【インタビュー】熊谷育美、いろんな人に助けられて支えられて、心と心の交流の中でできあがったアルバム『PROCEED』

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■何としても原作の世界により近づけるように納得する作品を書きたい
■“心の扉”という歌詞を書いた瞬間からわーっと書けて、一晩で書き上げました



▲堤幸彦監督映画「悼む人」(2015年2月14日ロードショー)。
──「旅路」の話に行きましょう。2月14日から公開される、堤幸彦監督の映画『悼む人』の主題歌。これは書き下ろしということになりますか。

熊谷:そうですね。堤さんとは、以前にも3作でやらせていただいています。撮影が始まった頃に、“主題歌を書き下ろしてもらえないか”“まず原作を読んでほしい”という連絡をいただいて。すぐに台本も送っていただいて、原作と合わせて読みました。会津若松でロケをやっていたので、そこにも呼んでいただいて。映画の撮影は初めてだったので、スタッフの多さにまずびっくりして。最初はミーハー気分だったんですけど、モニターを通して、役者のみなさんの身を削るような演技を見ていたら…何としても、原作の世界により近づけるように、堤監督も、原作の天童荒太さんも、納得する作品を書きたいなと。それで正直、悩みました。締め切りまでに3か月あったのですがアプローチを悩んでいると、あっ!という間に時間が過ぎてしまって…書き始めるまでに、すごい時間がかかりました。だけれども、“心の扉”という歌詞から始まるんですけど、その一節を書いた瞬間から“わーっ”と書けて。一晩で書き上げました。

──すごい。

熊谷:それが締め切りの3、4日前。その前はしばらく、音信不通になってたんです。熊谷は旅に出ましたと(笑)。曲を書くのに、これだけ苦しかったのは初めてです。すぐに録音して、ピアノと声だけのデモを作って、堤さんに送って。その日に連絡が来ました。“良かったよ。これで行こう”って。それでやっと呼吸ができました。

──できてよかった。

熊谷:ただ、原作のファンの方もたくさんいらっしゃるから、どんなふうに聴いてもらえるのか、この先それが心配です(笑)。届けばいいんですが。

──一気に書いたというのは、どんな状態だったんですか。詞も曲も?

熊谷:普段はわりと言葉から書くことが多いんですが、これは同時にできました。それまではすごく苦しかったはずなのに、作ってる時のことはあんまり覚えてなくて。達成感とは全然違って、“あ、できた”という感じがありました。

──まれにあるんですか。そういうことって。

熊谷:というか、ここまで原作を意識した書き下ろしということが、初めてだったので。以前にも、堤さんの撮ったドキュメンタリーのために書き下ろしたことがあったんですが、それは自分の気持ちも出ちゃったところがあったので。でも今回はそうじゃなくて、すごく難しかったと思います。

──結果的に、どう聴いても熊谷さんの気持ちから出た歌詞だと思いますよ。『悼む人』のテーマ曲ではあるけれど。

熊谷:そうですか。

──海も出てくるし。大きな愛の歌だと思います。

熊谷:わからないものですね。

──これから映画を見る方に、どんなことを伝えたいですか。

熊谷:ものすごく深い映画です。生きていくこと、命が絶えてしまうこと…曲を書いている立場の前に、人として衝撃を受けました。この先の自分の人生において、この作品が心から離れることはないと思います。うまく言えないですが、ぜひこの『悼む人』を見てもらいたいと思っています。どしっと来るので、見終わったあとはしばらく話もできないような状態になるくらい深い作品。きっとみなさんも、何か思うことがあると思います。

──これから、ライブの予定は?

熊谷:4月5日に、気仙沼市民会館で『PROCEED』のコンサートをやります。その前に、2月18日、仙台darwinで、THE YOUTHのボーカルの中村マサトシさんと一緒にやります。ツーマンではなくて、最初から一緒に出るんですよ。今年はリスタートというか、いろんな新しいことをやっていきたいんですよね。

──その今年、2015年には、どんなテーマを持ってますか。

熊谷:30代に突入するんですよ。三十路イヤー。楽しみですね、早くなりたかったので。

──それはなぜ?

熊谷:楽になりそう、という言い方はちょっと違うかもしれないですけど。ちょっとゆとりを持って、いろんなことを吸収できるような気がしてるんですよ、30代って。自分にとって、節目の年になると思います。

──最後に、あらためて。気仙沼に住んで音楽活動を続けるというのは、強いこだわりがありますか。

熊谷:そうですね。それはずっと変わらないことなので、これからも変わらないと思います。

──4月のコンサートには、全国から駆けつける方もいると思うので。せっかくなので、気仙沼のお薦めを。

熊谷:今の時期は、鱈とか、牡蠣がお薦めです。牡蠣、最高ですよ。牡蠣と日本酒、熱燗、最高!みたいな(笑)。

──あはは。本性出た(笑)。

熊谷:そして、飲んだあとに外に出ると、満天の星空。プラネタリウムみたいですよ。全国的にも、星空がよく見えるランキングで3位くらいに入ってるんです。ホテルによっては温泉もありますし、スローフードの町ということにもなってるので、健康的でもあります。

──たぶん、とても住みやすいんですね、宮城県って。在住で、音楽活動をされている方がかなり多いような印象が。

熊谷:そうなんです。沖縄の次に多いんですって。ただ仙台の方が多いので、私だけ“どーん”と地方に行っちゃってるんですけど(笑)。仙台から車で2時間半ぐらいかかる。新幹線を使っても、岩手県一関が最寄駅で、1時間半ぐらいかかるので。でも、本当にいいところなんです。

──みなさんぜひ気仙沼へ。4月のコンサートの時期は、特に何がお薦めですか。

熊谷:4月は…何だろう? 新緑という感じでもないし。まだ冬が残ってる感じですね。“まだ冬やってます”ということで(笑)。

取材・文●宮本英夫


『PROCEED』

2015年1月21日 Release
TECG-21103  \2,000+税
1.夢のつづきを
2.未来描画<ミライスケッチ>
3.生きて
4.旅路
5.流星
6.ずっと、あなたと
7.笑顔
8.約束

ライブ・イベント情報

<熊谷育美コンサート2015「PROCEED」>
2015年4月5日(日)
気仙沼市民会館(宮城県気仙沼市笹が陣4番2号)
[問]ニュース・プロモーション TEL:022-266-7555(平日11:00~18:00)

<熊谷育美×中村マサトシ>
2015年2月18日(水)
仙台darwin(宮城県仙台市一番町3-9-13 DATE ONEビルB1F)
[問]ニュース・プロモーション TEL:022-266-7555(平日11:00~18:00)

<「PROCEED」発売記念イベント ミニライブ&サイン会>
2015年2月7日(土) 
モラージュ菖蒲 1F 滝のコート(埼玉県久喜市菖蒲町菖蒲6005-1)
http://www.mallage.com/shobu/

2015年2月8日(日)
ワカバウォーク イベント広場(埼玉県鶴ケ島市富士見1丁目2番1号)
http://www.wakaba-walk.com/

2015年2月15日(日) 
イーアスつくば 1Fセンターコート(茨城県つくば市研究学園5丁目19番)
http://tsukuba.iias.jp/

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