【突撃インタビュー】クマムシの生態に迫る、ガチすぎる「あったかいんだからぁ♪」ネタの向こう側

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クマムシの「あったかいんだからぁ♪」の大ヒットの裏には、芸人の1ネタとは思えない楽曲の完成度がある。そして完成したCDの仕上がりがすごい。プロの仕業に違いない卓越したアレンジがメロディをさり気なく引き立たせ、ツボを付く歌詞をキラリと光らせるその出来上がりは、単なる芸人のお遊びプロダクトとは一線を画したものとなっている。

クマムシ、こいつら何者ぞ。気になる。気になって仕方ない。アプローチし、彼らへインタビューを試みた。これまで数多くのアーティストへのインタビューをしてきたが、芸人を取材するのは初めてである。先日は所ジョージの取材をしてきたものの、あの時のように、また脱線ばかりしてしまうのだろうか……。

芸人?ミュージシャン?

――BARKSは音楽サイトなんですが、シングル「あったかいんだからぁ♪」の出来の素晴らしさにびっくりして、取材にやってまいりました。

佐藤大樹(ツッコミ担当):僕らも一番びっくりしてますけど…こういう仕上がりになるんだ!って。

長谷川俊輔(ボケ、歌担当)コンビ組みたてのころはコントしかやってなかったんですけど、何か新しいことをしようということで、歌ネタを作るようになったんです。僕は小さい頃から歌を歌うのが大好きだったので、自分の好きなことで笑いを取ろうと思って。

――佐藤さんはその時どう思いました?

佐藤:「あ、いいですね」っていう感じ。ネタ作りは彼がやっているので、歌ネタやろうって持ってきた時も「それ、いきましょう」と。

――ネタ作りのみならず、「曲作り」もしなくちゃいけないってことですよね?

長谷川:そうです。事務所のライブに出るために“ネタ見せ”というのが毎月必ずあるんです。作家さんが何人も並んでいて、その前でネタを審査してもらってダメ出しを頂くんですけど、そのダメ出しが「もう少しメロディーラインどうにかならない?」だったり(笑)。

――なんだそれ(笑)。

長谷川:普通の芸人さんとは全く違うダメ出しを頂いてるんで、ちょっと変な感じもするんですけど、「やっぱりもう少し耳に残るフレーズをいっぱい出したりして笑いに変えていってよ」みたいなことを言われますね。

――ミュージシャンかっ!


長谷川:そうなんですよ。ミュージシャンになってきちゃって。

佐藤:歌のことばっかり言われるから「ツッコミの僕はどうしたらいいですかね」って聞くと、「君はとりあえず歌を邪魔しないように」って(笑)。「はい分かりました」って。

――ぶはは。いつ頃からそんな状況で?

長谷川:歌ネタ始めてからなので、もう4年ぐらいですかね。

――バンドで言えば、全国ライブハウスツアーをまわったくらいの経験値がたまっていますね。

佐藤:4年やっていたんで、実は歌もいっぱいあるんです。発表してないですけど。

長谷川:でもその歌も完全に「あったかいんだからぁ♪」と比較されますけどね。

――なんかミュージシャンにインタビューするような流れになりつつありますが、私、クマムシのお二人から聞きたいことって何でしたっけ……。

長谷川:(笑)。僕らは、ふたり共通して音楽が大好きなんです。音楽の話をするのも大好きですから。

――「曲をブラッシュアップしていく作業」=「芸の向上」ですが、具体的にはどのようにして曲を良くするんですか?

長谷川:まず自分の歌を全部作って、それを一度劇場で試してみるんです。歌ってみる。するとウケる箇所とウケない箇所が絶対出てくるので、ウケない所は省いてまた違うメロディーを加えてみたり。それを小さな劇場で試して5~6回繰り返すんですね。そうやって生まれた完成形で大きな劇場でやってみて、事務所ライブで優勝を競ったりするんです。

■どうせなら気持ちよく歌いたい

――“いい曲”というキーワードがありますが、ステージに立ってパフォーマンスした時に「笑いを引き出す」という視点がミュージシャンと決定的に違うところなのかな。

長谷川:そうですね。特に僕の見た目とのギャップが大きいと笑いになるみたいですね。僕は「どうしてだ?」と思うんですけど(笑)、僕はちゃんと「気持ちよく歌っている」のに皆さんは笑っている。そこをちゃんと相方がツッコんでくれるので、これが漫才のひとつのスタイルと言いますか。

――「あったかいんだからぁ♪」はどのように進化してきたんですか?

長谷川:昔は「あったかいんだから♪」というワードが4分間の漫才の中に2箇所しか入ってなかったんです。もっと歌詞で笑わしてやろうっていう意識が強くて、他にも歌詞をいろいろ入れていたんですけど、そこは全くウケず。

――どんな歌詞を?

長谷川:僕の顔がコブダイに似てるから、魚がいっぱい出てくるくだりとかあったんです。「♪マンボウもイルカもタコもサバも~タツノオトシゴもクリオネもみんなフェスティバ~ル」って歌っていたところがあったんですけど、シーン…みたいな。その後に「♪少しの勇気と 希望を持って 伝えてるんだから(あったかいんだからぁ♪のメロディー)」って続くんですが、ここでドーンとウケるんですよね。「ああ、この“~なんだから”という所をいっぱい入れて、短い尺にしたものをやろう」っていう考えになりまして。そこから反応が良くなって、「これだったんだな」っていう。


――芸人とミュージシャンで視点は違いますが、響く音楽を作りたいという意味では変わりはないんですね。

佐藤:彼にはミュージシャンっぽいところがあるんですよ。僕は芸人としてウケたいので歌詞を馬鹿馬鹿しくしたいんですけど、そうすると「ちょっとこれだとメロディーが損なわれちゃうから…」みたいな感じで却下されたりとかするんですよ。

――めんどくさい(笑)。

佐藤:そうなんですよ。別にウケればいいじゃんと思うんですけど「でもそれじゃ歌として…」とか言って(笑)。

長谷川:気持ちよく歌いたいじゃないですか、どうせなら(笑)。ステージ立って、マイクがあって、歌が歌えるなら。

――本当に気持ちよく歌ってやんの(笑)。

長谷川:「あったかいんだからぁ♪」で面白くしようとしていた歌詞に違和感があったときは、歌っていても気持ちよくないですし、笑いにもならなかった。だから、歌ネタをやる時はシンプルな作りにしようと思っていますよ。

佐藤:「気持ちよく歌うとウケる」みたいなところ…ちょっとあるよね。

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