぐらいの衝撃を受けて。

森岡:そうだったんだー。知らなかった。意外です。驚きました。僕のほうは、会ったことのないジャンルの人間だったので“何だ、コイツは?"って、気になって気になって仕方なくて。乗り気じゃなかった彼をムリやり「バンドやろうよ」って誘ったのがSOFT BALLETの前のバンド。SOFT BALLETを組むときもどうしても藤井が必要だと思ったので必死で誘って。

──藤井さんは一緒にやる気があまりなかった?

藤井:音楽的にはすごいと思ってたんですけどね。

森岡:じゃあ、人間的に(笑)?

藤井:いや。当時は本気でバンドというものに参加するつもりがなかったんですよね。

──なるほど。相当長い付き合いで、ここに来てまた一緒にユニットを組むのは不思議な感覚もありましたか?

藤井:出会ってから31年ですからね。

森岡:SOFT BALLETをやってる期間がいちばん長かったんだけど、出会った頃に戻った感覚がありますね。SOFT BALLET時代(1986年~1995年)はあまり仲が良くなかったので。

──藤井さんと森岡さんの関係がピリピリしているっていうのは当時有名な話でしたが、それは本当だったんですね。

森岡:いろいろな要因があったと思うんですけどね。逆にピリピリしてたからこそ良いものが生まれたとも思うし。

──緊張感がいいふうに作用して。

森岡:今はそういう感覚はまったくなくなってフラットになっているから、健康的な状態なんじゃないかと。

──minus(-)というユニット名はいつ付けたんですか?

藤井:そもそもは復帰する1年ぐらい前にプチ復帰の予兆みたいなものがあって。「ライブやらない?」って話が来たことがあったんですよ。“ソロでやるのはちょっとなぁ。誰かとやるなら森岡賢かな"と思ったのが2013年の8月で、そのときに一緒にminus(-)という名前も浮かんでました。ただ、そのライブは流れたので、お茶を飲んだときに「minus(-)という名前で、ライブをしよう」っていうところから始まったんですよ。

──minus(-)という名前の由来は?

藤井:由来は(藤井)麻輝の“m"に森岡賢の“けん(犬)=inu"っていうところから(笑)。アルファベットにしたらminusだっていう。

──プラスマイナスとは関係ないんですか?

藤井:ないですね。

──ちょっと変な言い方になってしまうかもしれないんですが、1stミニアルバム『D』は聴いていてテンションが上がったり下がったりしない感じが個人的に非常に好きで。心地よくて何回も聴きたくなるんですよね。

藤井:僕が音をまとめたときのコンセプトがフラットに回転していく感じだったので、そういうふうに言っていただけると成功だなって感じですね。

──なぜ、フラットにしたかったんですか?

藤井:サビでいきなり大仰になるとか、そういうムリやり感が今、キライというかダメなんですよ。あるべきものがあるべきところに収まるのが今は気持ちいい。だから、作為的なものはどんどん削ぎ落としました。

森岡:意図的にポップにしようとしたところや、派手にした部分は藤井が全部排除していきましたね。だから、子供が絵を描くみたいに“ここは赤で塗ろう"みたいな感覚で僕が作ったものだけが残ってるんです。結果、極上のアンビエントミュージックができたと思います。

──1980年代のエレクトリックミュージックの匂いも入ってますね。

藤井:生まれたのが1960年代でいちばん盛んに聴いていたのが'1980年代~1990年代の音楽だから血肉になってるエレポップの要素は当然入っちゃってると思うんですけど、いわゆる1980sのリバイバル的な音作りは一切してないので、ジャンル分け不可能な新しい形のアンビエントだと思いますけどね。ビートも入ってるしボーカルも入っているけれど、リスナーが受け取る感触としてはそうなんじゃないかなと。

──温度感が落ち着くというか、まさにフラットになれるというか。いろいろ想像して聴ける曲たちですね。

藤井:音楽ってそもそも“こういうものだよ"って提示されて聴くものじゃなくて、受け手が自由に感じるものなので、好きに楽しんでください、っていう。真っ黒いアルバムだと思う人もいるかもしれないし、救いのあるアルバムだと感じる人もいるだろうし、僕自身は音楽にそんな大それたパワーがあるとは思っていないタイプなんですけれど、確実に感情のトリガーにはなると思っているので、そんなアルバム。

──そもそもピアノがマストだったということですが?

藤井:マストですね。生であろうがサンプルであろうが。

──ちなみにドラムやベースなど、生楽器が入っている曲はありますか?

藤井:一切排除しました。今回のコンセプトの中に“生"っていう概念が自分の中になかったんです。だからこそ『D』って名付けたわけで。

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