【ライブレポート】黒夢、無限大の期待を抱きながら“次”に思いを

ツイート

2015年2月9日は、黒夢にとって22回目のメジャー・デビュー記念日。その大切な日の到来を、清春と人時はZepp Nagoyaで迎えた。年をまたぎながら展開されてきた今回の“最後のロング・ツアー”は、2014年7月19日、まさに人時の誕生日に同会場で幕を開け、2人は新年到来の瞬間も同じ場所で迎えている。日程前半には《夢は鞭》、後半には《毒と華》というキーワードを掲げながら全国展開されてきたこのツアーで、彼らはこの最終公演を含めて全50本のライヴ(実際には全51本が組まれていたが、延期措置となった広島公演のみ、この3月に実施される)を重ねてきた。

◆黒夢画像


清春自身、去る2月3日の東京・新木場STUDIO COAST公演のステージ上で「いろんな感情が渦巻いている」と語っていたが、実際、彼ら自身のみならずオーディエンスもまた、さまざまな光景を目撃しながら、過去に味わったことのない感覚を募らせてきたはずだし、ツアー日程が終盤に差し掛かるにつれ、ある種の名残惜しさをおぼえていたに違いない。

この日の名古屋は雪が舞うほどの寒さ。しかし場内にはずっと、極上の熱気が充満していた。午後7時をわずかにまわった頃、場内が暗転。耳慣れたオープニングSE、「ZERO」をかき消さんばかりの歓声のなか、メンバーたちが配置に着くと、まず炸裂したのは「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」。続く「CLARITY」がそれに拍車をかけていく。


しかし疾走感にまかせて過熱していくばかりが黒夢のライヴではない。中盤に設けられた人時のベース・ソロまでの間にも、「heavenly」や「Let's Dance」、「SOLITUDE」や「黒と影」といったさまざまな色調の楽曲群が配置され、変化に富んだドラマを紡ぎあげていた。そしていざ加速の局面が訪れれば、誰も追いつくことのできないスピードでエナジーを放射するのが彼らだ。本編を締め括った「C.Y.HEAD」から「SICK」へと畳み掛けていく攻めっぷりは、見事というしかないものだった。

度重なるアンコールを経て、最後の最後は「Like@Angel」で究極の絶頂へ。このツアー中、楽曲の新旧を問わずさまざまに趣向を凝らしたセットリストでの演奏を重ねてきた彼らだが、この夜はまさにフルコースともいうべき完全無欠のメニュー。メンバーたちがステージから姿を消し、天から白い羽根(それはまさに、天使の羽根だったのかもしれない)が舞い落ち始めた頃には、すでに開演から4時間を超えていた。が、過剰なほどの密度とスピード感ゆえにオーディエンスも時間経過を忘れていたに違いない。


この夜、清春と人時は幾度も感謝の言葉を客席へと投げかけた。

「50本、とてつもなく、ひたすら最高でした!」
「黒夢史上、最高の長い旅だったと思います」
「(ツアーは終わっても)黒夢はあるからね。大丈夫です」
「僕らの再結成は真実でした。そして、最も美しくカッコいい再結成だったと思います」

その場を去りぎわのメンバーたちは手を繋ぎ、オーディエンスもまた同様に手を繋いでいた。清春はその絶景を見渡しながら「みんな仲間だからさ、争ったりしないで。この景色、一生忘れないから」と客席に語りかけていた。そして、一足先にステージから去っていたはずのサポート・メンバー、K-A-Z(G)とYOUTH-K!!!(Dr)が運んできたのは、この日に記念日を迎えた黒夢のバースデー・ケーキ。これは、清春と人時も知らずにいたサプライズだった。


こうして黒夢のロング・ツアーは着地点へと至った。<BEFORE THE NEXT SLEEP>というツアー・タイトル自体があらかじめ物語っていた通り、これから先、しばらくの間、黒夢は眠りにつくことになる。しかし重要なのは、黒夢が存在している、という状態のままこのロング・ツアーが閉幕を迎えたことだろう。そう、彼ら自身も語っていた通り、ツアー自体が終わっても、黒夢が終わってしまうわけではない。しばらく彼らのライヴに触れられなくなるという現実もまた確かなものではあるが、あくまで彼らは眠りにつくだけであって、その“しばらく”という漠然とした時間の空白は、むしろ黒夢が“これから”を生きていくために必要なものであるはずなのだ。

実際、このツアー最終公演の終演後、彼らの眠りの先にある活動予定などについては何ひとつ明かされることがなかった。それは秘密主義によるものではなく、彼ら自身が実際に何も決めていないからである。だからこそ我々もまた、彼らの未来を限定することなく、無限大の期待を抱きながら、“次”を待ちたいものである。


TEXT:増田勇一
PHOTO:今井 俊彦, 森 好弘

黒夢<黒夢 TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP Vol.2『毒と華』>
2015年2月9日 Final Zepp Nagoyaセットリスト
01.I HATE YOUR POPSTAR LIFE
02.CLARITY
03.A LULL IN THE RAIN
04.heavenly
05.LOVE ME DO
06.LET'S DANCE
07.SOLITUDE
08.黒と影
09.ゲルニカ
~BASS Solo~
10.Reverb
11.STARLET
12.MAD FLAVOR
13.MIND BREAKER
14.C.Y.HEAD
15.SICK
ENCORE 1
16.解凍実験
17.カマキリ
18.後遺症
ENCORE 2
19.HELLO,CP ISOLATION
20.SUCK ME!
21.CANDY
ENCORE 3
22.優しい悲劇
23.アロン
ENCORE 4
24.ミザリー
25.棘
26.for dear
27.Miss Moonlight
ENCORE 5
28.SEE YOU
29.BEAMS
30.Like@Angel
この記事をツイート

この記事の関連情報