【インタビュー】eastern youth 吉野 寿「止まらないで行こうと思ってます。止まるのは簡単だから」

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■何かが終わる時は何かが始まる時。何も始まらなくなるのは、死ぬ時だけだから。
■おしまいだぁ~と思っても、それを始点と捉えて道をつないで生きていく。

── 「テレビ塔」という曲は、唯一、吉野さんの「自己」を感じさせない曲で。去ってしまった友人に対する「友情」だけがここにはあります。北海道の風景描写をした歌詞から、「言葉にならない」という心象が手に取るように伝わりました。曲調も特別軽やかなんですが、この曲はどうやって生まれたんですか?

吉野寿:曲中には、“テレビ塔”という言葉は出てこないんですけど、僕は1990年の前後くらいに札幌に6年住んでいて、あの頃の札幌に向けた歌というか……札幌にノコノコやってきて、右も左わからないままバンド始めたんすよね。仲間もいたけど、みんななんも持ってなかった。夢とかなんとかもねぇし、ただアホみたいにスッカラカンだった。で、いつもそこにはテレビ塔があったんです。テレビ塔を見上げて、その下で右往左往して生きてた時間に対する俺の気持ちを書いた歌です。

── アルバムの制作時期からして、吉村さん(吉村秀樹/bloodthirsty butchers)のことを歌ったんじゃないかなと想像しました。

吉野寿:歌詞は最近作ったんですけど、曲自体は結構前からあったんですよ。だからそう感じるのは、俺がよーちゃんから得てきたものが俺の中に染み付いてるんだと思いますよ。俺、17~18才の頃からよーちゃんに憧れてギター弾いてて、ずっと近くで見てきましたから…………追悼の歌とか、イヤなんすよね。だから、そうじゃないっていうことにしておきます。

── はい。

吉野寿:この曲は、よーちゃんが持ってたギターを俺が弾いてるんですよ。俺、ずっとギターはYAMAHAなんですけど、よーちゃんもどこで手に入れたんだかYAMAHAのギターを持ってたみたい。

── めちゃくちゃ味わい深いフィードバックですよね。

吉野寿:持ち物に魂が宿るって本当にあるんだなって思いましたよ。



── 「テレビ塔」から「道をつなぐ」という曲に続いていくわけですが、ここで歌っている<最初の最初に歩き出した場所へ/道をつなぐ>の場所とは、札幌という街のことでもあるんですか?

吉野寿:そうっすねぇ。ま、なんにもないところですよね。何かが終わる時っていうのは何かが始まる時なんですよね。終わりと始まりは常に同じポイント上にある。どこかにたどり着けば、そこから何かが始まる。何も始まらなくなるのは、死ぬ時だけだから。おしまいだぁ~と思っても、それを始点と捉えて道をつないでいく、つないでつないで生きていくっていうことを歌ってます。俺はこの先、そういうことを鼻歌まじりでやっていきたいと思ってますよ。

── はい。でも、イースタンユースの音楽は、鼻歌まじりというよりはかなりエネルギーが漲ってません? こないだ、高円寺UFO CLUBのオシリペンペンズ(“うどんサイケの帝王”の異名を持つ大阪のパンクバンド)と対バンされてましたけど、吉野さんはステージで、「オシリペンペンズ大好きっ」っておっしゃってて。吉野さんって、そもそもどういう音楽的趣向をお持ちなんでしょう。オシリペンペンズの音楽って、エネルギーは漲ってない音楽だと思うんですが──

吉野寿:いや、漲ってるよ! 俺の中では。あのペラッペラが好き。俺、ヘビネスとかラウドネスとか、そういうのあんまり好きじゃない。音数も少ないもののほうが望ましい。オシリペンペンズはいいですよね。屈折してるんだけど、いじけてないし、攻撃的なバンドだけど実は誰も攻撃してない。アホだし下品だけど、言葉の選び方なんて凄く知的だと思う。石井くん(石井モタコ/Vo)、詩人だなと思う。ギタープレイも大好き。

── へぇ~、そんなにですか。

吉野寿:うん。俺は、基本的にパンクが好きですよ。あとは明るいソウル・ミュージック。シュープリームスとか、昔のノーザン・ソウルとか、あとは阿部 薫(フリージャズのサックス奏者)も好きですしね。これひと筋っていうよりも、あれもこれもっていう感覚ですね。いまさら、新しいとか古いとかどうでもいいですよね。もっと若い頃はシーンの最先端の音楽みたいなものを追っかけてた時期もありましたけど、もう、そういうのどうでもいいですね。今は『おっ!』と思えればよし。

── イースタンユースの自主イベント<極東最前線>(1994年~)では、実際にご自分がシビれるアーティストと共演されていますよね。本当にいろんなアーティストが参加してるし、音楽家としてこれだけ非常に慕われてるのに、吉野さんってなんで奢らないでいられるんですか? 今、46歳ですよね?

吉野寿:そうですね。

── 一般的な40~50代の男性って、余裕を持とうとしたり、負けないためのポジションを築いて確保しようとする方が圧倒的に多いと思うんですけど。

吉野寿:ま、それが大人ですから!(笑)。で、俺はポンコツだから。なんか持ってるなら威張ってもいいかもしれないけど、本当に何もないから必然的に威張れない。なんだろうね、ずっと変わんないんすよね。年齢とか立場とか地位とか名誉とか、そういうもんで人と付き合いたくない。社会的にはどこにも属して生きてこなかったっていうのもあるかもしれないですね。俺、会社とかに就職したことないし、学校も途中で辞めちゃったし、野良犬みたいなもんですよ。中学出てから実家も飛び出しちゃってるんで、ずっとこんな感じで生きてきてるんすよ。ただ、体だけが年老いてきて、最近とても疲れます。階段の昇り降りで膝痛くなりますけど、老いを受け入れてわびしく生きてますよ……まぁだから、別の意味の老いパンクっすよね? って俺、きれいにまとめ過ぎちゃったかな(笑)。

── 最近の持ちネタですね?(笑)。

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