【ライブレポート】そこにあったのは覚悟とプライド。モーニング娘。'14 道重さゆみ卒業公演

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11月26日、横浜アリーナにて開催された<モーニング娘。'14コンサートツアー秋 GIVE ME MORE LOVE ~道重さゆみ卒業記念スペシャル~>ファイナル。同公演をもって、道重さゆみがモーニング娘。およびハロー!プロジェクトから卒業した。

◆<モーニング娘。'14コンサートツアー秋 GIVE ME MORE LOVE ~道重さゆみ卒業記念スペシャル~>ファイナル 画像

いまや世界的にファンを持つモーニング娘。'14。そんなグループを率いてきたリーダー・道重さゆみの卒業とあって、全国32会場48スクリーンおよび海外3か所でライブビューイングを実施。また会場となった横浜アリーナには、日本全国、そして世界から1万2000人のファンが詰めかけた。客席には、中澤裕子、飯田圭織、保田圭、石川梨華、高橋愛、小川麻琴、新垣里沙、藤本美貴、久住小春、田中れいな、そして同期であり親友でもある亀井絵里といったモーニング娘。OGの姿や、Berryz工房、℃-ute、スマイレージ、Juice=Juiceといったハロー!プロジェクトの後輩たち、真野恵里菜や田中将大 投手&里田まい夫妻、自身も2日前にアイドリング!!!を卒業した菊地亜美や、ハロー!プロジェクト大好きな柳原可奈子の姿も。そして、再度の手術を経て退院したつんく♂プロデューサーも、その瞬間を見守っていた。

オープニング。花道を颯爽と歩くモーニング娘。'14の10人。そのまま「TIKI BUN」「わがまま 気のまま 愛のジョーク」と、ヒットチューンを披露して会場を最初から盛り上げる。ちなみに、横浜アリーナの1万2000人、後ろの後ろまで超満員である。

幻想的なステージの「時空を超え 宇宙を超え」に続く「Do it! Now」で、各ソロパートで発生するひとりひとりへ向けたコール。この日、モーニング娘。のコンサートでは最後となる「さゆみ」コールも、ひときわ熱を帯びる。そして、未来行きの切符を手に、夢は絶対叶うと背中を押すメッセージは、道重さゆみのためにあるようでもあり、残されるモーニング娘。のメンバーに送るようでもある(さらに言うと、約束の口づけは原宿ではなく、ここ横浜アリーナにあったわけだが、それは「彼と一緒にお店がしたい!」での話)。

最初のMCにて、道重さゆみ卒業のモーニング娘。の新体制、すなわち、新リーダーおよびサブリーダーが発表される。道重からアナウンスされた新リーダーは、これまでサブリーダーを務めていた譜久村聖。そして、サブリーダーには、引き続き飯窪春菜の名前が呼ばれる。

サプライズはここから。「そして、なんともう一人サブリーダー! いきますよ。」と、期待感を煽って、道重さゆみが呼んだ名前は、なんと生田衣梨奈。一気にどよめきとなぜか笑いに包まれる会場。そして3人から、あらためてファンへの挨拶が行なわれた。

「モーニング娘。史上、一番頼りないリーダーと思われてしまうかもしれませんが、でも、高橋さん、新垣さん、田中さん、光井さん、そして道重さんに教わったことは、誰よりも自信があります。道重さんのように背中で語ることはできないと思いますが、皆で頑張っていくことはできると思うので、精一杯頑張りますので、これからのモーニング娘。をよろしくお願いします!」── 譜久村聖

「引き続きサブリーダーとして、そして今後は一人の二十代として、私なりにメンバーを支えられるように一生懸命努めたいと思います。よろしくお願いします」── 飯窪春菜

「誰もがウソ?って思ったかもしれませんが、これが現実です。皆さんが想像する以上のモーニング娘。を作っていきたいと思います。」── 生田衣梨奈

新体制の発表とともに、序盤の大きな盛り上がりとなったのは「彼と一緒にお店がしたい!」でのワンシーンだろう。<家族のみんな大好きだけれど>と歌う鞘師里保の唇を道重さゆみがキスで塞ぐという暴挙に出る。「家族のみんな大好きだけ……んっ」と、歌えなくなる鞘師里保(16歳)に、大変ご満悦な道重さゆみ(25歳)。なお、続くMCパートで「こんな大勢の前での、公開りほりほへのキスは、とーっても気持ちいいでーす! これでさゆみ、悔いなく卒業することができます。」などと供述していた道重だった。

さて、このMCパートでは、ゲストとして歴代モーニング娘。リーダーを代表して中澤裕子と、ハロー!プロジェクト次期リーダーに就任する矢島舞美、そして同期を代表して田中れいなが道重の卒業に花束を持って駆けつける。

「みなさんの熱気と声援を後ろで聴かせてもらってましたけど、こんなに素敵な卒業式してもらえるなんてねー! ずーっと今日まで頑張ってきた結果だから、今日、ほんとシゲさんのためにみんながここに集まってるの。みんながシゲちゃんのためにここに集まってピンクのサイリウムを振ってくれてるわけよ! だからもう何曲か終わっちゃってるけど、一秒一秒をほんと大切に。二度とこの時間は戻ってこないので、悔いのないように笑顔いっぱいで」と、中澤。すると道重は、「中澤さんなんでそんな優しいんですか?」と大きな瞳を潤ませながらもツッコミ。これに中澤が「私もね、ほんとは優しいんだよ?」と、笑いに変えていく。もっとも、そんなやりとりの中にも先輩後輩を超えたモーニング娘。の絆を感じさせる。

