【ライブレポート】マキシマム ザ ホルモン、「自由なツアーへようこそ!」

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マキシマム ザ ホルモンが1月22日に新木場STUDIO COASTで、メンバー曰く「東名阪松川ツアー」となる<MAGROSTIC FRONT~kin to gin no tsutsumi ni haitta shikakui tuna no yatsu saikin tabeteru?~>の最終公演を開催した。

◆マキシマム ザ ホルモン 画像

ライヴ中、何度レポを放棄しようと思ったことだろう。静観できない。冷静でいられない。手に汗を握るどころか、頭がどうかなりそうになるほどの衝撃を浴び続けた。いままで数え切れないくらいマキシマム ザ ホルモン(以下ホルモン)のライヴを観てきたが、こんな経験は初めてだ。それほど今日のホルモンは凄かった。

2014年11月にマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)が髄膜炎で緊急入院し、<KNOTFEST JAPAN 2014>を含む数本のライヴをキャンセルした。年末には無事復帰したようだが、心配したファンも多かったに違いない。そして、2015年1月から松山を皮切りにツアー<MAGROSTIC FRONT~kin to gin no tsutsumi ni haitta shikakui tuna no yatsu saikin tabeteru?~>を行ない、本日はその5本目のファイナル公演にあたる。

この日はKANA-BOONをオープニングアクトに迎え、平日18時半開演にもかかわらず、「フルドライブ」からぎっしり埋まった会場にいきなり熱風を吹きつける。続く「1.2.step to you」で古賀隼斗(G/Cho)が中央で激しくギターを掻きむしると、拳を突き上げ、クラウドサーフする観客が後を絶たない。3曲目「ウォーリーヒーロー」を終えると、谷口鮪(Vo/G)はMCでこう語った。

「音楽を始めたのは友達がジャケ買いした『ロッキンポ殺し』を聴いたのがきっかけ」と明かし、当時からホルモンと対バンすることを夢に描いていたそうだ。ふと気付くと、メンバー4人中3人がホルモンTシャツを着ているではないか。この日は彼らも格別の気持ちがあったのだろう。その後も和メロが冴えた「盛者必衰の理、お断り」、前日1月21日リリースたばかりの新作『TIME』収録曲から「スノーグローブ」をプレイ。特に後者は、平易な歌詞を用いたキャッチーなメロディで、谷口の伸びやかな歌声も素晴しかった。ラスト曲「シルエット」で盛大に幕を閉じると、主役のホルモンにバトンを渡す。

骨をクロスさせた巨大なバックドロップが吊り上げられた後、冒頭からポップ爆弾「恋のメガラバ」を投下するホルモン。観客は両手を上下に激しく揺さぶり、新木場STUDIO COASTは一瞬でダンス天国(地獄?)に様変わり。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)、マキシマムザ亮君、上ちゃん(4弦)のフロント3人が猛烈にヘドバンを決め、全身を振り絞るような演奏力に1曲目からぶっ飛ばされる。

「特にリリースもない、自由なツアーへようこそ!」とナヲ(ドラムと女声と姉)が挨拶していたが、確かに普段と比べて、曲間のMCやお喋りも5割増しで自由を謳歌している。その緩和に比例し、緊張もより一層高まっていく。

4月から公開されるアニメ映画『ドラゴンボールZ 復活の『F』』のバトルソングに抜擢された「F」を早くもここで放つ。ド頭から言霊のごとき吐き出されるリリックとシャープな演奏で襲いかかり、心の奥底から突き上げられるようなヘヴィさに圧倒された。また、後半の「フリー● フリー●♪」の歌詞では耳をつんざく大合唱が巻き起こる。もう2曲目を終えた時点で既に胃袋が膨れ上がる満腹ぶりだ。

