【インタビュー】doa、高らかに響く「楽しい生活を送っていてほしいという僕らの願い」

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■テイクで言うと、1曲100テイクくらい録るかもしれない
■ピッチとリズムが合っていればいいというところの10倍先までいかないと

──ニューアルバムのテーマを決めて曲を揃えていく中で、アルバムの指針になった曲などはありましたか?

徳永:最初にテーマを決めて、それに沿って「FLY HIGH」を作ったんです。それと、この曲の前に配信音源として出した「SMILE」があるんですけど。“SMILE”というのはすごくポジティブな言葉である反面、その裏にあるネガティブな要素を含めて歌にしてみたんですね。2014年夏のアコースティック・ツアーではファンの方から、「「SMILE」という曲なのに泣きました」という声をいただいて。まさに自分はそういう気持ちで書いたんだよなと。そういう意味では、「SMILE」も今回のアルバムの核になっている曲です。

──「FLY HIGH」や「SMILE」をはじめとして、リスナーの共感を得る曲が並んでいて惹き込まれます。サウンド面で今作はアンプラグド的なアプローチが多いことが特徴になっていますね。

徳永:doaはアコギロックではじめたバンドなので、3人のハーモニーとアコギだけで、どれだけロックできるかということが勝負どころだったりするんです。今回は10周年を超えて原点回帰という意味も含め、自分達ができるのはこれだというものを提示した部分はありますね。それに僕らはアコースティックツアーで47都道府県を廻っているんですけど、それも一気に廻るんじゃなくて、少しずつやっていて、まだ半分くらいなのかな。アコースティックツアーは毎回そうなんですけど、セットリストが決まってなくて。

──え、そうなんですか?

徳永:何十曲も用意した中から、ライブ当日にメンバー3人で話し合ってセットリストを決めるんです。身体的なコンディションもあるし、会場の雰囲気もあるから、毎回同じセットリストで同じライブをすればいいというわけにはいかないんですよ。カホンとかも一切なくて、本当にアコギだけだから、自分達の音に持っていくためのテンションみたいなものがすごく必要なので。ただ、そのためには50曲以上練習しておかないといけないという(笑)。ピアノが置いてある会場で、いきなり「徳永君、この曲ピアノでやってみない?」みたいな時もあって、ものすごく大変だけどかなり鍛えられてます(笑)。そういうライブを繰り返してきているから、それが作品にも出ているんだと思います。

──自分達のモードが音源に反映されるというのもいいですね。バンド形態の「FLY HIGH」や「PUSH! PUSH! 押せ押せアニマル」なども、どっしりしたアメリカンロックとは異なる軽やかさが心地いいです。

徳永:そう。どっちかというと西海岸の音というか。たとえば“天気の良い日にドライブしながら聴ける”というのは単純な言葉だけど、それこそ体調が良くないとドライブに行く気にならないだろうし、ドライブに行ける暇がないとダメだし、一緒にいてくれる人がいれば、もっと楽しいだろうし。実はすごくいろんな要素が絡んでくる。でも、それができるくらい楽しい生活をみんなに送っていてほしいという僕らの願いがあるんです。だから爽やかな音に仕上げるし、みんなに上手くいっててほしいと願って、歌って演奏しています。

──本当にリスナー重視ですね。サンバテイストを活かした新境地の「満月の狼」も注目です。

徳永:「満月の狼」は、リズム的には新しいけど、やっていることは初期と同じなんですよ。3人でずっとハモッているというスタイルをもう一度今のdoaでやってみようかなというところから始まりました。

──えっ? サンバをやろうというところから入ったんじゃないんですか?

