【インタビュー】家入レオ「人は愚かだから愛や優しさの意味に気づけるんだと思う」

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「純情」に続く家入レオのニューシングル「Silly」がドラマ『Nのために』の主題歌としてオンエア中だ。大切なものを守るために揺れ、翻弄されていく人間の姿を彼女は愛おしさをこめて“Silly=愚かな”という言葉で表現した。これまでとは趣を異にする深みのある大人なバラードには、20才を目前にした家入の心境の変化も刻みこまれている。“愛”を求めて、嘘偽りのない音楽を発信し続けてきたからこそのリアル──。どんどん価値観が壊れていくという彼女の発言に底知れない可能性を感じた。

◆家入レオ~拡大画像~

■タイトルの“Silly”は“ばかげた”とか“愚かな”という意味だけど
■愚かさは愛おしさでもあるし人間らしさでもあるということを表現したかった


▲「Silly」初回限定盤A
▲「Silly」初回限定盤B
▲「Silly」通常盤

──TBS系金曜ドラマ『Nのために』の主題歌でもある「Silly」は、イントロから憂いのある家入さんのヴォーカルに移行する流れからしてグッとひきこまれました。この曲が出来たいきさつから教えてください。

家入レオ(以下家入):ドラマ主題歌の話をいただいたときは(原作の)湊かなえさんの小説をデビュー前から拝読していたので、すごく嬉しかったんです。主人公たちは大切なものを守るために嘘や罪を重ねていくんですが、そこで感じたのは普通に考えたら守ることと罪を犯すことは対極にあるけれど、ときにそれをイコールで結んでしまうのが人間の切なさであり、愚かさなんじゃないかなって──。タイトルの“Silly”は“ばかげた”とか“愚かな”という意味だけど、突き放して言っているわけではないんです。愚かだからこそ、人は学べる生き物でもあるし、最初から完璧だったら、愛や優しさの意味にも気づけないんじゃないかと。愚かさは愛おしさでもあるし、人間らしさでもある。そういうことを表現したいなと思って、西尾プロデューサー(作曲の西尾芳彦氏)に伝えて曲を作っていただきました。

──家入さんの中の明確なイメージを伝えて曲が完成していったという流れですね。

家入:はい。曲が出来上がってから、歌詞をより深く突き詰めて書いていきました。

──非常に大人な世界観の曲でもありますよね。

家入:そうですね。“難しいことが多すぎる愛”という歌詞で始まるので“恋愛について歌ってるのかな”って感じると思うんですが、実はサビでは“Oh It's so silly 何かを求め 確かめたくて今日を生きてる“って透明なことについて歌っているんです。以前の私だったら、“何かを求め”のところは“愛を求め”って書いていたと思うんですよね。実際、デビュー曲「サブリナ」では“本当の愛を求めて”と歌っていたし、「Bless you」という曲でも“愛なんていつも残酷で”と歌っていたし──。でも、最近、“自分を満たしてくれるものって何なんだろう?”って考えたら、以前は愛があれば満たされるって思っていたけれど、その愛をも包みこむようなもっと大きなものを私は求めているんじゃないかって思ったんです。それがどんな大きさでどんな温度のものなのかはまだぼやけているから“何か”っていう表現をしたんですけど、漠然としているのに前よりも“愛”について歌っている感覚が強くある曲ですね。

──愛があれば満たされると思っていたのが「そうじゃないのかも」と思ったキッカケは何だったんですか?

家入:うーん……だからと言って今が不幸せなわけじゃないんですけどね。私は13才のときに音楽を始めたんですが、そのときは“これで生きていきたい”と思っていて、音楽があるという状況だけで満たされていたんです。でも、この数年はいろんな人に支えてもらって恵まれた環境にいるのにどこか乾いていて満たされていなくて、“どうしたら私、この先に満たされたと思う瞬間があるんだろうか?”って──。そういう乾いた気持ちを誰かに歌で伝えるときに“愛”という表現がいちばんわかりやすかったから使っていたのかもしれないって自問自答に陥っちゃって、だから、正直、すごく迷ったんです。デビューしてから、ずっと“愛を求め”って歌っていたのに“何か”に変えてもいいんだろうか?って。でも、嘘をつかないということがデビューしてからの私の信念の1つなので、ここで曲げたら説得力がなくなるなと思ったんです。

──でも、結果、前より“愛”について歌えたんじゃないかという実感があったんですよね。

家入:そういう感覚はありました。もちろん、まだ19才なので経験は浅いですけど、年を重ねるってこういうことなんだなって、ちょっとだけ分かった気がしました。

──“騙せるのなら 現実なんて 必要じゃない”という表現がとても気になったんです。この騙せるというのは?

家入:自分自身のことです。小学校のときに“嘘をついたらいけません”って教えられると思うんですが、まわりに迷惑がかかるからダメというよりも嘘をつくと肝心なときに自分自身のことが信じられなくなるんですよね。それでも、自分のことをかなぐり捨ててでも信じたいものや守りたいもの、すがりたい何かがあるというのは、とても甘美な響きがあるなと思って、こういう歌詞を書いたんです。特に女性って「この人のために生きたい」願望が強い生き物ですよね。恋するたびに七変化する女のコを見ていると悲しいと思う反面、美しいとも思うから、愛に囚われている女性の姿を描いたんです。

──相手にふりまわされている部分もひっくるめて、愛おしさを込めての“Silly”?

家入:そうですね。牢獄から見える光じゃないですけど、愚かだから生きられるって、すごく重い真実だなって。だからこそバラードを歌いたかったんです。自分の経験に基づいて痛みだったり求めているものを歌ったのが今までの曲なら、この曲ではひとりの人間として生まれてきた切なさを歌いたかった。だから、筆圧強くというより、一歩退って。

──俯瞰で歌っているという。ファンのリアクションは?

家入:ライヴで初めて歌ったときに今まで体験したことのない震動みたいなものがステージに感じられて、ウワーッと思いましたね。

──その震動って?

家入:“家入にもこういう一面があるんだな”っていうか。歌い終わったあと一瞬、静まりかえったんですよ。「あれ?」と思ったら、拍手が来て、すごく不思議な感覚がありました。

──ビックリした人も多かったのでは?

家入:でしょうね。「大人になってるんですね」という声ももらったりとか。

──ミュージックビデオのエピソードは?

家入:雨の中、私が傘をさして平然と歌っているんですけれど、心には熱いものを秘めて何かを必死に求めている姿を後ろで踊っているダンサーさんたちが表現してくれているのを感じてもらえたらなと。とても奥行きのあるミュージックビデオに仕上がりました。撮影中は私が歌っている中、スタッフさんが梯子に昇って雨を降らせてくれたんですけれど、絶対、手が痛かったんじゃないかなって。

──きっと、ぷるぷるしちゃってたでしょうね。

家入:そう。ダンサーの方もびしょ濡れになりながら踊ってくださって、「ありがとうございます」って思いながら歌ってました。

──ミュージックビデオは監督さんに委ねるんですか?

家入:事前に曲の解釈を私から伝えて、何パターンか出していただいた上で、スタッフさんと話し合いながら“これで撮りましょう”って。

──綿密に打ち合わせした上で作ってるんですね。

家入:そうですね。ミュージックビデオって解釈がズレると全然、曲と合わなくなってしまうから。それはすごくもったいないと思っているので、いつもイメージは伝えます。

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