しかし、まだまだこんなものではない。マキシマムザ亮君の呪術的ヴォーカルを配した「maximum the hormone」ではマグマが大噴火したような超ド級の爆発力を見せる。音響の良さも相まって、楽曲が持つ緩急やドラマ性は濁りなくクリアに響き渡っている。その上で容赦なく暴れ回るメンバー4人の制御不可能なエモーションの高ぶりは、尋常ではない。その狂喜乱舞のコッテリサウンドに、フロアは当然のごとくヘドバンの嵐が吹き荒れる。マキシマムザ亮君の熱い歌い出しから始まる「鬱くしきOP~月の爆撃機」~「鬱くしき人々のうた」の破壊力、上ちゃんのエフェクトをかけたベース音をフックにした「便所サンダルダンス」のグルーヴ感や息の合ったコーラス・ワークにも魅了されっぱなし。完全に一枚岩となったバンドのカタマリ感に、どこまでこのバンドは進化するんだろうと溜め息が漏れる思いだった。

それから「ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ」、「生理痛は神無月を凍らす気温。」、「アンビリーバボー!~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~」と畳み掛けると、「ブラック¥パワーGメンスパイ」をここで披露。軽快な疾走感よりもタメを効かせた粘着重厚サウンドを響かせ、アレンジを変えたアプローチにも大興奮した。

そして、今日のハイライトは「え・い・り・あ・ん」に尽きるだろう。総毛立つような神経症的なマキシマムザ亮君のギター・フレーズを合図に、ダイスケはんの狂気迸るヴォーカル、上ちゃんのスラップベース、切れ味鋭いナヲのドラミングが折り重なり、音源以上の異次元、異空間を作り上げる。途中、ナヲがドラムセットから離れ、ヘッドマイクで自身のヴォーカルパートを踊り付きで披露する場面もあり、会場は沸き上がった。もはや感動を通り越し、笑ってしまうほど進化を遂げたフリーダムな曲調に茫然自失状態に陥った。「メス豚のケツにビンタ(キックも)」でさらに加速すると、本編は「恋のスペルマ」で締め括る。後半、上ちゃんがSPACE COMBINEよろしくベースをブンブン掻き鳴らすパートではフロアはもみくちゃになって暴れ狂っていた。

アンコール2曲を含めて全17曲を走破する濃縮ライヴは、片時も耳目を離せなかった。いや、引き付けられっぱなしだった。改めて、現時点での最新作『予襲復讐』に収録された楽曲がライヴでたゆまぬ成長を遂げていることに驚愕した。加えて過去曲も見事にブラッシュアップされ、バンドの表現力や総合力が数段レベルアップした印象を受けた。ホルモン、恐るべし!と言える瞠目の1時間半だった。

取材・文◎荒金良介 撮影◎Kazushi Hamano

■<MAGROSTIC FRONT~kin to gin no tsutsumi ni haitta shikakui tuna no yatsu saikin tabeteru?~>
2015年1月22日@新木場STUDIO COASTセットリスト
【KANA-BOON】
01.フルドライブ
02.1.2. step to you
03.ウォーリーヒーロー
04.盛者必衰の理、お断り
05.ワカラズヤ
06.ないものねだり
07.スノーグローブ
08.シルエット
【マキシマム ザ ホルモン】
01.恋のメガラバ
02.「F」
03.What's up, people?!
04.maximum the hormone
05.鬱くしきOP~月の爆撃機~
06.鬱くしき人々のうた
07.便所サンダルダンス
08.ロッキンポ殺し
09.ロックお礼参り~3コードでおまえフルボッコ~
10.生理痛は神無月を凍らす気温。
11.アンビリーバボー! ~スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ~
12.ブラック¥パワーGメンスパイ
13.え・い・り・あ・ん
14.メス豚のケツにビンタ(キックも)
15.恋のスペルマ
<encore>
16.ぶっ生き返す!!
17.握れっっ!!

■“MAGROSTIC FRONT~kin to gin no tsutsumi ni haitta shikakui tuna no yatsu saikin tabeteru?~”

2015年1月09日(金) 愛媛/松山市総合コミュニティーセンター GOOD4NOTHING
2015年1月13日(火) 大阪/なんばHatch tricot
2015年1月15日(木) 愛知/名古屋DIAMOND HALL androp
2015年1月19日(月) 神奈川/CLUB CITTA' 川崎 OVER ARM THROW
2015年1月22日(木) 東京/新木場STUDIO COAST KANA-BOON

◆マキシマム ザ ホルモン オフィシャルサイト
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