「私は(ハロー!プロジェクトの)新リーダーになるわけですけれども、道重さんみたいに、みんなから“ついていきたい”って思ってもらえるようなリーダーになりたいと思っています。道重さんが卒業したあとも、道重さんの大好きなハロー!プロジェクトをもっともっと大きくしていけるように頑張ります。」と、誓いを立てる矢島舞美に、「でも矢島ちゃんなら大丈夫だよ。さゆみより全然性格いいし。」と、道重は笑顔を見せる(さらに矢島が、性格が悪いと自ら位置づけている道重の“裏の顔”を暴露しようとするも、「恥ずかしい」と、道重に止められる一幕も)。

「さゆー!」「れいなー!」と、最初から抱き合った、同期・田中れいな。「ほんとに同期かなとか思って。あん時のさゆ信じられんとか思って。あのさー、合宿でさー、「にゃーお」って言っとったの覚えとぅ?」と、オーディション合宿での道重エピソードを引き合いに出して会場を沸かせる。さらに、「今こうやってモーニング娘。'14のリーダーになってさあ、みんなに祝福されて、ほんとすごいなーって思って。モーニング娘。から同期がおらんくなるのは、私ちょっと寂しいけど、でもなんかこう、さゆがね、最後に6期としてリーダーになって、またモーニング娘。どんどんどんどん1位とってさ、今超連続で……」と、語り始めるも、道重が「どうしたれいな、めっちゃ真面目じゃない? れいなってこういう日があるよね。」と、笑いを起こす。そして道重は、前日に田中から長文メールが届いたことを明かし、「すごい長文ですごいいいこといっぱい書いてあって、さゆみがそれ見た時に「え、あの10年前のれいなかな」って。」と、今度は道重が、合宿当時の田中を想像させるトークで切り返して、再度会場を沸かせるのだった。

そんな先輩、後輩、同期からのお祝いを受けて、再度ライブへ。ところが、続くメドレーで、誰もが想像していなかった事態が発生する。

いつ、そうなってしまったのかは定かではないが、異変が起こったのは、「ラララのピピピ」直前。セットに手を付く仕草から、可愛く振り向いた道重さゆみ。そのまま歌い出すも、右足を引きずるようにステージ中央に歩いて行く。そう、この時、道重は足を痛めてしまっていた。

センターステージに飛び出しての「A B C D E-cha E-chaしたい」までは、振りのタイミングで若干心配そうに道重に目をやっていたメンバーたちも、「ワクテカTake a chance(updated)」で完全に覚悟を決めたかのように、フォーメーションを崩すことなく怒涛のパフォーマンスを展開していく。そして、その様子をひとり、メインステージに残って愛おしそうに見つめながら歌う道重。以前、「TIKI BUN/シャバダバ ドゥ~/見返り美人」のリリースイベントにて、報道陣から「卒業した後も、モーニング娘。は大丈夫?」と訊かれた彼女の姿が、ふと思い出される。「大丈夫だから卒業するんです。」と、即答した、彼女の姿が。

「好きだな君が」前に、メインステージに残る道重の元に全力疾走する譜久村聖。この辺の演出がリハーサルではどんなふうになっていたか、本来はどうだったのか、などと、余計なことは考える必要はまったくなく、それは11月26日の横浜アリーナでの卒業公演における、見事なまでのモーニング娘。'14のステージ。「LOVEマシーン(updated)」では、足の痛みから立っていられなくなるも、それでも彼女はセットに腰を下ろしながら、それでも笑顔でパフォーマンスすることをやめない。それは、痛みに顔を歪めることなく、可愛いままで卒業したいという道重さゆみの頑なまでのプライドなのだろう。

本編ラストは「Be Alive」。直前のMCで、道重は思わず唇を噛みしめる。その胸に去来するのは、自分の最後のステージに対する寂しさだったのか、それともアクシデントで納得いく形でのパフォーマンスを見せることができなかった悔しさだったのか。奇しくも、センターで大粒の涙をこぼしながら歌う彼女の周りには「君を守る」と歌い、道重からのバトンを明日に繋ぐ、頼もしくなった後輩たちの姿があった。

一面ピンクに染まった客席と「さゆみん」コールに包まれる横浜アリーナ。アンコールは「見返り美人」から。道重以外の、先日加入した12期メンバーを含む13人によって歌われるこの曲。ステージ上に、着物姿の道重さゆみが姿を見せると、その美しさに地鳴りのような歓喜の声が発生する。ひとり花道を歩く道重と、その背中に向けて歌う後輩たちという構図から、道重卒業の瞬間がもうすぐそこまできていることを知ることになる。

そしてついに卒業セレモニーが始まろうとした時、道重は暗転を要求、ステージ上にうずくまってしまう。(たとえライブ本編では気が付かなかったとしても)ここで誰もが道重の異変に気づき、そしてどこからともなく「さゆみん」コールが自然発生する。それしかできない、しかし、それをせずにはいられない。まるで、彼女が愛情をもってモーニング娘。を我々に届けてくれた時のように。

オーディエンスの想いを受けて、道重さゆみは再び立ち上がる。そして、やはり笑顔を見せるのだ。

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