【インタビュー】長澤知之、企画盤シリーズ第三弾完成「自分にとって何が美しいか」

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■無気力症候群のときに明るく生きようという音楽を聴く気になれない
■そういう人たちがつまらない人間かのようになっているのが好きじゃないんです

──アグレッシヴなバンド・サウンドの「シャウト」は、かなり衝動感たっぷりですね。この曲はどんなふうに作られたんですか?

長澤:「シャウト」はさっき話したことまんまがその歌詞で。日常でシャウトをするっていう状況がみなさんどれだけあるのかわからないですけど、俺は結構、過去のことを“ああ、あんなこと言わなけりゃよかったのに”って思い返して。きっとこのインタビューの後も“うわー!”とか言っちゃうんですけど(笑)。

──そうなんですか(笑)。

長澤:でもすごく素直な感情だと思うんですよね。人間たる歌い方がシャウトだと思うので、コーラスと考え方は似ていますね。僕は、最近の日本人が嫌いで。なにが嫌いかって言ったら、あまりに楽観的で楽天的に物事を考えていて。そういうふうに生きていく姿勢とか文化が好きじゃないんですね。うわー!っていう躍動感がほしいなって思う時があるんです。

──サウンド面でも、そういう反抗心みたいなものから築き上げていくということもあるんですか?

長澤:迎合したくない気持ちがあるからそうなっちゃうんだと思います。けど、それが金になるかって言われたらそういうわけでもなし(笑)。でも自分にとってなにが美しいかがはっきり見えているせいで、厄介なことにそっちを選んでしまうんですよね。僕にとって、美しいと思わないものがポピュラリティなんです。そうすると日本文化が嫌いで、今ある音楽が嫌いなんですよね。

──現在のシーンに溢れるポジティヴソングとか。

長澤:そう。自分が無気力症候群になってるときに、明るく生きようという音楽を聴く気になれない。そういう人たちが聴ける音楽がありゃいいのにって思うし、その人たちがつまらない人間かのようになっているのが好きじゃないんです。そうなると、自分がやりたい音楽をやっていれば、好きな人はついてきてくれるだろう、じゃあその人たちを愛そうとなって。反抗心というよりは、自分の道を選んだにすぎないという感じです。

──今作ではいろんな録り方で聞こえ方も変わったりと、試みのある作品になりましたが、これまでもレコーディングへのこだわりはあったんですか?

長澤:ここまでマイクを変えるようなことはなかったですね。

──長澤さんの好きな、ビートルズやビーチ・ボーイズも然りですが、実験的なレコーディングやスタジオ・マジックを大事にして、作品へと封じ込めてきたバンドでもありますよね?

長澤:そうですね、当時は新しいことをしやすい時代だったんだと思うんです。それを求める人たちも多かったし、また新しいことをしたぞってワクワクするような時代背景もあったと思う。自分も2010年代の今やって思うことは、これは自分のやりたいことで、これはきっと美しいものなんだって思ってないとただの自己満足になってしまう。そうならないように、聴いてくださる方々の反応は大事だなと思ってます。

──レコーディングとしては、今は機材もソフトも充実した時代にもなって、いろんなことが簡単にもできるようになりました。そこで、こういった録音方法で作品を作るチャレンジ精神というものもあったのでしょうか。

長澤:ありますね。例えば今だと、ちゃんとしたスタジオでギターを弾いて、それをマイクで拾って録らなければレコーディング成立しないということはないですよね。もっと安くできるし、ひとりでもできる。だけれども、これは勝手な自分の予想と希望も入るんですが、大局的に見たとき、それが30年後同じように続いているかって言ったら俺は怪しいと思うんですよね。なにを真面目にやって、なにが美しいと思って、確信に迫っていたやつがいるかっていうことを客観的に見たとき……まあ、努力は報われるとは言いませんが、素敵なものは報われると思うんです。

取材・文◎吉羽さおり



『長澤知之III』

11月25日(火)発売
ATS-55 2300円(税込)
1.只今散歩道
2.享楽列車
3.バニラ
4.犬の瞳 ※Binaural Recording
5.シャウト
6.そこ
7.宛のない手紙たち ※Binaural Recording at 506号室
8.そこぬけ
9.いつものとこで待ってるわ ※Binaural Live Recording at 月見ル君想フ 2014.7.29
※バイノーラルレコーディング(Binaural Recording):ダミーヘッドと呼ばれる人間頭部模型の外耳口部分にマイクをセッティングするより、人間の聴感に非常に近い臨場感溢れるステレオ音声を録音する方式。バイノーラル効果を得る為にはヘッドホンやイヤホンでの視聴が必要。
※今作は一般流通での販売は予定しておりません。※11月14日から行われる<“IN MY ROOM”TOUR 2014>で会場先行販売。
※11月25日よりAugusta Family Clubにて販売開始。購入者特典として「長澤知之」シリーズ3作のジャケットステッカープレゼント

・iTunes https://itunes.apple.com/jp/album/zhang-ze-zhi-zhiiii/id940321765

◆長澤知之 オフィシャルサイト
◆長澤知之 オフィシャルfacebook
◆Augusta Family Club オフィシャルサイト

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