徳永:違います。リズムは後からつけた感じですね。

──やりますね。それにこの曲は歌詞が女性の一人称で、しかも切ない内容じゃないですか。それをアッパーな曲で歌っているのも絶妙です。

徳永:そういうものをカラッと歌うのがいいと思って。イーグルスとかは、たとえば上手くいかない恋とか、すごく社会的なことをカラッと歌っていたりするんですよ。昔からそういうアプローチがカッコいいと思っていたので、「満月の狼」はそういう方向に持っていきました。

──レトロなユニゾンリフを活かした「酔っぱライアー」も新鮮です。

徳永:レトロなロックは元々好きで、1970sロックとかは自分の血に入っているんですよ。それを活かして1曲作ったんですけど、この曲を大田に渡したら、「俺も昔、同じようなリフで曲を作ったことがある」と言ってて(笑)。やっぱり同じようなものを聴いていたんだなと改めて思いました。大田がリードボーカルを取っていて、ライブでも盛り上がると思います。

──楽しみです。「DRIVE AWAY」のスパニッシュテイストなども含めて、『FLY HIGH』は西海岸色が濃かった前作の『WANTED』以上に幅が広がっていますね。

徳永:たしかに以前よりも力が抜けているかもしれない。なんて言うんだろう……昔は音楽形態にこだわっていたけど、僕ら3人が歌えばdoaになるという感覚がどんどん強くなってきていて。それこそ、童謡を歌ってもいいんじゃないかと話したりもしているんですよ。いろんな可能性を試して、僕ら3人にしかできないものになるといいなと思いますね。

──そうなる予感がします。続いてプレイに関する話をしましょう。まず、今回3人の歌の振り分けは、どういう風に決めましたか?

徳永:ほとんどの曲は、みんな一度歌ってみるんです。ただ、大体徳永はバラードで、大田がアップテンポなものやハードロック、吉本がミディアムなものというのが大まかな振り分けになっていますね。ハーモニーパートも僕が一番下で、吉本が真ん中、大田が上というパターンに落ち着くことが多い。今回も「Hello」と「ひまわり」は僕が歌うとか、「酔っぱライアー」は大田が歌うといったことは、曲を作る段階から決めていたし。でもそれくらいかな。他の曲はみんなで試してから、誰がリードボーカルを取るかを決めました。

──民主的ですね。では、今作の歌録りはいかがでした?

徳永:シンガーとしては、「Goodbye Girl」が強く印象に残っています。この曲は、天気で言うと晴れみたいな感じの明るくて爽やかなサウンドに、“Goodbye”というネガティブな言葉を乗せていて。それをどれだけポジティブな“Goodbye”にできるかというテーマがあったんです。歌詞はいろんな捉え方ができるようになっているんですよ。旅立っていく友達だったり、卒業して会えなくなる友達だったり、シチュエーションは別れ。本当は別れの言葉を告げたくないという気持ちの“Goodbye”は、どういうものかなと考えて。そういう瞬間の感情は、うまく歌えばいいわけじゃないし、かといってぼくとつすぎると悲しくなってしまう。その真ん中を歌うのが難しかった。

──徳永さんは太い声で、かつ生々しく歌っていながら、極端にウェットだったり重苦しかったりしないところが魅力になっています。

徳永:実はすごくテイクを選んでいて、一瞬でも歌がうっとうしく感じる場所があるとボツにするんですよ。歌に入る前のブレスもうっとうしかったらボツにするし。だからテイクで言うと、1曲100テイクくらい録るかもしれない。単純にピッチとリズムが合っていればいいというところの10倍先くらいまでいかないと、納得したものにならないから。たとえば、“ポツンと”という言葉の“ポ”だけが気に入らなくてもボツにするし。……自分でもアホだなと思いますけど(笑)。

──そんなことはないです。自分の歌に対して、これはうっとうしいと客観的に判断するには優れた感性やストイックさが必要ですよね。

徳永:他にボーカリストがいてくれるから身についたというか。僕はレコーディングでボーカルをディレクションすることが多いから、「そこはもう少し弱く歌って」みたいなことをスタジオで散々言うわけですよ。それでスタジオの雰囲気が悪くなったりすると、なぜ僕が言っている歌じゃないとダメなのかということをディスカッションするんです。「その歌い方だと、こういう風に聴こえちゃうよ」とか、みんなでの話し合いを重ねる中で培ってきたものがあって、それを自分の歌にも活かしています。

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