【倉木麻衣×BARKS連載対談】第九回(2013~2014年)「まさに一期一会だと思います」

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■子供たちといえば、希望じゃないですか。未来があるじゃないですか
■その子たちにより良い世界を作ってほしいという気持ちになりますよね







▲<ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 松島 2013>(2013.10.9)

西室:伊勢神宮への歌の奉納と同じ時期に松島の小学校を訪れて小学生とお話したのも、ひとつのきっかけにはなったかなと思いますね(2013年9月27日から10月14日にかけて開催されたプロジェクト<ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 松島 2013>)。

倉木:子供たちにとって震災は心の傷になっているので、音楽で癒しを感じてほしいという思いで、先生という形で行かせていただいたんです。それも自分の中で気持ちがどんどん上がっていくきっかけになってますね。そのあと、小学生たちからお手紙が届いたんですよ。「chance for you」をみんなで歌ってくれたCD-Rも入っていて、それを聴いてスタッフみんなで号泣して、“やっぱり音楽にはすごい力があるんだな”と。私がみんなと触れ合うことで、みんなの笑顔につながっているんだということを実感すればするほど、気持ちが少しずつ上がってきたんですね。

烏丸:ピュアな子供たちと触れ合うことで、デトックス的な感じもあったのかな。

西室:子供たちの歌声は本当にピュアのかたまりというか、伝わるものがすごく大きかったんです。子供たちの歌を聴きながら、“こんなことやってる場合じゃないよね、私たち”みたいな話をしましたね。

烏丸:大の大人が、ちっちゃな子供たちに教わることはいっぱいありますね。

倉木:そうですね。やっぱり一番は、人とのつながりが自分自身を高めてくれるものなんだということは感じますね。今までやってきて。

烏丸:そして2014年は、カンボジア(国際協力広報プラットフォーム『なんとかしなきゃ!プロジェクト』)に行かれましたよね。











▲『なんとかしなきゃ!プロジェクト』の一環でカンボジア訪問(2014.3)

倉木:はい。<“RE:”プロジェクト>をやっていく中で、ソーシャル活動をやられている方と出会って、カンボジアのことを知ったんです。

西室:学校に通えない子供たちのために、日本が支援して寺子屋を建てる活動をしているんです。

倉木:私が音楽の先生になってみんなに笑顔を届けようと思って、行ってきたんですけども……実際に行ってみないとわからないことはたくさんあるんだなと思いました。私が持っていたカンボジアのイメージとして、いろんな意味で不便なことも多いだろうなと思っていたんですけど、やはり行ってみたらお水も普通に飲めないし、何から何まで大変でした。

西室:水道もないんです。日本人にとっては当たり前のものがない。

倉木:衛生環境が整っていないので、妊婦さんの出産率もすごく低いそうなんです。ポル・ポト政権時代に知識人が大量虐殺されたせいで、今もお医者さんや学校の先生が全然いないので。

西室:当たり前のことを教える人がいないんです。出産のためにはきちんと栄養をとらなきゃいけないとか、そういうことから始めないといけない。

烏丸:それは、相当なカルチャーショックを受けますね。

倉木:ストリート・チルドレンもたくさんいて、みんな生きるのに必死なんです。車に乗っている時に、本当はあげてはいけなかったんですけど、あまりにもかわいそうで、スタッフの方がお金を窓からあげたら、みんなが集まってきて、お金を取り合って、最後にはリーダー的存在の子がそれを巻き上げて。そういう現場を見ると、本当に難しいことだなと思います。ただ、そんな過酷な状況の中でも、カンボジアの人たちは笑顔を忘れないんですよ。シェムリアップというところに行って、小学校1年生ぐらいの女の子と男の子のおうちを訪ねて、実際に生活しているところを見せてもらったんですけど、昔の高床式住居のようなおうちで、家畜を飼って、その敷地内で生活してる。外に行っても仕事はないから、毎日お母さんの手伝いをしてから学校へ行って、帰って来たらまた手伝いをして。その子たちに“どんな時が幸せ?”って聞いたら、“お母さんの手伝いをしている時が幸せ”って答えたんですよ。私が小学校1年生の時は、友達と遊んだりゲームをやったりしてたけど、この子たちは……と思ったんです。だけど、その環境の中で幸せということは、この子にとっては幸せなんだろうなと。何が幸せとか比べちゃいけないんだって、改めて思いました。そういう環境の中でも子供たちは元気だし、“私がやってあげなきゃ”ではなくて、本当に大切なことをそばで支えてあげることが大事なんだなと感じて帰ってきました。

烏丸:なるほど。

倉木:日本からボランティアで来ている方たちともお話したんですけど、みなさんおっしゃるのは、大変だけど楽しいって言うんですね。カンボジアの人とつながれるのがうれしいって。だからお互いに笑顔と元気を交換しているんだということを、すごく感じました。それは音楽にも通じるところがあるなと思って、子供たちに向けて曲を作りたいと思いましたし、ひとりでも多くの人に支えあうことの大切さを伝えて、お互いがお互いのヒーローでありたいという思いを書いたのが「STAND BY YOU」なんです。

▲「chance for you」収録アルバム『FUSE OF LOVE』(2005.8.24)

西室:倉木がカンボジアで音楽の授業をした時に、私も行かせていただいたんですけども、「chance for you」をクメール語に訳しておいて、一緒に歌う準備をしていたんですよ。そもそも子供たちは音楽の授業を受けたことがなくて、歌もそんなに歌ったことがない。それが倉木と一緒にクメール語の「chance for you」を、すごく一生懸命歌っていたんです。私はそれにすごく感動しました。音楽には国境がないなということを肌で感じました。あの子たちが大きくなって、子供の頃に日本人のお姉さんが来て歌の授業をしてくれたなって思い出す、それを思うと熱い気持ちになってしまって。

倉木:子供たちに将来の夢をたずねると、先生やお医者さんが多いんですね。なぜかというと、それしか知らないということもあるんです。選択肢がすごく少ないんですけど、音楽の授業をやったあと、子供たちに“夢は何ですか?”と聞いたら、歌手になりたいとか、楽器を弾く人になりたいとか、そういう子がいたんです。

烏丸:それはいいですね、とても。

倉木:いつか、音楽の授業のある寺子屋を現地に作りたいです。子供たちといえば、希望じゃないですか。未来があるじゃないですか。その子たちにより良い世界を作ってほしいという気持ちになりますよね。

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