【新人大特集】フェスで斬る、2014年に来た&2015年に来るニューフェイス

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【水曜日のカンパネラ】
2012年に初のデモ音源「オズ」「空海」をYouTubeに配信し、始動。当初はグループを予定してこのユニット名が名付けられていたが、現在は、この女性「コムアイ」がボーカルなどの表立った活動を、Kenmochi Hidefumiが曲作りを担当している。桃太郎、千利休、ドラキュラ、マリー・アントワネット、ゴッホ、インカといった謎のテーマと秀逸なエレクトロサウンドの化学反応が面白い。意味があるのかないのかもよくわからないシュールなリリックも、一筋縄ではいかないという水曜日のカンパネラの魅力に奥行きを与えている。泉まくらといった脱力系女性ボーカルエレポップが好きな人、もしくはこのコンセプチュアルな音楽性はレキシの女性版のようではないかと少しでも気になった人は、完成度の高いミュージックビデオが色々アップされているので予習してみて欲しい。そして、そんなミュージックビデオの数々で見せるコムアイのなりきりっぷりのよさは、女性アーティストに不可欠な女優力を思い切り感じさせてくれる。「自己」に固執せず、1曲1曲の世界観を表現しようとする表現者としての高い意識や、渋谷駅から渋谷WWWまで移動型のゲリラ路上ライブを決行する実行力など、水曜日のカンパネラというひとつのプロジェクトにはアート性を感じる。トラックがいいから玄人好みの音楽のようだが、幅広い層がオモシロがってくれそうだし、これをメガフェスで観れたら痛快。

【Ykiki Beat】
Ykiki Beat(ワイキキビート)は2012年に結成、2013年12月にBand Camp上でEP『Tired Of Dreams』を発表するという現代らしいD.I.Yな音楽活動を行ってきた5人組だ。年齢も若く平均年齢20歳そこそこ。2014年末のThe Drums来日時にはオープニングアクトもつとめていて、音源を聴いてもらえれば一発でわかるが、海外のシーンとシンクロした音楽性を持つ。道筋が文化的だし世界観もお洒落だが、そういう雰囲気のよさではなく、彼らの曲のよさを知って欲しい。この「Forever」は特に名曲で、ギターやシンセといった上モノの音のハリや、ビートのアタック感と抜け感の気持ちよさからは、音へのこだわりが絶対に伝わってくると思う。そして、何がなんでも野外で聴いてみたいこのスケールの大きな歌のメロディは、トレンドなど度外視だ。2015年は、早くも研ぎすまされている彼らの洗練されたフロンティア精神に注目して欲しい。

【NOWEARMAN】
2014年の<NANO-MUGEN>や、前述した<LITHIUM ROCK FESTIVAL>にも出演している3ピースバンドNOWEARMANは、フェスの出演で知名度がアップするというロールモデルだろう。さらに、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文によるレーベルonly in dreamsから、後藤プロデュースによるアルバム『MAN NOWEAR』のリリースもしている。第一印象としては、本人が影響を受けていると公言しているベルベット・アンダーグラウンドを想起するリスナーも多いと思う。この3人の美意識は、メロディのリフレインや、音像の中に作られている隙間による「余韻」や「間」が生む高揚感や構築美にあると思っている。それがとてもクール。音数が多くてバンド演奏も団子状になりながら展開していく音楽が多い今のシーンで、この引き算の美学は光って見える。

【NATURE DANGER GANG】
ライブのメンバーは平均8人から10人で構成され、ボーカルとラッパーは5人ほど、他にもドラム、サックス、ダンサーなどからなる。場面でDJ、メタルパーカッション、マンガ家がいる時もある。これまた突飛なパンクバンド「どついたるねん」のファンによって2013年に結成、都内でライブ活動を行っており、2014年には細野晴臣とOGRE YOU ASSHOLEらも出演したエンタメフェス<YEBISU MUSIC WEEKEND>にも呼ばれている。ハードコアやパンクに、レイブ感をプラスしたような音楽性。だがそのステージングを紐解けばそれは、レペゼンであり、地下アイドルのお披露目風であり、Chim↑Pomのような即興芸術であり、お笑い芸のネタ見せのようでもある。と、要素はかなり支離滅裂だが、それらすべてがビートというひとつの軸の上でまとめあげられており、「音楽ってすごいなぁ」と妙に感心してしまう新鮮な刺激を覚えた。それは皮肉でもなんでもなく、実際にSoundCloudに上がっている曲から彼らの音楽の純粋なよさがわかるはずだ。ATARI TEENAGE RIOTのようにサウンドはヘヴィ、渋さ知らズのように大所帯ならではの全方位型の狂騒を生み、初期の暗黒大陸じゃがたらのようにパフォーマンスは過激で斬新だ、と表現したら過大評価かもしれないが、2015年のフェスでNDGの名前を見かけたらそのステージに試しに近寄って欲しい。

【宇宙コンビニ】
ポストロックと歌謡が非常に高いレベルで見合っている、ハイブリットな音楽。楽器はアシンメトリーな配音をし、バンドアンサンブルには緊張感があり、音楽的なインテリジェンスの高さを感じる。だが、譜面というものがこのバンドには存在しないような自由な音の出し方は、ジャズの演奏にある狂気も感じさせ、本能がものを言う音楽のようでもある。どちらにせよ、宇宙コンビニの音楽にはとても感覚が研ぎ澄まされていく。加えて、絶妙に不安定な揺れ方をするこの女性ボーカルである。YUIやチャットモンチーのように、女の子らしい声質が、か弱さではなく芯の強さを連想させる歌声だ。だが、しかし。2015年1月19日に宇宙コンビニは突然解散を発表してしまった。これからどこかで「宇宙コンビニ」の名前を聞いたらぜひ反応して欲しいという気持ちを込めて、今回のラインナップに入れさせてもらった。

【感覚ピエロ】
2013年7月に結成した直後に自主レーベル「JIJI RECORDS」を設立し、通算4枚のアルバムをリリース(ライブ会場&通販のみの販売にも関わらず全て完売)している4人組。速い&盛り上がるという要素はKANA-BOONやキュウソネコカミの系譜を受け継いでいると感じる。すでに<MINAMI WHEEL>や<RADIO CRAZY>ではすべて入場規制がかかるほど話題を呼んでいるが、そりゃそうだの自己プロデュース力とシーンに対する批評性を備えている。都市伝説の「メリーさん」をモチーフにしたり、「O・P・P・A・I」という連呼だったり、見せ方をわかり尽くしている完成度の高いそのミュージックビデオからも、一瞬コミックバンドかと思う。フェスのステージでも盛り上げ上手なんじゃないかな。だが、Jポップや現在の風潮に牙を向く「Japanese-Pop-Music」はロックバンドの誇りを楽曲をもって示すかのように、演奏がカッコイイ。「メリーさん」も「O・P・P・A・I」も原理は同じで、どんなテーマも彼らはロックで調理してしまう。奇をてらっているようでいて最終的にエモーショナルに訴えかける楽曲は、ロックバンドとして王道を行っている。

【ジラフポット】
彼らにとって、ロックミュージックとは最後の一手なのだということがよくわかる。それだけの熱量が3人からはっきりと聴こえてくるからだ。Gt&Vo中野大輔、Dr&Cho原田さん、Ba&Cho関からなるジラフポット。まさに息つく暇もない、そんなことさせない、怒涛のアンサンブルだ。太くてしっかりと黒いベースとリズム、刺激的な曲展開。上記の最新ミュージックビデオ「Black designer」でもいかんなく発揮されている、伸びがよくファルセットが心に響くエモーショナルな歌声。と、3人のサウンドが飛び交うように音数は多いが、ただカオスを生んでいるだけではない。彼らは単に歌詞からだけでなく、バンドサウンドによって物語や心象風景を描いており、そこにこのバンドが今後どうにでも化けそうだという可能性を感じる。ロッキング・オン主催の<RO69JACK 11/12>に入賞していて、近年は<COMIN'KOBE>や<MINAMI WHELL>に出演。いつ火がついてもおかしくないバンドだ。まもなく2月11日には、タワーレコード数量限定で1st EP『Last Man Standing』がリリースされる。

【赤色のグリッター】
2013年7月に現在のメンバーとなり本格的に活動を始め、それから間もなく12月には<COUNTDOWN JAPAN 13/14>のCOSMO STAGEのオープニングアクトをつとめた。さらに、2014年3月<スペースシャワー列伝JAPAN TOUR2014>の赤坂ブリッツ公演でもオープニングアクトとして出演している。同年6月18日に1stミニアルバム『傘から見た景色』を、続いて11月に2ndミニアルバム『世界は赤色』をリリース。まず、歪みも欲望も純粋な願いも、すべて曝け出す歌詞に耳が行く。歌のメロディもそのような感情のいくままに自由に紡がれ、トーキングスタイルの歌唱もあれば、まくし立てるようにシャウトする瞬間も。均整のとれたギターロック然としたバンドサウンドだと踏んで彼らのステージに寄っていくと、いつのまにかその熱量に取り込まれるほどの吸引力を目の当たりにするはず。

【LILILIMIT】
2012年に山口県で結成、キーボーディストを擁する男女混合の5人組バンド。現在は東京で活動している。緻密なリズム作りとセンスのいい印象的なリフが、聴く者を飽きさせない。そして、この脱力系なのにどこか人懐っこい歌声。毎日の生活の風通しが少しよくなるような、日常に彩りが与えられるような音楽だ。決してその音楽が背伸びをしていない、という姿勢がバンドの魅力だろう。そして彼ら、結成から間もないが、音源を聴き比べていくとバンドとしての成長が著しい。最近の曲では、RADWIMPS以降のミクスチャーロックバンドとしての「音楽の再構築性」も感じられるようになってきている。まだ大きなハコでのライブ経験はないようだが、自身の音源をしっかりとライブでも表現し、さらには5人編成のバンドならではの巨大なグルーヴをステージ上で生み出すことができれば、確実に話題になると思う。2015年2月8日(日)に新代田FEVERにて行われるラストラムの入場無料イベント<Lastrum presents"Strummin' Night>にも出演する。

【fula】
オフィシャルサイトに「専ら“フェスの常連”を目指す」とある、4人組fula(ふら)。サッカーチーム所属時に意気投合した彼らは、ジャムを基調にサーフ・ミュージック、レゲエ、ミクスチャーといった様々な音楽性を「心地よさ」という独自の価値基準のもとでまとめているようだ。邦楽フェスで台頭するジャムバンドといえばSPECIAL OTHERSの名が挙がるが、fulaは、バンドアンサンブルが巨大で強いロック的なグルーヴを生み出すというよりは、それが風通しのいい解放感に向かっていく。2014年は<ETERNAL ROCK CITY. 2014>や<SAKAE SP-RING 2014>、さらには<RISING SUN ROCK FESTIVAL>にもすでに出演を果たしており、確実にステップアップしている。何かを考えさせられる現在の邦楽シーンにおいて、これだけシンプルに体を揺らしてただただ楽しませてくれるというクオリティーを持ったバンドは、珍しくて貴重な存在なのだろう。

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今回の特集がまるでフェスそのもののように、まだ自分で理由はわからなくとも、「いい!」と思える音楽と出会ってもらえる場となったらとても嬉しい。

text by RYOKO SAKAI

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